H.E.R.O.が改めて実証してみせたバンドの地力の高さ、大観衆が似つかわしい楽曲にも魅了された初の単独来日公演を目撃!

H.E.R.O.が改めて実証してみせたバンドの地力の高さ、大観衆が似つかわしい楽曲にも魅了された初の単独来日公演を目撃! - pic by Yoshika Horitapic by Yoshika Horita

デンマークからの実力派新鋭、H.E.R.O.の来日公演を1月31日の大阪・心斎橋SOMA、2月1日の東京・代官山SPACE ODDで観た(写真はすべて東京公演の際のもの)。これまでにもショウケース・イベントでの来日(2018年11月)、スラッシュの来日公演へのゲスト出演(2019年1月)といった機会はあったものの、単独での日本公演は今回が初となる。

そんな記念すべきライブの幕開けを飾ったのは、なんと先頃配信開始となったばかりの新曲、“アヴァランチ”。筆者自身も、疾走感に富んだこの曲が今後の彼らのライブにおいて重要な役割を果たすことになるはずだと想像はしていたが、まさか冒頭に登場することになるとは。しかしオーディエンスの多くがこの曲をすでにチェック済みであることは、その好反応ぶりからも明らかだった。

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少しばかり意外でもあったのは、ハードなギター・リフばかりではなくエレクトロニックな感触も併せ持つ彼らが、シーケンスなどを多用せず、むしろネイキッドなサウンドでの演奏に徹していたこと。ただ、それでもデビュー作『ヒューマニック』(2019年4月発売)に収録の魅力的な楽曲たちが貧弱に聴こえることがなかったのは、楽曲とバンド・サウンドの骨格がしっかりしていて、各メンバーの演奏が的確だからこそ。ソレン・イテノフのダイナミックなギター、アナス“アンディ”キルケゴールのハード・ヒッティングでしかも手数多めのドラミング、そしてギターを弾きながらフロントを務めるクリストファー・スティアネの完璧な歌唱。そうした要素が見事に噛み合い、耳慣れた楽曲たちがライブならではの豪快さも伴いながら小気味よく披露されていくさまは、とても心地好いものだった。

なかでもやはりクリストファーの歌声については、改めてその逸材ぶりを実感させられた。彼の武器は、軽やかさのあるハイトーン。声量で圧倒するタイプではないながらも迫力は充分で、儚げなニュアンスと力強い伸びやかさを併せ持ちつつ、「どこまで高域が出るんだ?」と思わせるほどの声域を備えている。敢えて引き合いに出すなら、その歌唱にはマルーン5のアダム・レヴィーン、サーティー・セカンズ・トゥ・マーズのジャレッド・レトを思わせるところもある。

クリストファーはライブの序盤、「この1年、この機会をずっと待ってきた」と語り、この単独公演実現を強く望み続けてきたことを認めた。もちろんその気持ちは、両会場に詰めかけたファンも共有してきたもの。次々と顔を出す『ヒューマニック』からの楽曲に、オーディエンスは時差なく好反応を示し、ステージ上のメンバーたちの顔には満足げな笑みが浮かぶ。

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そんな繰り返しを重ねながら、延々と長いソロ・パートを披露するわけでも、たっぷりと喋るわけでもない彼らのライブは、あっという間にクライマックスを迎えた。大阪公演はアンコールを含めても70分にも満たないコンパクトさだったし、東京公演では、アンコール時にふたたび“アヴァランチ”を披露するというサプライズも飛び出したが、それでもショウ自体は3分ほど長くなっただけだった。

ただ、そこで「もっと聴きたい!」と思わされながらも食い足りなさを感じなかったのは、良質な楽曲が丁寧かつ大胆に披露されるのを、過不足ない形で味わうことができたからだろう。しかもここ日本でもラジオ・ヒットとなった“スーパーパワーズ”だけが突出したフレンドリー・チューンというわけではなく、すべての曲がそれぞれに輝きを放っていた。また、サポート・ベーシストとしてバンドのボトムを支えたMEWのヨハン・ウォーラートの貢献も大きかったように思う。

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そしてすでにお伝えしている通り、彼らは第二作、『バッド・ブラッド』のレコーディングを終えている。このアルバムを携えた状態での来日公演についても早期実現を願いたいところだ。なにしろこのバンドの楽曲を聴いていると、大観衆が声を合わせる風景が自然に浮かんでくるようなところがある。実際、彼ら自身が思い描いているのもそうした光景であるはずだ。そんな未来に向けての重要な一歩となったはずの今回のライブは、二夜を通じて“アヴァランチ”が特別感を増していった事実とともに記憶されていくことだろう。(増田勇一)
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