新世代の邦楽バンド・シーンについての考察を書きました(JAPAN今月号の激刊!山崎より)

新世代の邦楽バンド・シーンについての考察を書きました(JAPAN今月号の激刊!山崎より)

いま、すごい勢いで新しい世代のバンドがどんどん出てきていてロック・シーンは楽しいよね。
本当になんだか楽しくて仕方ないぐらい楽しいよね、今の新しいシーンは。

バンドもアーティストもみんなそれぞれに自由でオリジナルなアイデアを持っていて、
それをそれぞれの音楽にめいっぱい盛り込んでいる。
自分たちの曲の個性や演奏の癖や声の特徴を活かして、
それを元に自分たち独自の世界を作り上げてる。
そして、そこに飛び込んでこい!と言わんばかりのポップさにあふれている。

歌詞も、嬉しいことや悲しいことや言いたいことを自分たちなりのリアルな言葉でうまく表している。
すっと入ってくる言葉もあれば妙に引っかかる言葉もあって、
でもそれがすべてリスナーに向かって無邪気なほど裸で飛び込んでくる。

ライブへ足を運ぶと、新しい世代の新しいバンドたちの勢いと情熱はもっと肌で感じられる。
これまでの世代となにが違うのかというのを言葉で表すのは難しいんだけど、なんていうのかな、
ちゃんとわがままでちゃんと優しいんだよね。
「目の前のお客さんのためだけにがむしゃらに全てを捧げる」というわけでもないし、
かといって「自分たちが目指す音楽にたどり着くためにはお客さんがどう思おうが知ったことではない」というのでもない。
ちゃんとその両方を健全にやれてるんだよね。
なぜ両方を健全にやれてるかというと、両方ともやりたいことだからだと僕は思うんだ。
本人たちじゃないからわからないけど、きっとそうだと思うんだ。
自分たちがやりたい音楽を目指しながら、お客さんを思いきり楽しませたい、
そういう素直な気持ちをそのまま音源やライブで表現できる世代だと思うんだ、今の新しい世代は。
そんなのは世代の新しい古いに関係なく当たり前だろう、って?
いやあ、そうでもなかったよ(笑)。


戦略、ていう言葉があるよね。
音楽業界にはこの言葉がいつも飛び交っているし、インタビューなどでアーティストもよくこの言葉を使う。
でも「戦略」っていう言葉の意味が、実は最近になって変わってきてるんだ。
ほとんどの音楽業界人、ジャーナリスト、古い価値観のアーティストは相変わらず古い意味のまんまでこの言葉を使ってるけど、現実はもうとっくに追い越しちゃってて、新しい「戦略」の意味が生まれているんだ、実は。

旧「戦略」:目指すゴールをまず設定して、現実をそこに近づけていくこと。
新「戦略」:現実に向き合ってベストな方法を選んで、ゴールに近づいていくこと。

これぐらいの違いがある。
新しい意識を持っているバンドやアーティストはこの変化を肌で感じとって、自然に新しい「戦略」を実践しているんだ。

もはやゴールなんて設定できない時代だ。
明日にはなにがどうなるか、誰にもわからない時代だから。
今の世代のバンドにとって「ゴールを設定してそれに向かっていくための戦略」なんて絵空事にしか感じられないだろう。
その代わり、今やるべきことの選び方・実践の仕方の鋭さ、正確さ、斬新さ、自由さは、
今の世代のバンドはものすごくレベルが高い。
セカオワも、インディゴとゲスも、忘れらんねえよも、キュウソも、パスピエも―――日々のライブやリリースや歌詞やMCやヴィジュアルや、活動のすべてが生きた戦略として自然に機能している。
素晴らしいことだと思うんだ。

今の新しい世代のシーンが楽しくてしかたがないのは、そういうところにも理由があるんじゃないのかな
―――というお話でした。
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