代官山UNITで行なわれたThe XXの初来日公演に行ってきた。
ジェイミーがMPCの手打ちで繰り出す、暴力的なまでに太いキックの音。
オリヴァーが身をよじりながら紡ぐ漆黒のベースライン。
写真を見てもらうと分かる通り、“VCR”とKYLAのカヴァー“DO YOU MIND”以外はアルバムの曲順をなぞっていくようなセットリストで、1時間に満たないライヴはある意味淡々と進んでいく。ぎちぎちに埋まったUNITも、歓声を上げるのすらためらわれるような、そんな空気があった。熱狂というのとはまったく違う雰囲気だ。
けれど、あの黒く塗りつくされたような低音を聴いて、やっぱりこのバンドはすごいと思った。あそこまで淡々とした漆黒のサウンドだからこそ、彼らの描くロマンスには、安っぽい感傷が入る隙間がない。強靭なのだ。これがいかにもイギリスのバンドらしい。昨今のUSインディのサイケデリアとは、まったく異なる力学でロックをやっている。このバンドのアートワークと、音の暗さと、抽象的な文学性はすべて必然のもとに成り立っている。ロミーとオリヴァーのかけ合いが熱を帯びていく“Infinity”は戦慄の走る体験だった。
MCで、たどたどしく日本語を話すオリヴァーは、普通の21歳の男の子だった。20歳そこそこで、こんなセンスのロックをやってしまうのだから、やっぱり世界は広い。(古川)
The XXはやっぱりすごい
2010.05.14 21:15