満員の幕張メッセで「王者」が見せた素顔――
ファンクラブ限定ライブ詳細レポート&最新曲“雨燦々”レビュー
文=小川智宏 撮影=川上智之、伊藤滉祐
6月というのに真夏のような暑さ。屋内とはいえ、およそ2万人が駆けつけた幕張メッセは異様な熱気に満ちていた。昨年のアリーナツアー以来となるKing Gnuのワンマンライブは、ファンクラブ会員限定の「CLUB GNU EDITION」。ステージ上で井口理(Vo・Key)も言っていたが、そうした形で大阪城ホール、そして幕張メッセをそれぞれ2デイズ、余裕で売り切ってしまうという事実が、このバンドの今のスケール感とファンダムの分厚さを物語る。そしてコアなファンしかいないからこそ、ステージから放たれる熱も、客席に渦巻く空気も、この上なく濃密で特別なものになる。以下、6月26日、ツアーファイナルのレポート。ファンクラブイベントらしいフレンドリーさと不敵なまでの自信。秋にドーム公演を控えているというのもあるのだろう、2022年のKing Gnuは紛れもなくロックシーンの「王者」であることを、そのライブは物語っていた。
性別も世代もさまざま、親子連れのような姿もちらほらと見える客席の雰囲気が、ステージをスモークが覆い、低音ノイズのようなSEが流れ始めた瞬間にキュッと引き締まる。それに続くのは長く力強い拍手だ。そしてそれを引き裂くかのように響き渡る井口の歌声と常田大希(G・Vo)が弾くピアノ。いきなり圧巻の“カメレオン”からライブはスタートした。King Gnuの2022年のキックオフとなったこの曲をライブで観るのは初めてだが、抑制の効いたアレンジが、ライブだと一層歌の鮮やかさを引き立てている。そして2曲目は“Hitman”――意外といえば意外な流れではある。2020年のツアーは“どろん”と“Sorrows”でいきなり空気を切り裂くようなオープニングだったし、昨年のツアーでは“飛行艇”でのっけからフルスケールの興奮を描き出していたが、今回は少し違う。奇襲で先制点を狙うのでも、横綱相撲で格の違いを見せつけるのでもない。緻密なアンサンブルと美しいメロディ、そして井口の歌にフォーカスして、King Gnuというバンドの骨と肉を惜しげもなく曝け出すような感じなのだ。もしかしたらそれもファンクラブ限定だから、というのがあるのかもしれないし、そもそもバンドとしての立ち位置が変わったということなのかもしれない。(以下、本誌記事に続く)
(『ROCKIN'ON JAPAN』2022年9月号より抜粋)