スーザンの今の米国へのお叱り

テデスキ・トラックス・バンド『サインズ』
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ALBUM
テデスキ・トラックス・バンド サインズ

オールマン・ブラザーズ・バンドのデレク・トラックスと、女子ブルース・ロッカーのスーザン・テデスキの夫婦バンド、テデスキ・トラックス・バンドの4枚目となる最新作。もともとスーザンはゴスペルとブルースの唱法を完全にのみ込んだギタリストで、ここまでオーセンティックなボーカルをモダン・ブルースとして聴かせるアーティストはほかにいないという存在だ。デレクはもう言わずとしれた超絶ギタリストで、エリック・クラプトンのツアーに参加した時には彼にデュアン・オールマンがずっと傍にいるように思えたと言わしめた名手。こんなふたりが結婚するってありえるのっていう話でもあるが、そんなスーパー・バンドなのだ。

というわけで、オープナーとなる“サインズ、ハイ・タイムズ”はブルース・ロックにスライ・ストーンのファンクも導入したかのようなとてつもない迫力とグルーヴをたたみかけていく中で、スーザンがそのソウル・ボーカルを歌い上げる。もう文句なしの傑作としかいいようのない内容。しかも、そのメッセージもさらにすごい。一聴すると、さんざんでたらめなことをやってきた男が肝っ玉奥さんにちょっとそこに座れと説教されているような内容なのだが、実は今のアメリカの政治状況を歌い込んだメタファーにもなっている、とても深い歌で、まさにスライ・ストーンの“スタンド”的な文脈を持つすごい曲なのだ。

続く“アイム・ゴナ・ビー・ゼア”はデレクの超絶ギター以外は『キー・オブ・ライフ』期のスティーヴィー・ワンダーそのものだし、逆に“ウォーク・スルー・ディス・ライフ”はスタックス・ソウルを正当に継承する楽曲。もちろん、これらはすべてレトロではなく、現在への抗議表明となっているもので、そこがあまりにも素晴らしいのだ。 (高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。
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テデスキ・トラックス・バンド サインズ - 『rockin'on』2019年4月号『rockin'on』2019年4月号
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