ロックバンドのデビューアルバムには、「技術も筋道も自覚もすべてすっ飛ばし、二度と手に入らない永遠の輝きに何故か直リーチ出来てしまった」という、一期一会の傑作がごく稀に存在する。ザ・リバティーンズのデビューアルバム『アップ・ザ・ブラケット』が、まさにその最良の例のひとつであるのは言うまでもない。
今年リリース20周年を迎えた同作を改めて聴き直してみても、初めて聴いた時と寸分違わぬ生々しい興奮と、ズタボロの質感がまったく劣化していない(という語義矛盾的な)驚き、そして泣きたいような駆け出したいようなどうにもならない切なさがブワッと蘇ってきて、何百回目かの鳥肌が立ってしまった。
そんな『アップ・ザ・ブラケット』の20周年記念盤が、10月21日にいよいよリリースされる。本編の最新リマスター音源に加え、世界4000セット限定のボックスセットには無数のデモやラジオセッション、ロンドンの100クラブでの伝説のライブ音源etc.のお宝が目一杯収録されており、そのゴチャゴチャと未整理なカオスが何とも彼ららしいリイシューだ。
今回の『アップ・ザ・ブラケット』アニバーサリーは、本来ならリバティーンズ20年ぶりのサマーソニック出演と共に盛大に祝われるはずだった。これまた彼ららしいグダグダの直前キャンセルに関しては恨み言の一つや二つや三つ言ってもバチは当たらないはずだが、そんなリバティーンズのダメさ加減は、彼らの倫理や正論ではジャッジ不能な魅力と表裏一体のものであり、ファンとしてはこれからも愛憎入り混じった想いを抱えていくしかない。嗚呼、これぞリバティーンズという名のジレンマ! だって、もし彼らが計画的で「ちゃんとした」バンドだったら、そもそも『アップ・ザ・ブラケット』は生まれていなかったのだから。
次号ロッキング・オンでは、現在フランス在住のピート・ドハーティを無事捕獲! 来日ドタキャンの話から『アップ・ザ・ブラケット』の伝説、あの狂騒の日々の秘話、そしてリバティーンズの今後まで訊き倒したロングインタビューをお届けする。ちなみに通訳氏曰く、ピートは「ハキハキとウダウダの中間ぐらい」で元気そうだったとのこと。ぜひお楽しみに! (粉川しの)
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