「(ニュー・アルバムの)歌詞が本当に素晴らしい。正直、僕にとって彼(ジョナサン・デイヴィス/ Vo)はここ20年で一番ハッピーに見えるんだ。彼は痛みを乗り越えて、それを歌で世界の人たちとシェアしてきたからね」(マンキー/ G、以下発言同)
これは筆者が行った最新取材における彼の発言である。2021年11月11日にリード・シングル“Start TheHealing”を配信リリース、同曲のMVも公開したKOЯN。それに合わせて、彼らが2022年2 月4日に14thアルバム『Requiem』の発表を告知した。振り返ると、前作『ザ・ナッシング』は痛みを伴う作品であった。ジョナサンの妻、デヴェン・デイヴィスの死が楽曲に深い闇をもたらし、そこでもがき苦しむ感情表現に戦慄を覚えずにはいられなかった。
しかし、本作は決定的に何かが違う。先述したリード曲で「癒しから始めよう」と訴える通り、痛みを昇華した上で新天地に立つKOЯNを見事にドキュメントしている。
「リード曲はこれまでのKOЯNと違うし、過去の痛みや周りの人々を亡くした悲しみ、そして、混乱の時代にさよならを告げるアルバムの内容を総括していると思う」
パンデミックの影響を受け、KOЯNも2020年はライブのキャンセルを余儀なくされ、同年6月から曲作りを開始したそうだ。歌詞を含めて13曲完成させたものの、本作には最終的に全9 曲を収録(日本盤ボートラ1曲追加)、トータル・タイム約32分というコンパクトな内容である。とはいえ、その中身はとんでもなく濃い。
全編ヘヴィに攻め立てる一方、冒頭でマンキーが語る通り、ジョナサンの強靭な精神が脈動する千変万化の歌メロに惹きつけられるばかりだ。ニュー・メタルの開拓者にして、ヘヴィ・ロックの覇者であるKOЯNが、ここに来て新章の扉を蹴破ったフレッシュな傑作を作り上げてくれたことに興奮は収まらない。 (荒金良介)
KOЯNの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』2月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。