本年3月に、前作『オリジンズ』以来3年ぶりとなる新作からシングル2曲を発表したイマジン・ドラゴンズより、今回アルバムに関する新たな情報が発表された。まずは、タイトルが『マーキュリー ‒ アクト1』で、発売が9月3日。さらに3曲目となる新曲“レックド”が発表されたがこれがあまりに悲痛な内容だ。
MVを観てもらえば分かるようにダン・レイノルズ(Vo)の義妹が癌で命を落としたことがインスピレーションとなっているのだ。ダンは、この曲は「彼女の命の祝祭であり、悲しみを感じること、そしてカタルシスのある体験をすること」と説明している。MVの最後に「試練が来た時こそ、何が重要なのか分かる」と語られているが、今作も「人生の終焉」が全体のテーマになっている。また、先に発表された“フォロー・ユー”では離婚届にサインをする直前に妻から届いた「テキスト・メッセージで人生が変わり」再び恋に落ちたことを歌い、“カットスロート”では、大御所プロデューサー、リック・ルービン色が濃く、ファンからの賛否両論を覚悟で超実験的なサウンドに取り組んでいる。
ちなみに、元々タイトルにはMercurial(=変わりやすい)を考えていて、それが精神的に超ハイか超落ち込むしかなく、その間の安定がないダン自身を象徴し、かつ今作をも象徴していると思っていたそう。ただ語感の悪さから「Mercury」に決定した模様。それ故に今作は、A面、B面的に2面あり、内面を徹底的に追求した曲と外向的な曲の2極がダイナミックに向き合う構成になっている。サウンドのインスピレーションとしては、ポール・サイモンから子供の頃に習ったクラッシック・ピアノ、ナイン・インチ・ネイルズ、リック・ルービンがプロデュースしてきたヒップホップなどをあげ、他ジャンルをオーガニックにミックスする彼らしさも健在だ。
また歌詞については、なんとリックから一語一句指摘されたそうだ。「こんなの嘘だ。僕には正直な言葉として響かない」と。さらに鬱と向き合うアヤワスカ(幻覚剤)の体験もダンには大きな影響を与えたと言うし、今作のすべては「自分も明日死ぬかもしれない。今やれることをやりきらなかったらなぜ僕はここにいるんだ」という危機感から生まれている。しかもそこから「愛と信念と苦痛と情熱と喪失を探求」しているのだ。とんでもなくドラマチックでスケールのある作品が完成しているとしか思えない。期待して待とう!(中村明美)
イマジン・ドラゴンズの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』9月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。