自由を追求するのは当人にとって決死の行為であり、他人を傷つける行為に繋がる場合もある。そんな人間のダークな側面を反映した“自由”を語った歌詞の曲が今作には多いんだ
大ヒットとなった『ポスト・ポップ・ディプレッション』に続くイギー・ポップの新作『フリー』は、彼のパブリック・イメージとはちょっと違う肌合いだが、長年彼が挑んできたもう一つの方向性を突き詰めた傑作だ。暴れ回る元祖パンク帝王ももちろん彼だが、同時に非常にセンシティブな言葉や音に魂を込めていく姿は、どんな音楽スタイルやアプローチであっても濃密なイギー・ワールドを作り上げていく。
映画『インターステラー』にも使われた、詩人ディラン・トマスが死の床にある父親に捧げた詩“あのやさしい夜の中へおとなしく入ってはいけない”から、イギーは自身に向かって投げかけるように《消えゆく光に怒りをぶつけ暴れるんだ》と激烈な言葉を吐く。まさにロック界を“自由”に走り続けてきたからこそ到達した境地を語るインタビューは、黒光りする輝きに満ちている。(大鷹俊一)
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