過去数年活況を呈するUKインディーロックバンド勢(「ポストブレグジット世代」と呼んでいいだろう)の中でも、ボーカル=フローレンス・ショウの独創的かつ超英国的な「自由連想モノローグ」と、アメリカのハードコア〜オルタナロック流儀をみごと咀嚼したストイックなギターサウンドとのコンビネーションで、ひときわ異彩を放つ4人組ドライ・クリーニング。
各方面から絶賛を浴びたデビューアルバム『ニュー・ロング・レッグ』から約1年半という速いペースでセカンド『スタンプワーク』が登場する。
前作に続きジョン・パリッシュ(PJハーヴェイ、オルダス・ハーディング他)をプロデュースに迎えているが、短期間で音楽的な振れ幅がぐっと広がっていて驚かされる。1曲目から、後方でかすかに鳴っているのはサキソフォン……?という具合に新たな試みもあり、打ち込みやシンセの融合ぶりも有機的。ダブエコーなエフェクトからジャングリーなネオアコ味、ブルース系の伝統的なリフからワウの利いたファンキーさまで、トム・ダウズのほぼ1曲ごとに変化するギターサウンドの多彩さは聴きどころのひとつだ。
そのぶんノイジー&パンキーなトンがった味わいは若干後退しており「出会い頭の衝撃」度は薄い作品かもしれない。しかし聴くほどにその音世界に浸りたくなる居心地の良さがあるし、そのぶん、前面に押し出されたフローレンスの言葉選びと声のパワー=抑揚、表情、ニュアンスが耳に刺さる。北極圏、動物園、ペットのカメ、エロティックな暗喩、普段着のフェミニズム……等々、半径5メートルのリアリティからグローバルに飛ぶ、彼女の脳内旅行の自由度はひたすら耳に楽しい。
セカンド投下後には待望の初来日も決定し、東阪公演は11 月末よりスタートする。夏のグラストンベリー他のフェス出演でもバンドとしての一体感と個性/カリスマがより磨かれ輝きを増しているのが印象的だった。ドライ・クリーニングの「平熱な過激さ」――石けん(日常)に陰毛(タブー)を組み合わせ、意外なユーモアを醸す新作のジャケット写真はまさにDCそのものだと思う――をじかに体感するこの絶好のチャンスをお見逃しなく! (坂本麻里子)
ドライ・クリーニングの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。
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