祝50周年!「ROUGH TRADE 50TH ANNIVERSARY」でのマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ/キャロラインのライブをレポート

祝50周年!「ROUGH TRADE 50TH ANNIVERSARY」でのマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ/キャロラインのライブをレポート
名門インディーレーベル「ラフ・トレード」の設立50周年を記念したイベント、「ROUGH TRADE 50TH ANNIVERSARY」が9月30日(水)に大阪・META VALLEY、10月1日(木)に東京・Spotify O-EASTで開催された。出演したのは1年ぶりの来日となるキャロラインと、今年4月にデビューアルバムを発表し待望の初来日を迎えたマイ・ニュー・バンド・ビリーヴ。会場内は50周年を記念した展示で装飾されており、レーベルのロゴグッズを手にしたオーディエンスで溢れ、
インディーロックの歴史そのものと言えるラフ・トレードへの祝福と熱気が会場一体に満ちていた。本記事ではレーベルの新時代を担う2バンドによる、東京公演のレポートをお届けする。●マイ・ニュー・バンド・ビリーヴ
4月にリリースされたデビューアルバム『My New Band Believe』、聴いた瞬間すぐさま夢中になった。
元black midiのキャメロン・ピクトンによる新バンドのデビュー作は今年のインディーシーンの代表ともいえる傑作だ。しかしあの緻密でパワーあふれる鮮やかなアコースティック音源は今回どうやってライブで披露されるのだろうかと期待を最高潮にして入った会場ではレーベルの創始者 GEOFF & JEANNETTEによるDJセット中。
ラフ・トレードの楽曲が次々に繋がれていき、会場の熱量も既に高まっている。そして登場したマイ・ニュー・バンド・ビリーヴの今回のライブメンバーは5名。サックスには日本から松丸契を迎え、アルバム音源とは一転してエレキでの演奏がかき鳴らされる。
1曲目に“In the Blink of an Eye”を披露。フォーキーな演奏から徐々にハードに爆音にアレンジされていく姿に鋭利な気迫を感じ、体を揺らすというよりは集中して見入ってしまった。即興的なアレンジで次々と始まる演奏のなかでのMC、「ありがとうございます僕たちはキャロラインです!」という冗談で笑いを呼び(そしてこれはこの後4、5回ほどラフ・トレードのアーティスト名に変えて行われた)、オーディエンスの強張りも溶けたように思えた中盤でのポップダンスチューン“Numerology”はこの日最もハードコアにアレンジ。
バスドラ、ベースの低音にこれでもかと刻まれるギターリフと血の滾るようなサックスは、凄まじい音圧をつくりだしラウドネスで会場を支配した。日本語での「僕たちはザ・スミスです!」「ザ・ストロークスです!」というキャメロンのMCからうかがえるユーモラスな一面や随所に散らばるポップな美メロは、見ている人を夢中にさせる引力とこれからの進化を確信させる。
そして最後に「僕たちはblack midiです」と言って(!笑)始まった曲は、“Heart of Darkness”。目のくらむような激しい照明演出とノイズ、そして耽美な長尺のアウトロは秀逸で、いつまでも聴いていたく終わってほしくなかった。筆者は2022年に同じ場所でのblack midiのライブを見ているため当時を想起してしまう瞬間も多く、あんまり重ねるのもどうなんだろうか……と思っていたが本人が自らその名前を出したので思わず笑ってしまった。
ひねくれたジョークセンスや知的な佇まいの遺伝子は当時からそのままに、さらに実験性に富んだとんでもないアレンジでのライブをまたぜひ目撃させてほしいと強く思った。
●キャロライン
昨年の来日公演は早々にソールドアウトし、今回の来日を心から待ち望んでいたオーディエンスは多かったはず。
微かなライティングに照らされたステージに登場したメンバー8人は半円を描くようなポジションに立ち、ジャスパーがスネアをステージ中心のアンプに近づける。演奏の1曲目は昨年大きな評価を得た2ndアルバムから“Song two”、オーディエンスの緊張感を一気に解すように奏でられた低音のなかに壮大な温かい演奏と歌声が響いていく。
続く“U R UR ONLY ACHING”も柔らかな芯のある歌声にアコースティックギター、ストリングス、ドラムと徐々に8人が楽器を重ねていく。彼らの中にある見えない糸のような合図はこの半円型でしか鳴り得ないものなのだろう、と思う。
慎重に繊細にそしてダイナミックに一つの楽曲を演奏している目の前の奇跡に目が離せず、鮮烈な魔法のように紡がれる音に瞬きも忘れそうになるほど。3曲目には1stアルバムから”Dark Blue”、繰り返されるギターのフレーズにオーディエンスの一体感は増し、深淵に沈むような高揚感を覚える。そのまま余白を巧みに支配し奏でられた“When I get home”、“ Tell me I never knew that"と秩序ある静/動のコントラストにライブバンドとしての完成度の高さに驚くばかりであった。溢れ出るステージからの多幸感に圧倒されつつ、ひりひりとした焦燥感にも似た気持ちを保ちながらライブは終盤へと向かいジャスパーによる次曲“Coldplay cover”の楽曲説明がなされる。
2部屋で異なるメロディーを同時録音し1つの楽曲にしたというこの曲はステージ上でもメンバーが上手と下手に分かれ、2つの歌を見事に融合させていった。音響バランスも素晴らしくぴったりと重なり合った演出の密度に、底知れぬ没入感を味わう。そして“Good morning(red)”の美しい詞とそこに重なる叫び声に観客も体を揺らしていたさきには、唐突に響いた激しいノイズ。
その中で鳴らされたのは“Total euphoria”のイントロで、瞬く間に会場からはほぼ叫びに近い歓声があがる。
ステージ上のメンバーも思い思いに全身をつかって揺れ踊り、そのメロディーとアンサンブルは鳥肌が立ってしまったほどの陶酔的な美しさだった。この感覚をそのまま閉じ込めておきたくて、帰り道はなにも聴けずに歩いた。あまりに鮮烈な一夜だった。
彼らのステージをフジで見られたら、と期待せずにはいられない。 (土屋美月) 
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