「曲っていうのは、個人的な思いから生まれるものでもあり、そこに創作ならではの技巧が加わって、聴く人をいい意味で裏切るもの。これはその好例だと思う」(リヴァース)
この最新インタビューの中で、ウィーザーのニュー・アルバム『オーケー・ヒューマン』はかの名盤、『ピンカートン』の相似形という切り口で語られている。リヴァース・クオモ自身もそれを認めつつ、新作について、そして四半世紀にわたるウィーザーの歩みを語った充実の内容になっている。
全編で38人のオーケストラを起用した『オーケー・ヒューマン』はその特殊なコンセプトにも拘らず異色作ではない。むしろウィーザーらしさを随所に感じるファン歓喜の一作に仕上がっているが、その理由のひとつが本作には『ピンカートン』と重なる(但し、完全に一致ではないことは本記事でリヴァースも語っている)「内気なのにエモい」あのウィーザー独特の感覚が蘇っているからだろう。
パンデミックの最中にリヴァース宅にお邪魔して話を聞いているからか、彼のリラックスした語り口も魅力だ。外界との繋がりが断たれ、家族と過ごす時間、ひとり内省する時間が増えたことを心地よく感じているのがリヴァースらしいし、そんな中でも彼らは次作『ヴァン・ウィーザー』、そして早くも次々作の準備に取り掛かっている。贅沢な充電期を経て再び走り出すウィーザーを楽しみに待ちたい。(粉川しの)
ウィーザーのインタビューは、現在発売中の『ロッキング・オン』4月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。