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すでに配信でリリースされ大きな話題をさらっている“絶対零度”。性急なビートとギターサウンド、そして歌が容赦なく隙間を埋め尽くす、現代のロックサウンドを更新したこの楽曲が、カップリングとして新曲“聖者たち”を加えてフィジカルリリースされた。“絶対零度”の凄まじさはすでに語られている通りだが、この“聖者たち”の予想を遥かに超えた不穏さにはすっかりあてられてしまった。まずはクールにスウィングしドライブする歌声に耳を惹かれるが、聴き進むほどにギターの音は聴く者を奈落へ引き寄せるように歪む。そして浮遊するように落ちる、祝福の拍手の裏で絶望感を味わうような突然の奇妙なブレイク。「実験的」とか「プログレッシブ」などという表現では生ぬるい、まさに《深淵》に魅入られた瞬間を描いた狂気の音像がそこに。さらにラストの交信不能感、消失感は、理想郷などどこにもないことを告げる。まるで、寓話的なこの歌がリアルに響く「現代」こそが闇であると、この楽曲が突きつけてくるようだ。(杉浦美恵)(『ROCKIN'ON JAPAN』2024年7月号より抜粋)
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