現在発売中のロッキング・オン7月号では、ジョン・ケイルの新作ロングレビューを掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。
文=大鷹俊一
「ジョン、今朝帰国しちゃいました」午後2時からインタビューの約束で六本木のホテルに行ったときのこと。1988年2月、ニコとのジョイントライブにやってきて、観客全員どこかでジョン&ニコの歴史的な合体パフォーマンスがあるのではと期待したが、それも無し。インタビューなんかやりたかないよ、とばかりの仕打ちだったが、全然腹は立たなかった。
いかにもこの人らしいなと思ったし、数年後に実現したインタビューでは、どんな話題でもストレートに答えてくれ、音楽留学でアメリカに行った当時は長髪だったので近所の子に“ビートルズ野郎”ってからかわれてたよ、なんて笑いながら披露してくれた。そんな中でも印象的だったのは創作への貪欲さで、それも多方面にわたっての興味の広がり方は凄まじく、イーノと共鳴し合うのも当然、ルー・リードとぶつかるのも仕方のないことと納得したものだが、そんな彼の本領がこの20年代になってもまだ失われることはない。
昨年初頭、若手ミュージシャンたちとコラボし、エレクトロニクスを大胆に取り込んだ11年ぶりのオリジナルアルバム『マーシー』をリリースし、その意欲的な姿に改めて感心していたのだが、突然、もう次作『ポプティカル・イリュージョン』が届けられた。一瞬『マーシーⅡ』かと思ったりもするが、聴き出すとそれとはまったく違ったアプローチによる新作だった。
レーベルからのメッセージによると、パンデミックの間に80曲以上書いていたそうで、もちろんそれに沿って様々なアイデアが練られ構築されていったのだろう。その一方向が『マーシー』であり、まったく異なった位相から放たれた矢が『ポプティカル・イリュージョン』だ。
『マーシー』はローレル・ヘイローやアクトレスなど米英のエレクトロニクスアーティストとの共演に始まり、ワイズ・ブラッドやアニマル・コレクティヴなどバラエティに富んだ多数の人々が絡み多層的な魅力を発していたが、今回の方向性はまったく違う。(以下、本誌記事へ続く)
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