3月18日に他界したチャック・ベリーをザ・ローリング・ストーンズのメンバーやブルース・スプリングスティーンらが偲んでいる。
エルヴィス・プレスリーと並んで、ロックンロールを生み出した祖とされるチャック・ベリーだが、3月18日に救急要請を受けた警察がミズーリ州にある自宅に到着したところ、すでに息を引き取っているチャックが発見された。ミズーリ州セントチャールズ郡警察では次のように発表している。
「セントチャールズ郡警察では(3月18日土曜日の)12時40分頃、バックナー通りの住民宅から救急要請を受け、出動に応じました。最初に到着した署員はその自宅で呼びかけに応じない男性を確認し、すぐに救命措置を施しました。残念ながら、90歳のその男性は蘇生させることがかなわず、13時26時に男性の死亡が確認されました。
セントチャールズ郡警察ではこの人物がチャールズ・エドワード・アンダーソン・ベリーであること、いわゆるミュージシャンのチャック・ベリーだと確認し、お悔やみ申し上げます。
遺族は今回の不幸に際して家族のプライバシーが守られるように要請しています」
その後、チャックのオフィシャル・サイトでは次のようにチャックの訃報が発表されている。
「心より残念なことですが、ご家族の愛する夫であり、父親であり、祖父であり、曾祖父であったチャック・ベリーが90歳で自宅にて息を引き取りました。最近、チャックは身体を悪くしておりましたが、最後の日々は家族と友人のみなさんに囲まれて過ごしておりました。ベリー家のみなさまにつきましては、プライバシーを尊重していただけますように何卒よろしくお願いいたします」
チャックは1955年に"Maybelline"が初のヒットとなり、自身のエレクトリック・ギターとヴォーカルを軸にしたバンド・サウンドを確立し、ロック・パフォーマンスの在り方そのものを決めたと言ってもいい貢献をロックに残したことで知られる。その後、カバーの定番ナンバーとなった"Rock and Roll Music"、"Johnny B. Goode"、"Roll Over Beethoven"などのヒット曲を生み出すことになり、エルヴィスやビル・ヘイリー・アンド・ヒズ・コメッツらと並んでロックンロールの元祖とされている。
特にザ・ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズへの影響は計り知れないもので、ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーは次のようにツイッターで追悼している。
「チャック・ベリーの訃報を知って本当に悲しいです。チャックが、ぼくたちにもたらしてくれたインスピレーション豊かな音楽のすべてに対して感謝したいです。
チャックの音楽は10代のぼくたちの生活に明るさをもたらしてくれて、ミュージシャンやパフォーマーになりたいという夢に本当にできるかもしれないという息吹を吹き込んでくれました。
チャックの歌詞はほかの誰よりも輝いていて、アメリカン・ドリームに対してこれまでになかったような不思議な光を当てることになりました。チャック、あなたはとんでもない存在だったし、あなたの音楽はいつまでもぼくたちの中に刻まれています」
I am so sad to hear of Chuck Berry's passing. I want to thank him for all the inspirational music he gave to us. 1/3 pic.twitter.com/9zQbH5bo9V
— Mick Jagger (@MickJagger) 2017年3月18日
キース・リチャーズは次のように追悼している。
「俺にとっての大きな灯のひとつが今消えてしまったよ」
"One of my big lights has gone out.”
— Keith Richards (@officialKeef) 2017年3月19日
- Keith, 3/18/17 pic.twitter.com/I86dHlvN5W
ロニー・ウッドは次のようにツイートしている。
「チャック・ベリーが亡くなったことである時代が終わってしまったことになる。チャックは俺にとっての最高峰のひとりだったし、俺のインスピレーションの源泉であり、実に素晴らしい人物だったよ」
So sad ~ with the passing of Chuck Berry comes the end of an era 🙏. He was one of the best and my inspiration 🎸, a true character indeed. pic.twitter.com/OnT8YXZpPn
— Ronnie Wood (@ronniewood) 2017年3月18日
その一方でリンゴ・スターは次のようにチャックを悼んでいる。
「R.I.P.(ご冥福をお祈りします)そして平和と愛を。チャック・ベリーことミスター・ロックンロール・ミュージック。
『とにかくあのロックンロール・ミュージックを聴かせてくれよ/どんなやり方でもいいからお前のやり方で聴かせてくれよ』。今ぼくは演奏しています、あなたを語っています。神様のご祝福がありますように。チャック・ベリー。チャック」
Just let me hear some of that rock 'n' roll music any old way you use it I am playing I'm talking about you. God bless Chuck Berry Chuck 😎 pic.twitter.com/XmwmaGzGpL
— #RingoStarr (@ringostarrmusic) 2017年3月18日
また、ブルース・スプリングスティーンは次のようにチャックを称えている。
「チャック・ベリーはロックンロールを開業した最も偉大な人物であり、これまで存在した中でも最も偉大なギタリストで、最も純粋なロックンロール・ソングライターだった。これはもう長きにわたってとんでもない喪失となるはずだよ」
Chuck Berry was rock's greatest practitioner, guitarist, and the greatest pure rock 'n' roll writer who ever lived.
