ラブとヘイトに引き裂かれたノイジー・ロックンロールは不変! ジザメリ3年ぶりの来日公演を観た

ラブとヘイトに引き裂かれたノイジー・ロックンロールは不変! ジザメリ3年ぶりの来日公演を観た - pic by Ryota Moripic by Ryota Mori

ジーザス&メリー・チェインの約3年ぶりの来日公演だった。前回はデビュー・アルバム『サイコキャンディ』再現という企画ライブだったが、今回は『サイコキャンディ』から最新作『ダメージ・アンド・ジョイ』までを網羅したオールキャリアのベストヒット・セットと呼ぶべき内容になっていた。

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ジザメリは極めてカルト的なインディ・バンドでありながら、しかも解散時期があったにも関わらず、80年代からこの2010年代まで何度もリバイバルを重ねてきた稀有なバンドだ。90年代には『ハニーズ・デッド』が時のUSオルタナとシンクロし(昨年のナイン・インチ・ネイルズとのUSツアーもそういう背景があるからこそ)、2000年代には映画『ロスト・イン・トランスレーション』をきっかけに、いきなりヒップスターのお気に入りバンドになった。2010年代以降もドリーム・ポップやネオゲイズ、ノイズ・ロックの祖先、参照元としてリスペクトを集め続けているのは言うまでもない。

ラブとヘイトに引き裂かれたノイジー・ロックンロールは不変! ジザメリ3年ぶりの来日公演を観た - pic by Ryota Moripic by Ryota Mori

オールキャリアを網羅した今回のライブは、そんなジザメリの普遍性を様々な角度から再認識させてくれるステージだった。『オートマティック』期の甘く爛れたノイジー・ポップの数々や、インダストリアルなビートメイクが驚くほどモダンだった『ハニーズ・デッド』期のナンバーなど、後世のバンドたちにベンチマークされ続けているジザメリ・サウンドと呼ばれるものは、ジザメリ・サウンドとして一括りにするのが憚れる、実に多彩な表情を持つものだったことがノイズの洪水に溺れながら確認できたのだ。

ラブとヘイトに引き裂かれたノイジー・ロックンロールは不変! ジザメリ3年ぶりの来日公演を観た - pic by Ryota Moripic by Ryota Mori

ただし、彼らの普遍性はけっしてフォーマットとして完成したものではないのが面白い。むしろ完成を拒むような究極のアマチュアイズム。往年のナンバーはどれもクラシックと呼ぶに相応しい名曲揃いなのに、今なお不揃いで不完全、そこにはギザギザの切れ端をそのままにしたような、明後日の方向に放り投げたまま背中を向けるような、ニヒリズムと苛立ちが宿っている。

ラブとヘイトに引き裂かれたノイジー・ロックンロールは不変! ジザメリ3年ぶりの来日公演を観た - pic by Ryota Moripic by Ryota Mori

ジム・リードは『ロッキング・オン』最新号のインタビューの中で「シューゲイザーなんてメディアのでっち上げ」だったとした上で、ステージでうつむいていたのは「オーディエンスが全員こっちを見ているというのが好きじゃなかっただけ」だと言っていたが、デビューから35年近くが経ってなお成熟を拒み、そういう居心地の悪さを引きずっているステージの佇まいも最高だった。ロックンロールをラブとヘイトに引き裂いていった彼らの爆音のディストーション・ギターが、今も頭の中で反響している。(粉川しの)

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<SETLIST>
Amputation
April Skies
Head On
Blues From a Gun
Mood Rider
Black And Blues
Far Gone And Out
Between Planets
Taste of Cindy
The Living End
Teenage Lust
All Things Pass
Some Candy Talking
Halfway to Crazy
Reverence
(Encore)
Just Like Honey
Cracking Up
Sidewalking
War On Peace
I Hate Rock 'n' Roll
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