2018年もたくさんのアーティストがライブやプロモーションで来日を果たし、数々のアーティストに対面インタビューをさせてもらいました。
2018年の初インタビューは年明け早々に来日したイマジン・ドラゴンズ。噂には聞いていたこのバンドのタフさに驚愕した初対面取材だった。何しろ『エヴォルヴ』のリリース後、延々と世界中を飛び回り、移動日以外はほぼステージに立っているという過酷な過密スケジュール。しかもその過密スケジュールを縫って東京体育館の楽屋で敢行された今回のインタビューは、なんと開演時間の5分前までやってOKという申し出!
インタビューを終えて我々が慌てて会場に入ったところで彼らも即オンステージ、という段取りだった。余談ですが、個人的に過去最もライブの直前ギリギリまでやったインタビューと言えば、ミューズの2010年の来日。武道館の楽屋でインタビュー、舞台袖で撮影、最後のワンカットを撮り終えたその足でステージに上がった3人でした。
ナッシング・バット・シーヴスも1月来日だった。初来日時には全員一斉に話し始めて(しかも二日酔いのメンバーもいる)カオスだった彼らだけど、挫折と再生の物語だったセカンド『ブロークン・マシーン』を経てすっかり精悍に成長した彼らの頼もしさが感じられる再インタビューとなった。ちなみにコンビニで買ったというチョコレートを食べながら「うわっ何これ、グリーン・ティー・フレーバーだ!」と驚いていたのはコナー。緑色の包装=抹茶味の法則を学んだ来日だった様子。
一年に2度も取材させてもらったのがフランツ・フェルディナンド。しかも2回共に同じホテルの同じラウンジの同じテーブルでインタビューするという相当なデジャブ感。最新作『オールウェイズ・アセンディング』を経て5人編成の新生フランツが出来上がっていく過程が伺える興味深い話を聴くことができた。
かれこれ13、14年の付き合いになる彼らだけに、「ROは僕らをずっとサポートしてくれているメディアなんだよ」と、アレックスが新メンバーのジュリアンに紹介してくれる一コマも。ちなみに11月の来日時に実は風邪気味で喉が擦れていたアレックス。でもご存知の通り、その不調を微塵も感じさせない発奮パフォーマンスとなったのでした。
LAとロンドンからそれぞれ登場したフレッシュなニューカマー、スタークローラー(3月)とゴート・ガール(6月)の初来日インタビューもそれぞれゲット。血糊まみれ汗まみれで刹那マックスなそのライブ・パフォーマンスとは裏腹に、インタビューではむしろ育ちのいい素直さや真面目さがひしひし伝わってきたスタークローラー。一方のゴート・ガールはハタチそこそこの高感度なシティ・ガールズのリアルな温度が伝わってくるトークとなった。サウス・ロンドン・シーンの話でとあるバンドが好きだと言ったら「えっ、それ私の彼氏のバンドだよ!」と嬉しそうなロッティでした。
初対面の初々しい新人の一方で、2018年は久しぶりにインタビューさせてもらうベテラン勢もいた。再始動したジェットの3月の来日もそのひとつで、セスター兄弟にインタビューするのは実に8年ぶり。
素晴らしいソロ・アルバムを作っている兄ニックが、ソロとジェットの棲み分けについてじっくり語る傍らで、ミューズのマシューたちとやっているビートルズのカバー・バンドを筆頭に、ユニークなプロジェクトをいくつも掛け持ちしている弟クリスの面白トークが炸裂するという、実にこの兄弟らしい呼吸が再確認できたインタビューだった。
久しぶりのインタビューと言えば、6月に来日したゴリラズ。デーモン・アルバーンの対面取材は2003年のブラーのサマソニ来日以来実に15年ぶり! ブラーの活動休止の直前で、取材でも少しナーバスでガードも固かった15年前とは打って代わり、今回の彼は思いっきりオープンでフランク、つくづくいい歳の取り方をしているなあ……と感慨深くなってしまった。
ジェイミー・ヒューレットとも本当にいいコンビで、ほっておくと英国式掛け合い漫才みたいになるトークも新鮮。ちなみに筆者の使っていたデヴィッド・ボウイのノート(『DAVID BOWIE is』のグッズ)に反応したデーモン、「この人(ボウイ)もあっという間に3枚アルバムを出した時期があっただろ、ゴリラズもそういう感じで作れたらいいんだけど」とのことでした。
8月には新作『ヤングブラッド』を引っさげ来日を果たしたファイヴ・セカンズ・オブ・サマーの全員インタビューを敢行。対面インタビューの場合、バンド・メンバーが全員参加すると話の収集がつかなくなるケースが多いのだけれど、彼らの場合は「5人がバランスよく話せているか」、「別のメンバーが話している今の話に付け加えるべきエピソードはあるか」という点を全員がきっちり意識し、目配せしながらトークを回してくれるという、むちゃくちゃプロフェッショナルなチームで感動しきり。ビジュアルも前回来日時からぐっと大人びていて一回りも二回りも大きくなった印象。これぞ3作連続全米1位の風格!
来日のたびに必ずインタビューを受けてくれる働きマン、しかも必ずインタビュー開始時間より早めに登場してスタンバイしてくれる出来る男、それがノエル・ギャラガーだ。
サマソニ現場取材、スタジアムの演奏がダダ漏れの楽屋という騒々しいシチュエーションにも拘らず、「今回はダンス・ミュージックを語ってくれ」という無茶なリクエストにも拘らず、スマホ片手に検索しながら曲名をノートに書き出しつつ、しっかりスタジアムに向かって毒も吐きつつ(ごめん、ショーン・メンデス)、むしろ前のめりで話してくれた兄貴。流石である。
ちなみに対面取材には必ずROの最新号と相手の載っている号をそれぞれ持参するのだが、自分が表紙のROを一瞥した後、そっとひっくり返して自分の顔が見えないようにしたノエルが非常にノエルっぽかったです。
久々の対面インタビューと言えば10月に来日したフラテリスのジョン・フラテリもお久しぶりのひとりだった。彼はインタビューに際して少し気難しくてガードの固い人、とい印象がかつてはあったし、実際フラテリスの活動時期によってはそうならざるを得ない試行錯誤の季節もあったのだろう。しかし今回の彼は極めて穏やかでまるで仙人、はたまたスナフキンのような佇まい。それが迷いの吹っ切れた今の彼のありのままの姿ということだったのだと思う。
そして2018年最後の対面取材となったのが、11月に来日したザ・レモン・ツイッグス。連日のライブでオフタイムがほとんどなかったというダダリオ兄弟を連れて向かった先は竹下通り。ザ・観光地のベタを楽しんでもらおうという企画だったのだけれど、歩き始めて早々に「サングラスほしい」とお店に乗り込んだり、「甘いものが食べたい」とソフトクリームを買いにいったりとアクティブな兄ブライアンに対し、眠気覚ましのコーヒーを所望した以外は眼に映る全てが新鮮な通りの様子を興味深そうに、そして時々不安そうな表情すら見せながら歩く弟マイケル。2人のそんなキャラの違いも垣間見えたひとときだった。(粉川しの)
粉川しの、取材始末記総集編2018:今年はこんなアーティストたちに会ってきました!
2018.12.25 19:49