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「ポップであること」が「大衆に向けてわかりやすく開かれること」であるならば、特に近作における米津玄師の、極限まで音数を削ぎ落としたバランスアートの如き音像で問答無用の訴求力を創出する作風の説明がつかない。それこそ暗黒を貫いて飛翔する流星の輝きが万人の視線を惹きつけるように、未体験の領域を開拓し続ける者だけが体現し得る業とスリル──それこそが今の米津のポップの核心なのだと思う。劇場版『チェンソーマン レゼ篇』主題歌“IRIS OUT”とエンディングテーマ“JANE DOE”を両A面シングルとしてコンパイルした今作。R&Bとヒップホップとハウスとジャズを融かし尽くした果てに、強靭なアートの骨格を抽出してみせた“IRIS OUT”。“JANE DOE”と題した楽曲のゲストシンガーに宇多田ヒカルを迎え、《この世を間違いで満たそう》と至上のハーモニーを描き上げる、美しくもいびつで切実なポップの形──。米津の音楽が僕らを魅了してやまない理由が凝縮された作品。(高橋智樹)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年11月号より)
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