ベースメント・ジャックス、約5年ぶりの単独公演ではチームしゃちほことの共演が実現

昨年7月にFUJI ROCK FESTIVAL '14への出演で来日し、8月には5年ぶりのオリジナル・アルバム『フント』をリリース、3月12日(木) NAMBA HATCH、3月13日(金) TOYOSU PITにて来日公演を行なったベースメント・ジャックス。RO69では、3月13日(金) TOYOSU PITでの公演レポートをアップしました。

【ベースメント・ジャックス @ 豊洲PIT】

現在のベースメント・ジャックスは、グループ史上最もオープンなムードで風通しが良い。昨年のフジロックに続く来日公演は、3/12の大阪・なんば Hatchと、翌13日の東京・豊洲PITにおけるライヴ・セットだ。大地を踏みしめて深呼吸を繰り返しながら、キャラバンのように仲間を乗せて世界中を 旅する、新作『フント』のモードがピークに達していることをありありと伝えるステージであった。スカイブルー地にレインボー・カラーを配したメンバーの衣 装も、今やデザインや着こなしが思い思いになっていて目に楽しい。

ソウル・シスター2人のパワフルな掛け合いによって“Good Luck”からスタートした本編は、フィリックス・バトンとサイモン・ラトクリフが揃ってDJブースに収まり、よりレイヴ感を強調したアレンジの新作曲 “Unicorn”へと連なる。“Power to the People”の突き抜けたアンセム感は問答無用にオーディエンスを跳ね上がらせ、バンド・サウンドが楽曲本来のしなやかなエネルギーを導き出す“Red Alert”というえげつない流れで、さっそく逃れ難い高揚感を描き出してしまった。

実力派シンガーたちが入れ替わり立ち代わりで登 場し、フィリックスとサイモンはほとんどバック・バンドじゃないか、というポジションで仕事に専念している。例えば、特設サイトで“Power to the People”リミックス用の音素材を公開していたことからも伺えるように、今のベースメントは2人がアーティスト・エゴを抑えることで、万人に開かれた 空間を提供しようとしているのだ。言うなれば、その「開かれた空間」こそが彼らの作品でもある。衣装の蛍光模様が闇に踊るダンス・パフォーマンスも、男性 ヴォーカルの伸び伸びとしたアカペラから始まる“Never Say Never”も、すべては『フント』の空間を構成する大切な要素だ。“What’s the News”に、トランペットの強烈なフリー・ジャズ・インプロを加えてゆくタブゾンビ(SOIL&“PIMP”SESSIONS)の存在感がまた 格別だった。

2013年のBIG BEACH FESTIVAL来日時には、『フント』へと連なる開放的なヴァイブは既に用意されていたわけで、だからこそ今回、ステージ本編のど真ん中に配置された、 チームしゃちほことの“Back 2 the Wild”は、とても理に適ったコラボと言える。“Romeo”や“Raindrops”だったら分からないが、“Back 2 the Wild”なら嵌るはずだと確信していた。そう言えばこの曲は元々、アジア系のシンガーが歌っていたナンバーであり、実力派のソウル・シンガー達とは別の 角度から、フレッシュで勢いに満ちたコーラスを賑々しく持ち込む6人が可愛らしかった。

ラテン・パーカッションのソロの脇で、歌舞伎風 の隈取りマスクを被りおどけるフィリックス。身震いするほど美しいファルセット・ヴォイスの“Over the Rainbow”から傾れ込む“Romeo”の熱狂。ハードコアなドラムンベースの“Buffalo”にはバレリーナが舞い、壮麗なフルオーケストラ・ア レンジのトラックを用いた“Raindrops”は星形の仮面を被ったシンガーが歌うミュージカルのようだ。ポップ・ミュージックとは、あらゆる伝統や慣 習の枠組みを踏み越え、新たなルールを創造してしまう文化である。ロックもソウルもハウスも、その浸食力を失ってはただの骨董品にしか過ぎないのだから。

オー ディエンスをまとめて恍惚のダンス・タイムへと誘うDJプレイを経ると、サイモンのロックなギター+フィリックスがマイクを握って前線へと躍り出るクライ マックスは“Where’s Your Head At”だ。巨大なシンガロングを巻き起こし、完璧に本編を締め括った。また、アンコールでは、サイモンのアコギだけをバックに歌われる“Rendez- vu”(この2人は美味しいところを攫っていく)を手始めに、サンバ・ビートの“Mermaid of Salinas”から全員集合の大団円“Bingo Bongo”(しゃちほこメンバーは『フント』Tシャツに着替えていたけれど、咲良菜緒だけはゴリラの着ぐるみで頑張っていた)と熱いラテン・ハウス・ チューンを連発してフィニッシュ。まったく、底なしに懐の深い、春の無国籍パーティであった。(小池宏和)
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