ゴート・ガールやブラック・カントリー・ニュー・ロード等によって興隆するサウス・ロンドン出身のドライ・クリーニング。これまで2枚のEPをリリースし、イギー・ポップが賛辞を送ったことでも知られるが、デビュー・アルバムが4ADからリリースされた。PJハーヴェイやオルダス・ハーディングで知られるジョン・パリッシュのプロデュースによる全10曲が収められている(日本盤は+ボーナス・トラック2曲)。
太いベースとリズミカルでメロディアスなギター・リフが印象的で、ワイアーやソニック・ユースを思わせるシャープでざらついたアンサンブルに抑揚を抑えながらも歯切れの良いフローレンス・ショー(Vo)のスポークン・ワードが乗ることで独特のキャッチーでモダンなグルーヴが生まれている1曲目の“Scratchcard Lanyard”を皮切りに、トーキング・ヘッズやディーヴォ、ザ・フィーリーズ等から影響を受けたというサウンドは、どこか地に足がついていて骨太だ。
インディ・ポップ・バンドで活動していたルイス・メイナード(B)とニック・バクストン(Dr)、ハードコア・バンドにいたトム・ダヴズ(G)という3人に大学で美術の講師を務めていたというボーカルのフローレンスからなる4人のメンバーは全員30代。2021年期待の新人という声も上がっているが、細部まで神経を張り巡らせたような洗練された演奏/アレンジ、全編を通して貫く肝の据わったようなムードに風格があるのは経験値ゆえか。
7分半を超えるラスト曲“Every Day Carry”では、多彩な表情を滲ませるスポークン・ワードとキレの良いノイズが響くサイケデリックなサウンドがしっくり馴染み、そのスマートなアート・ロックぶりが凝縮されている。(小松香里)
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