【知りたい】来日間近! 新世代のスタジアム・ロック・バンド=イマジン・ドラゴンズとは?
2018.01.03 12:00
2018年の年明けを飾るビッグな来日と言えば、1月9日に迫ったイマジン・ドラゴンズの来日公演だろう。彼らは2013年、2015年とサマソニへの出演を果たしているが、今回は待望の初単独来日だ。
しかも昨年6月にリリースされた大ヒット・アルバム『エヴォルヴ』を引っさげてのステージであり、ヒット曲を多数収録した新作を中心に厳選されたベストヒット・ショウとなるのは確実。2010年代を代表するロック・バンドである彼らの正確なスケール感をこれまでいまいち把握しきれていなかった我々と海外の時差を、一気に詰める一夜となるはずだ。
もしあなたがイマドラのことをよく知らなかったとしても、彼らの曲をラジオや街や店で無意識に耳にしている確率は非常に高い。彼らはとにかくアンセムの即効性と聴く者を瞬時に惹き付ける握力を持ったバンドだからだ。
ビルボード・チャートで初登場2位を獲得した新作『エヴォルヴ』は、このご時世にあって異例の大健闘を見せたロック・アルバムだったわけだが、そんなアルバム・セールス以上に顕著だったのが、2018年上半期にアメリカで最も売れたシングルとなった“Believer”、そしてオルタナ・ロック・チャートで1位、現時点でYouTubeで4億回以上再生されている“Thunder”といったシングルの際立った強さだった。
トゥエンティ・ワン・パイロッツやThe 1975といった英米の新世代トップ・バンドに共通しているのは「ロック・バンドがポップ・ソングで勝っている」という点だが、それはイマジン・ドラゴンズにもそのまま当てはまる方程式だ。また、これらのバンドのもう一つの共通点は「ロック・バンドだけれどロックに限らない」エクレクティックなサウンドであり、イマドラはとりわけその傾向が顕著なバンドだ。
前作『スモーク・アンド・ミラーズ』はダークでシリアスな内容で、ロック・バンドらしい統一感を持ったアルバムだったが、新作『エヴォルヴ』は強烈キャッチーな楽曲を詰め込んだアッパーな作品だったこともあり、1曲1曲がまさに粒揃い。
R&B、ゴスペルをエレクトロ・ポップに落とし込んだ“Thunder”にしろ、よりヒップホップの要素が強い“Believer”にしろ、ギター・バンドであるはずの彼らにとってギターはもはや主軸ではない。リフやソロで聴かせるギターはレア・ケースで、“Whatever It Takes”のようにシンセと対等にレイヤーを構成していく一要素となっている。
デビュー・アルバム『ナイト・ヴィジョンズ』の頃はキラーズ直系のエレポップ、コールドプレイからの影響を色濃く感じさせるリリカルなメロディ・ラインで語られることも多かった彼らだが、『エヴォルヴ』ではより骨太でグルーヴィーな作風へと転じている。
面白いのが、彼らのサウンドは確かに骨太で分厚いのだが、その強さや厚さは音粒をきっちり詰め込んでいく密度、構築性によって得られたものではなく、まるで極太の毛筆で巨大な和紙に大胆に墨を迸らせていくような、シンプルで大胆、かつ直感的なものである点だ。そしてそのヌケの良さを生かす広大な空間設計は極めてU2的だとも言えるし、彼らが新世代のスタジアム・ロック・バンドの筆頭格である所以なのだ。
イマジン・ドラゴンズがキラーズ同様にラスべガスの出身であり、下積み時代には地元べガスのカジノやバーを転々としながら雇われバンドをしていた、というのも有名な話だ。誰も自分たちのことを知らない、知らないどころかそもそも音楽を聴くつもりで来ていないお客達を楽しませ、自分たちに惹き付けるためには何でもやったという。
そう、彼らはシビアなエンターテインメントの世界を客観的に捉える経験値とクールネス、そこで勝つための誰も疎外しないポップ・ソングを追い求め続けるパッションを兼ね備えたバンドなのだ。場末のバーからスタジアムへ、一歩ずつひたむきに歩み続けてきた彼らのポップの説得力を、東京体育館でぜひ目撃して欲しい。(粉川しの)