今年2月の対バンツアーで初めてDannie Mayを観た日のことを今でも鮮明に覚えている。ダークな空気感漂う音楽を畳み掛け、フロアを踊らせていた彼らが最後に披露したのが、夢を追いかけ続ける決意が滲む、疾走感溢れるまっすぐなギターロックの“コレクション”という曲だった。困難な道の先を照らす光のようで、一聴しただけで心の奥まで沁み渡っていく、人間味を感じられる歌だった。でも正直に言うと、直前まで演奏していた曲たちとあまりにも違いすぎる、と驚きもした。こういう曲を歌う人たちだったのか。私は何か大切なものを見落としているような気がした。
これからもっと多くの人がDannie Mayの音楽と出会うだろう。その中には、全く異なる曲調の楽曲たちをどう聴いていいのかわからない、と思う人もいるかもしれない。だから、どうしてこんなに幅広い音楽を作っているのか、それでもすべての曲に共通するDannie Mayらしさとはなんなのか、曲をスキップする前にちょっとだけでも考えてみてほしい、バンドの想いを知ってほしい、という願いを込めて今回のインタビュー記事を制作した。ぜひ手にとって読んでほしい。
7月のワンマンライブの終演後ブログにも書いたが、Dannie Mayは、それぞれにボーカルブループなどで音楽活動をしていたけど長くは続かず、それでも音楽の道を諦めたくなくて集まった3人で結成された。そんな強い想いをもってしてもバンドは順風満帆とはいかなくて、結成直後にコロナ禍に見舞われたり、3ボーカルバンドという異色の編成にいらぬ先入観を持たれたり、5年間の活動のうちに幾度となく悔しさを噛み締めてきた。
私は最新アルバム『Magic Shower』に収録された、音楽の持つ力を信じる歌“マジックシャワー”を聴くと、《響きわたれ 僕の歌》と願う“ユウヤケ”(2020)が思い浮かぶし、夢になかなか辿り着けない葛藤を描いた“アストロビート”を聴くと、《才能がリアルな秤になった》と弱音をこぼす“小舟”(2021)や、《未来だった今が/時々汚れて見えるんだ》と悔しさと虚しさが入り交じる“コレクション”(2023)など、これまでのいろんな曲が脳裏をよぎる。音楽に人生をかけるさまが、地続きで歌詞として綴られているからだ。そして、彼らが背負う物語と、灯し続ける音楽へのただならぬ想いに気づかされたのは、紛れもなくライブの瞬間だった。
どれか1曲でもDannie Mayの歌が刺さったあなたは、幅広いジャンルのほかの曲たちも必ず好きになる。そんな魔法をかける歌詞やライブに、Dannie Mayというバンドの奥深さを感じずにはいられないのだ。(有本早季)
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あなたにも必ず刺さる歌がある──ジャンルを飛び越える魔法をかけるバンド・Dannie Mayの音楽への愛に、JAPAN初インタビューで迫る!
2024.10.16 18:00