ブラーの最高でありのままの姿がここにある――ドキュメンタリーとライブ映画がつむぐ、忘れられない23年の記憶

ブラーの最高でありのままの姿がここにある――ドキュメンタリーとライブ映画がつむぐ、忘れられない23年の記憶

2023年に約8年ぶりに復活を遂げ、キャリア初のウェンブリー・スタジアム公演を含むワールドツアーを行ったブラー。ここ日本でもサマーソニックで20年ぶり(グレアムにとっては初!)のヘッドライナーを務め、新旧ファン感涙のパフォーマンスを見せてくれたことも記憶に新しい。また、同年にはこれまた8年ぶりのニューアルバム『ザ・バラード・オブ・ダーレン』もリリース。あれから約1年半、ブラーのそんな復活の日々を追ったドキュメンタリー『ブラー:トゥー・ジ・エンド』と、ウェンブリー公演を収録したライブ作品『ブラー:ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』が、1月31日から遂に日本公開される。

ブラーの復活ドキュメンタリーと言えば2010年の『ノー・ディスタンス・レフト・トゥ・ラン』があるが、同作と今作ではかなり意味合いが違う。『ノー・ディスタンス〜』は文字通り解散からの再結成、4人の絆を結び直していく再生のプロセスをエモーショナルに描いた一作だったのに対し、今回のブラーはあくまで休止状態からの再始動であり、彼らは心地よい大人の距離感で、過去数年を離れて過ごしていただけだ。だから『ブラー:トゥー・ジ・エンド』が私たちに伝えるものは興奮というよりも、今もブラーを続けられることについての、彼らのじんわりとした感慨のようなものになっている。

その一方で、『ブラー:ライヴ・アット・ウェンブリー・スタジアム』はとにかく最初から最後までエモい!の一言。90年代にウェンブリーをやっていなかったのも意外だが、汗だくになりながら8万人と歓喜を分かち合う4人の姿を目の当たりにすると、50代に差し掛かった今だからこそ胸を打つものがある。昔みたいに軽やかにジャンプはできないが、それでもデーモンは飛び跳ね、グレアムは昔以上にジタバタと転げ回っている。しかも彼らがプレッシャーと闘いながら、満身創痍でステージに臨んでいたことがドキュメンタリーでは描かれているわけで、2作の相乗効果は凄いものがある。オアシス再結成のようなド派手さはないけれど、まさにブラーらしい「バンドを続ける」ことの詩的な物語なのだ。(粉川しの)


ブラーの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

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