いよいよ公開迫るボブ・ディラン映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』の魅力に迫る!

いよいよ公開迫るボブ・ディラン映画『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』の魅力に迫る!

ティモシー・シャラメがボブ・ディランを演じる『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(日本公開2025年2月28日)を遂に観た。ティモシーの才能は確信していたが、如何せんボブ・ディランである。とりわけ音楽ファンにとってはアンタッチャブルとすら言えるアイコンを誰が演じても粗探ししそうなものだが、ティモシーの入魂の演技が素晴らしすぎて感動的なのだ。すでにアカデミー賞主演賞ノミネートは間違いないと言われている。

この作品はディランも製作に協力しており、脚本を読み、自身で架空の会話まで書いたというから彼らしいが、ツイートもしていた。「ティモシーは素晴らしい俳優だから、私だと完璧に信じられるだろう。または若かりし頃の私だと。または誰か別の私だと」と。ティモシーが凄いのはギターも、ハーモニカも、歌も、全て彼自身が撮影中に生でパフォーマンスしたこと。通常音楽伝記映画では俳優は歌わないか、事前レコーディングされる。しかしティモシーが「ディランの伝記映画で音がきれいというのは最悪だ。彼はミネソタ州ダルース生まれ、鉱山町で育った。それが声から聴こえてくるから」と主張し、結果それが映画の魂になっている。

このジェームズ・マンゴールド(『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』〈2005年〉)監督作には、61年にディランがギターだけ持ってニューヨークに到着したところから、65年のニューポート・フォーク・フェスティバルでエレキで演奏した”大事件”まで、つまりディランと音楽史の革命的瞬間が描かれている。ピート・シーガー、ジョーン・バエズ、ウディ・ガスリーも登場するし、”ライク・ア・ローリング・ストーン”などのレコーディング風景も再現されている。何より、ニューポート・フォーク・フェスのシーンが圧巻なのだ。必然的にディランのライブ映像が観たくなるのだが、1963~65年の『ニューポート・フォーク・フェスティバル1963~1965/The Other Side Of The Mirror: Bob Dylan Live At The Newport Folk Festival 1963-1965』がBlu-rayで日本盤初リリース(日本語字幕付)された。映画公開前に必見だ。純粋にライブ映像だけから音楽史の最重要な瞬間を目撃できる超貴重な機会だし、またマレー・ラーナー監督のインタビューが当時の社会的背景や映画の行間も埋めてくる。監督曰く「カリスマ性がなかった」63年から、「スーパースターであることを自覚した」64年、そして「新世界だと思ったし恐怖も感じた」65年のパフォーマンスまでディラン激動の3年間がここで観られるのだ。また、映画のサントラ『A Complete Unknown(Original Motion Picture Soundtrack)』もデジタル配信が開始された。ティモシーの言葉に偽りがないかぜひ自分の耳で確かめて欲しい。(中村明美)


ボブ・ディランの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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