— Bruce Springsteen (@springsteen) 2017年3月18日
あるいは黒人によるヘヴィ・ロックを80年代に打ち出したリヴィング・カラーは次のようにチャックを悼んでいる。
「R.I.P.チャック・ベリー。チャックこそが理由だった。チャックはこれを楽しそう魅せてくれた。チャックによってこれは可能になった。ありがとう! 『涼しい風のように心地よくいなくなってしまった』」
RIP #ChuckBerry He is the reason. He made it look fun. He made it possible. Thank you!https://t.co/oRfX9mMBEw "gone like a cool breeze"
— Living Colour (@LivingColour) 2017年3月18日
また、レニー・クラヴィッツは次のようにチャックを偲んでいる。
「ヘイル! ヘイル! チャック・ベリー。あなたなしには今の俺たちはなかったはずだよ。これからもロックし続けてくれよ」
Hail Hail Chuck Berry!!! None of us would have been here without you. Rock on brother! https://t.co/tOMuQzUgPX
— Lenny Kravitz (@LennyKravitz) 2017年3月18日
ほかにも以下のアーティストらがチャックを追悼している。
AC/DC「チャック・ベリーこそがロックンロールだ。ロックンロールにとっては悲しい日だが、チャックの音楽はいつまでも生き続ける。ヘイル・ヘイル・ロックンロール!」
Chuck Berry IS rock and roll!
— AC/DC (@acdc) 2017年3月19日
It's sad day for rock and roll, but his music will live on forever.
Hail, hail rock and roll!!!!! pic.twitter.com/ANCkKaglQW
ロッド・スチュワート「俺はチャック・ベリーから始めたんだ。チャックは俺たち全員のインスピレーションとなったんだ。俺が初めて買ったアルバムはチヴォリでのライブで、それを境に俺の人生は変わったんだよ」
It started with Chuck Berry. He inspired us all. The 1st album I bought was Chuck's "Live at the Tivoli" and I was never the same.
— Rod Stewart (@rodstewart) 2017年3月18日
バラク・オバマ「チャック・ベリーは自身の前にいた人たちをすべて乗り越えて行ったんだよ。そして、自分に続いた人たちをすべてけしかけてきた人なんだ。チャック、あなたみたいな人は惜しまれるよ。そちらでは行儀よくしてください」
Chuck Berry rolled over everyone who came before him – and turned up everyone who came after. We'll miss you, Chuck. Be good.
— Barack Obama (@BarackObama) 2017年3月19日
チャックは1926年にセントルイスで生まれ、高校生の頃より音楽活動を始めるが、強盗や窃盗を繰り返すうちに少年院送りになったものの、少年院で結成したヴォーカル・グループが評判となり、施設外での演奏にも呼ばれるほどのものとなった。
社会復帰してから美容師の免許を取りながら音楽活動を続け、ブルースのT-ボーン・ウォーカーのギター・スタイルを特に目指しながら、カントリーとブルースやR&Bを融合した音楽性を模索し続けた。
1955年にシカゴへ赴いた際、マディ・ウォーターズと出会う機会を得ると、マディの計らいでチェス・レコードに紹介され、契約にありつくことになった。チャックとしてはブルース・ミュージシャンとして契約したつもりだったが、チェス側はむしろ時流を考えてチャックのR&Bアーティストとしての可能性に賭けていて、こうした経緯でリリースし、チャックにとって初のロックンロール・シングルとなったシングル"Maybelline"は100万枚を越える歴史的なヒット曲となった。その後、"Roll Over Beethoven"、"Johnny B. Goode"、"Rock and Roll Music"、"Memphis, Tennessee"、"School Days"などロックンロールの定番曲ともいえる名作の数々を生み出していくことになった。
エレクトリック・ギターのヴォーカル、そしてバンドを軸としたパフォーマンスはシカゴ・ブルースのエレクトリック・サウンドをベースにしたもので、これらにさらにチャックの楽曲とR&B的なショーマンシップを加えたものはサウンドとヴィジュアルの両面においてその後のロックンロール・パフォーマンスの原型となった。また、エルヴィスやビル・ヘイリーと違って、チャックのサウンドが徹頭徹尾エレクトリックなものだったことも革命的なものだった。
60年代に入るとロックンロールがアメリカで下火になっていく中でチャックは自身のクラブの従業員だった未成年少女との性交渉を問われたが、チャックは人種差別的な裁判だったとして法廷闘争を続けることになった。最終的にチャックは投獄されたが、出所すると間もなくしてザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズを筆頭とするブリティッシュ・インヴェイジョンが始まり、チャックの名曲の数々も見直され、ライブ・アクトとしてのキャリアを再確立し、以後、老境に至るまで精力的な活動を続けた。晩年はセントルイスのクラブに2014年まで出演していた。