2009下半期ベスト 第10位
2009.12.01 13:30
今日から始めます、2009年超私的ベスト・アルバム、下半期編です。
まずは、第10位はこちら、TYONDAI BRAXTONの『Central Market』。
Battlesの司令塔として、ロック・ミュージックの新しい幾何学を考察する彼のソロは、前衛的なクラシックやジャズを聴いて育ったその出自を、現代のヒップホップ、エレクトロ、ダンス・ミュージックの潮流を通過した後に放出させた、まるで建造物のようなシンフォニーとなって現れた。
そう書いてしまうとなんだか味気ないお勉強音楽な印象もあるけれど、
Battlesがそうであるように、もちろんこのソロもそんなことはない。
というか、Battlesがギター、ベース、ドラム、キーボードといったベーシックな機材を駆使し、エフェクト的にはシンプルなループといったストイシズムを貫き、それらの極小なアンサンブルからいったいどれだけのダイナミズムは生まれえるかということの試みであるのとまったく同じように、
このソロ作は、そうしたロックのダイナミズムは、はたして非ロック的なエレメンツからも同じように生まれうるものなのかという問いかけとなっているのである。
そのような行為が、つまるところ、「ロックのエネルギーはどのような条件によって生じるのか」という原理との格闘であるのは、言うまでもない。
流麗なストリングスが猛烈なグルーヴを巻き起こす瞬間に、ロックの奥底を覗き込んだような気がする、稀有な作品。