現在発売中のロッキング・オン8月号では、ヴァンパイア・ウィークエンドのインタビューを掲載!
以下、本インタビューの冒頭部分より。
「バンド初期は、矢継ぎ早に作品を出すことが重要だと思って、ひたすら必死だった。でも、そこからもっと根源的な問いに辿りついた。『ただ音楽を作るためだけに生きてるんだとしたら、そもそも何のための音楽なんだろう?』って」
「運命論も、とことん突き詰めると楽観に行きつく気がするんだよ。今の時代において最も幸福な人達には、ただありのままを受け入れて生きていく姿勢のようなものが備わってるような気がして」と、フロントマンでソングライターのエズラ・クーニグは言う。「確かに運命論者的でもある。『世界は混沌としている、あまりにもひどすぎるじゃないか』っていうね。と同時に、楽観主義的でもある。『世界は混沌としている、だったら、その波を乗りこなして生きていくしかないじゃないか』っていうね」
これぞまさにエズラ・クーニグ的思考を象徴するようなセリフだろう。慎重に曖昧さを保ちつつもユーモアのある皮肉をさりげなく挟みながら、真摯にかつ深い洞察力をもって伝えられている。その綱渡りのような絶妙なバランス感覚は最新作『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』にも反映されている。本作はバンド初期の洗練された優美な雰囲気を再び身にまとうかのように、ゆったりとしたアップライトベース、めくるめくようなサックスのソロ、こぼれ落ちるようなピアノの旋律などの鮮やかな音のパレットによって緻密に構築されながらも、これまでとは明らかに異なるサウンドへと到達している。
本作に走る緊張感はときに暴力的にすら感じられる。「よりダークな世界観に傾倒しているし、これまでで一番攻撃的なトーンの作品でもあるよね」とエズラ自身も認めているものの、2019年の雑多でマキシマリスト的な『ファーザー・オブ・ザ・ブライド』よりも重い作品であるとは考えていない。「両方のアルバムジャケットを入れ替えたら、音楽そのものから受ける印象も変わってくるんじゃないかな。ただまあ、そうやって二項対立的なわかりやすい形で解釈されたとしても、それはそれで受け手側の自由だからね」と語る。
インタビューが行われたのは2024年1月だった。ロンドン中心部のフォトスタジオに現れたエズラは、前作『ファーザー・オブ〜』プロモーション時の5年前とほぼ変わってないように見える。とはいえ、ファッション的にはアルバムのトーンを反映してか、前回の派手な色のフリースに靴下とサンダル履きの姿からカーキ色のセーターにベージュのスラックスというスタイルに変化しており、もうすぐ40歳の誕生日を迎える年齢もおそらく関係しているのかもしれない。
年齢を重ねたことは『オンリー・ゴッド〜』の落ち着かないながらも、どこか希望を感じさせるムードにも確実に影響を与えている。「若かった頃は若干傲慢というか、人生何が素晴らしいのか教えてくれよっていう感じで、ただ人生に素晴らしいことが訪れるのを待っているだけだった。そこから自分なりに気づくようになったわけさ。『ああ、そっか、どんな人間にも自分から人生を愛する能力が備わってるものなんだ』ってね」と彼は言う。「まさに昔の自分だったら軽蔑してたであろう類の発想というか、それこそ10代や20代後半の鬱々とした生きることに何の意味も見出せずに葛藤していた頃の自分が聞いたらドン引きしてただろうね」
(以下、本誌記事へ続く)
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