Spotify O-Eastでグラス・ビームスを目撃!

Spotify O-Eastでグラス・ビームスを目撃!

東洋音楽の陶酔感とクラシックロックの剛腕が交錯する、異才のニューカマー:グラス・ビームス。フジロック2024での鮮烈な日本デビューを皮切りに、着実に日本でのファンベースを拡大してきた彼らのSpotify O-EASTで開催された最新ライブを見てきました。

会場に到着すると、ソールドアウト公演であったこともあり、メインの入場口手前まで観客でぎっしりと埋まっていて、バンドへの期待感と熱気が肌で感じられた。東洋と西洋の音楽的要素をミステリアスに融合させたそのサウンドとは裏腹に、集まったオーディエンスは老若男女問わず幅広く、多様な層を惹きつけるバンドの求心力にまず驚かされた。

開演予定から15分後、ステージに現れたのは、ガラスのシェードを模した仮面をまとった3人組。シタールと空間音楽を融合させたようなエキゾチックな出囃子が流れ、シルキーなバックスクリーンの演出とともに、グラス・ビームスの幻想的な世界が幕を開けた。オープニングを飾ったのは、最新EPの表題曲“Mahal”。トランシーなギターリフのループと囁くようなボーカルが重なり合い、聴き手の身体にダイレクトに伝わるようなタイトなグルーヴが展開される。広大な東洋の情景を脳内に描きつつ、気づけばリズムに身体を委ねている。そんな不思議な没入感に圧倒された。

続く“Orb”では、民族楽器風のホイッスルとファンキーで複雑なベースラインが交錯し、グラス・ビームスならではの多層的なグルーヴが構築されていく。作品としての完成度をそのままライブに持ち込む演奏力と再現性の高さが、早くも際立った。もちろん、ライブならではの大胆なアレンジもバンドの魅力だ。たとえば“Snake Oil”の冒頭では、米デトロイトのエレクトログループ、ドップラー・エフェクトを彷彿とさせるダークで機械的な電子音からスタートし、中盤で一転してエキゾチック・サイケへと展開していく様は、彼らの実験精神と二面性を象徴していた。

さらにディスコファンク調のリズムがダンサブルな“Kong”、エレクトロインダストリアルやビッグビートの要素を感じさせつつも、徹底してサイケデリックにまとめ上げられた“Mirage”など、多様な音楽性を貪欲に取り込みつつ、決してブレないバンドの核が終始感じられた。
終盤には、ムンバイ出身の先鋭的エレクトロアーティスト、チャランジット・シンや、インド映画音楽の伝説的作曲家兄弟、カリヤンジ&アナンジ・バージ・シャーのカバーも披露。彼らの音楽的ルーツに対する誠実なリスペクトと、それを自らのフィルターを通じて再構築する創造性が光った。

一貫してMCを排し、神秘性を纏ったままサウンドだけを会場内に展開させるように進行したステージ。しかし終演後には、観客一人ひとりへ向けたボディランゲージでの感謝表現がとても情熱的で、日本のファンへの想いが真っ直ぐに伝わってきた。
昨夜のライブは、グラス・ビームスが国境やジャンルを越えた新たな音楽の地平を切り拓いていく存在であることを確信させてくれるものだった。今後の日本でのさらなる活躍に、大いに期待が膨らむ膨らむ60分間でした。(北川裕也)
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