イギリスの兄弟ユニット、ディスクロージャーの5年ぶりの新作。ガイとハワードのローレンス兄弟は10年のデビューから一貫してハウスを追求してきている。そして、今作もまた徹頭徹尾ハウスという作りのアルバムで、その強度はさらに上がっているといっていい内容になっている。これまでの2枚のアルバム『セトル』、『カラカル』もハウスに徹しながら、ディスクロージャーとして、あるいは今のサウンドとしての演出もそれなりにほどこされたものだった。しかし、今作は問答無用のハウス作品で、非常に高揚感があって気持ちいいところが魅力だ。
今作も多彩なゲスト・パフォーマーをボーカルに迎えてのものとなっているが、オープナーはケリスを迎えた“ウォッチ・ユア・ステップ”。これがしなやかなヒップホップ的ビートを打ち出したナンバーで、ケリスのボーカル・パフォーマンスにうってつけだし、巧みにうねるグルーヴの構築がかっこよすぎる。続く“ラヴェンダー”ではLAのコンプトン出身という異色のハウスDJ、チャンネル・トレスを迎えており、さすがと唸らされる人選だ。このトラックの構造は骨格だけを残したような強烈なものだが、もともとトレスのハウス・サウンドも非常に抑制的な作り。だから、このトラックに関してはかなりアゲアゲに感じられてくるほどで、こういった着眼点がすごいし、基本つぶやきMCのようなトレスのボーカルもよく映えてくるアレンジも見事。
それに続く“マイ・ハイ”はモダン・エレクトロニック・ミュージックとしてのエッジを強烈に打ち出すもの。アミーネとスロウタイという米英のMCのラップ・パフォーマンスを引き立てる素晴らしいトラックとなっていて、この序盤の内容だけでいかに充実した作品になっているかがよくわかる。
ある意味で新機軸となっているのはマリ出身のファトゥマタ・ジャワラをボーカルに迎えた“ドウハ(マリ・マリ)”とカメルーン出身のブリック・バッシーを迎えた“スネパ”だ。もともとハウス・ビートがエスニック・ボーカルとすさまじく相性がいいのはわかっているが、この2曲におけるプロデュースと楽曲とボーカルの佇まいはあまりにも素晴らしい。アルバム本編のラストは手堅くシカゴ出身のコモンのボーカルで締めてみせるところも心憎い。
そもそもガイとハワードのふたりはなぜハウスに向かったのか。創作的に一番興味を持てたからということしかわからないのだが、しかし、本作が醸すイマジネーションとオリジナリティはひたすらすごい。 (高見展)
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