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映画『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』の主題歌。物語の世界観に添いながら、とても心が軽やかになる、見事なアンサンブルを響かせる。「生きづらさ」というものに真正面から向き合うのではなく、さりげなく思考の角度を変えてくれるような、ポジティブなパワーを秘めたオーガニックサウンドが耳を惹く。都会の明るすぎる夜では輝きを放てない蛍や、灼熱の暑さに耐えかねるシロクマをモチーフにしたSaoriの手による歌詞、そして穏やかなFukaseの歌声が柔らかく耳に沁みてくる。まるで、閉塞した環境を抜け出して、もっと気持ちよく呼吸のできる場所を目指そうと誘うようなメロディラインも魅力。マンドリンやブズーキの明るくて軽快で耳心地のよいノスタルジックな音色にも癒やされる。人は生きづらさにぶち当たると、自分が間違っているのではないかと自責の思考に傾きがちだけれど、「図鑑」に載らない生き方でもいい、ほんとの自分でいられる場所を自由に探そうと、この曲はあたたかく語りかけてくれる。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2025年9月号より)
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