なんという驚きのカムバック!
イマジン・ドラゴンズが2018年の『オリジンズ』以来、3年ぶりの新曲を同時に2曲リリースし、そのうちの1曲“フォロー・ユー”でこれまでのバンドのキャラとはちょっと違う笑いのあるMVを発表。米人気TVドラマに出演する実生活でも夫婦の俳優2人が登場し、夫の誕生日に劇場を貸し切り、夫の好きなバンドであるザ・キラーズのライブをプレゼントするのだが、登場したのは妻の好きなバンド、イマジン・ドラゴンズだった!
しかもボーカルのダン・レイノルズが上半身裸で妻を誘惑する超笑える内容になっている。もっと凄いのは、その曲のインスピレーションは、彼が7ヶ月口をきいていなかった妻と離婚届にサインしようという日に妻からメッセージを受け取り、再び恋に落ちてプロポーズし、子供を授かったことだというのだ。彼曰くこの曲は「リアルな愛について」で、彼にとっては非常にシリアスで深い意味があるのに、このように大爆笑のMVにできたことこそが、彼らが数少ないアリーナ・ロック・バンドでいられる理由だと思う。
つまりその絶妙なバランス感覚が今も健全だということ。
さらに興味深いのは、これと同時に発表された“カットスロート”。笑いとポップさとは真逆の、彼らのキャリアでも最もエッジがあるダークな曲だ。彼らの新作はかのリック・ルービン(リンキン・パーク、レッド・ホット・チリ・ペッパーズらの楽曲を手掛けた)がプロデュースすることでも話題だが、ダンはリックに100曲も送ったそう。
リックには断られると思っていたのに、全曲にコメントが付いて戻ってきたという。ガチで彼がプロデュースした新作が期待できるのだ。“カットスロート”は、ダン曰く、最もルービン色が出た曲で、サウンド的にもテーマ的にも“フォロー・ユー”の対極にある。ダンがバンドのマネージャーも含め、友人の死などを体験したことがこの曲のインスピレーションとなり、同時に自分の抱えた闇などと向き合う非常に内省的な曲だ。
アルバムはどうやら“フォロー・ユー”のような思い切り外向きの曲と、“カットスロート”のような内省的な曲が対になっているそう。これまでになく両極に振り切れた思い切りダイナミックな作品が誕生するはずなのだ。その衝撃の新作を期待したい。(中村明美)
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