アメリカではすでに公開済みで、アカデミー賞8部門ノミネートされた『名もなき者/A COMPLETE UKNOWN』で、ボブ・ディランを演じたティモシー・シャラメ。
週末にアメリカで放送された人気テレビ番組“サタデー・ナイト・ライブ”でホストと同時にミュージカルゲストも務めて、ディランの曲をパフォーマンスした。
この日披露したのは3曲。
まずは、“Outlaw Blues”と“Three Angels”。ここでなんとジェイムス・ブレイクがキーボードで出演している。映像はこちら。
2回目は、"Tomorrow Is A Long Time”。
この何が大事かと言うと、最初に登場した時に自分でも言っていたけど、「僕が今日演奏するボブ・ディランの曲は、みんなが知っている曲ではないかもしれない。だけど僕が個人的に好きな曲なんだ」ということ。さらに、映画の中では、ディランになり切って歌っているけど、ここではティモシーの声で歌っているのも興味深い。
さらに、面白いのは、“Outlaw Blues”は、1965年『Bringing It All Back Home』に収録されていて、“Three Angels”は、1970年の『New Morning』に収録されているけど、NYタイムズによると、ディランは、“Three Angels”は、一度もライブパフォーマンスしたことがないのだそう。また、Varietyによると、“Outlaw Blues”もステージでは一度しか披露してない。しかも、その一回も、2007年にナッシュビルのライブで、ジャック・ホワイトが出演した際に、ジャックがリードボーカルでパフォーマンスしている。つまり、ディランはパフォーマンスしたとは言えないかもしれないのだ。ジャックは、ホワイト・ストライプスでその曲をカバーしていた。
つまり、ディランが一度もパフォーマンスしたことがない曲をテレビでパフォーマンするとは! ティモシーも深い。
また、“Tomorrow Is A Long Time”は、何度かパフォーマンスされていて、Varietyによると1962年にデモが作られ、他のアーティストが先にカバーして発表。フォークのスタンダードになっていた。しかし、ディランによるこの曲のライブバージョンが正式にリリースされたのは、1971年。『Bob Dylan’s Greatest Hits Vol. II』に、ヒット曲ではなかったからボーナストラックとして発表。1962年にレコーディングされたスタジオバージョンは、2010年の“Bootleg Series”に収録された。
ティモシーは今回徹底的にリサーチしたと言っていたけど、選んだ曲からも、そののめり込みがうかがえるというか、予想できない一種のディラン的なパフォーマンスになっているような気がする。素晴らしい。
今回番組で着ている緑の水玉も、ニューポート・フォーク・フェスティバルでディランが着ていたシャツのオマージュだし、
映画のプロモーションでも、ディランのルックスを真似するなど映画の宣伝とは言え全体がディラン的なパフォーマンスになっているところに敬意と彼自身のアーティスティックなセンス、遊び心を感じる。
これもパフォーマンスの一貫。
映画の日本公開は、2月28日だ。