ウィルコのジェフ・トゥイーディ、新作『ザ・ホール・ラヴ』を語る

ウィルコのジェフ・トゥイーディ、新作『ザ・ホール・ラヴ』を語る - 『ザ・ホール・ラヴ』『ザ・ホール・ラヴ』

9月28日に3年ぶりとなる新作『ザ・ホール・ラヴ』をリリースするウィルコだが、ジェフ・トゥイーディが新作制作の経緯やバンドの近況についてスピナーに語っている。

今回は古巣のノンサッチ・レコードを離れて新しくdBpmレコードを立ち上げるなど新体制を用意しただけでなく、バンドとしても初めて長いオフを取ったというが、その辺の心境についてジェフはそもそもオフをこれまで取らなかったのはその間に曲の感触を忘れてライブがままならなくなったりするのが怖かったと語っている。ただ、今回のやり方を通してそんなことは事実として起きないと確認できたからよかったと説明していて、メンバー全員の取り組み方や曲の出来上がり方にもかなり新鮮なものを感じたと明かしている。

実際、ウィルコの楽曲というのは相当な重しとしてジェフのなかで存在しているようで、オフの間、ライブから離れてウィルコのこれまでの楽曲からも離れれば離れるほど、それぞれの新しい曲についてこれまでとは違ったさまざまなアイディアを最後まで試みてみるエネルギーも湧いてきたと語っている。今回新作で試みたいくつかの実験的なアプローチは、常日頃ウィルコの楽曲を演奏するという重しから解放されていたからやりやすくなっていたはずだとジェフは説明する。

ジェフによれば、ウィルコのこれまでの楽曲は「常に参考にする楽曲の体系がひとつの庭園のように」出来上がっていて、それが自分にのしかかってきているところもあったと語る。

「そういうものがものすごくメンタルなエネルギーを吸い取っちゃうんだよね。どうやって説明したらいいのかわからないんだけど、自分の脳味噌の中のまったく別なところを支配して、なんかそれとは違った新しいものを想像するにはそれをいったん全部捨てなきゃならないんだけど、それがすごく難しいんだよ。だから、今回ぼくにとって最大の教訓となったのは、この庭園をそんなにあてにしなくても実は大丈夫なんだって自覚することだったんだね」

こうした実感はバンド全体の演奏にも今作ではよく感じ取られるとジェフは言っていて、たとえば、ギターのネルス・クラインがウィルコの音を鳴らすために演奏していることにウィルコとしての自意識を感じないとジェフは語っている。「ネルスがウィルコとしてやっていることに気楽さと自信が感じられるのは単純にネルスがウィルコの一員だからだと、そう感じるんだよ。同じようにどのバンド・メンバーも全員がね、昔より自意識を感じていないように思えるんだ」。

その一方で、今作のボーカル・スタイルの多様性については、作品をどう歌うかまったく心配しなくなったからと説明している。もともと初期の作品では歌の音程が低すぎたため、ライブでうまく伝わらなかったという経験を度々していて、ジェフはある時期から意識的にもっと高い音域に必ずボーカルを収めるように書いてきたというが、今回は一切そういう心配をするのはやめたと語っている。「そういう心配はしないことにして、曲毎にみんなで対応すればいいと決めたんだよ。曲ひとつひとつはそれぞれにまったく独立した作品として取り組むと。もしライブではキーを変えないと歌いにくいというんだったら、ライブではキーを変えればそれでいいと。これまでこんなことになんであんなにこだわって悩んでいたのか、よくわからないよ」。

ジェフは全体をまとめる印象として、とにかく今作は新鮮に感じるということを力説している。「すべてがぼくには本当に新鮮に感じるんだ。これまでやってきたものと馴染むところも聴き取れるけど、でも、それと同時に、これまでかなりやり尽くしてきたものはこの作品では相当に少ないと思うんだ。たとえば、“アイ・マイト”みたいな歌詞ってこれまで書いたことないと思うし。それと同時に“ボーン・アローン”で表現しようとしたものをこれまでぼくは表現したこともないと思うんだ」。
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