鶴 @ 赤坂BLITZ

今年の初め「ING計画」と銘打って現在進行形の鶴を見せたいと毎月1曲ずつ新曲をライヴで発表するなど、精力的に活動してきた鶴。そして、つい先日、来年2月公開予定の映画『アフロ田中』の主題歌提供を最後にトレードマークでもあるアフロヘアを引退することを発表。10月からスタートした今回のライヴツアー『IingNingGing(イングニングギング)TOUR ~(アフロ)今までありがとう~』は、ツアーとしてはラスト・アフロの見納めということで、ファイナルとなる本日、赤坂BLITZには大勢の観客が大集結した。最初こそ一体どうなるんだろうというアフロ引退への期待と不安が入り混じるオーディエンスだったが、ライヴを観終わった後は、来年の新しい鶴への期待のほうが遥かに勝る決意に満ちたライヴだった。

暗転したステージにいつものSE、ジャクソン5"I Want You Back"が流れ、オーディエンスの手拍子で迎えられながらメンバー3人がステージイン。3人は向かい合って気合いを注入するかのようにジャーンと音を鳴らすと、秋野の「こんばんは、赤坂~!」の第一声からライヴは"Tonightはパーティー"でスタート!恒例のジェスチャー・ダンスでは「A・K あかさか!」→「B・L ブリッツ!」→「A・K・B あかさかブリッツ!」からの「A・K・B フライングゲット!」でなんとAKB48"フライングゲット"のカバーを披露し、いきなり大盛り上がりのフロア。そのまま"朝が来る前に""踊れないtoフィーバー"で一気にテンションを上げていく。

「いろんなことを考え、いろんなことを経験して、今日はいろんなものを吸収した最高の鶴を赤坂に置いて帰るから最後までよろしく!」と秋野が挨拶すると、今回のツアーの先行CD付きチケットという新たな試みで販売したミニアルバム『ハートの磁石』(12月7日に完全生産限定盤として発売決定)から"ハートの磁石"をプレイ。清涼感のあるメロディに「感じたままに進めばいい」というバンドの強い意志を乗せていく。今の鶴は「伝えたい」という欲求がこれまで以上に高まっている。特に「鶴の楽曲をもっと深く聴いてもらいたいから」(秋野)といって、サポートアコースティックギターとしてマネージャーの森田氏を招き入れた中盤のミドルテンポな楽曲群から伝わる気持ちの大きさには胸にグッとくるものがあった。アコギ・サウンドをプラスαしたことでより深みを帯びた"門出"、ストリングスの音色が煌びやかに楽曲を彩った"横顔"は、鶴が作るポップソングの純度の高さを証明している。

「今日ここ赤坂BLITZでは鶴が、東京ドームではエアロスミスがライヴをやっています。エアロスミスじゃなくてこっちに来たってことは、ここにいるみんなはエアロスミスより鶴ってことだよなー!」と秋野が勢いよく煽ると"ダイナマイツ勘違い"で再び4つ打ちビートに踊り狂わされるフロア。気迫に満ちたどんくんの止まらないドラムソロとファンキーに攻め立てる神田のベースソロを経て、「ダイナマイツ勘違い、したっていいじゃな~い、好きならいいじゃな~い、愛してるならそれでいいじゃな~い!」とエネルギッシュに雄叫びを上げる秋野。さらに畳み掛けるように"恋のゴング"を鳴らし、気合いと根性でエアロスミスに負けじと赤坂BLITZを熱く燃え上がらせた。

後半で「アフロ引退」について秋野が真剣に語ってくれた。「もっと鶴の音楽とか、自分たち人間までも曝け出したくなっちゃったんです。もっと深く届けたい、近づきたい。すごく考えたんですけど、1回裸になって鶴をやってみようと決めました。でも、バンドの音が、人間の中身が変わってしまうわけではないです。来年の春以降もみんなと一緒に音楽やらせてください!」「鶴に関わるすべての人、鶴を知るすべての人に言わせてください。今までありがとうございました!そしてこれからもよろしくお願いします!」これまでずっと鶴を面白おかしく演出していたアフロというキャラを脱ぎ捨て、生身の人間、リアルな音を届けていきたいという想いが伝わる言葉にオーディエンスは激励と喝采を3人に送った。そして、「次に逢うために、バイバイするし、次に逢うために歩き出す。そういう歌です」(秋野)と新しい鶴に向かって想いを込め、11月の歌"バイバイじゃあね"で寂しさを振り切って軽快に歩き出していく。そんな鶴の3人についていくようにオーディエンスは"アイタリナイ"で勢いよく飛び跳ねては踊り明かすと曲のラストで秋野は「アイタリナ~イくなんかないぜ~!今宵の赤坂はアイがいっぱい~!」と声を上げてフロアに感謝と愛を贈る。そして、本編ラストは秋野曰く「アフロワークとしては最後の曲」という映画『アフロ田中』の主題歌にも決定している"夜を越えて"で締めくくった。新しい鶴に向かって激走する今の鶴を疾走感たっぷりの8ビートに乗せて表現した気迫に満ちた曲だった。

「ファイナルのアンコールで何の曲をやろう、鶴にとって大事な曲はなんだろうって考えたんだけど……自分たちがこの場にいるのはメジャーデビューっていうのが大きなきっかけの一つだったんです。だからそのきっかけとなった大事な曲を歌わせてください」と秋野が語り、アンコールで演奏してくれた"桜"には涙腺が勝手に弛んでしまうくらい曲に入り込んでしまった。鶴は今も昔も人の琴線に響くような楽曲を生み出してきたし、きっとこれからもそれは変わらない。そう確信させてくれる覚悟のようなものを感じた。そして、ラストは"愛しのハニー″。会場一体となって「トゥットゥワ!」の大合唱でウキウキ気分ではしゃぎまくり、フィナーレを迎えた。さらに、ライヴ終了後はメンバー3人がハイタッチでオーディエンスを会場から送り出してくれるという粋な計らいで、みんな最後のアフロ姿の3人を目に焼き付けるようにして帰っていった。

アフロの鶴とはこのツアーでお別れだけど、来年には新しい鶴と出会えると思うとそれだけで期待はいっぱいだ。本当に今までありがとう!そして、これからもウキウキさせてくれるような鶴を楽しみにしています。(阿部英理子)

1.Tonightはパーティー
2.朝が来る前に
3.踊れないtoフィーバー
4.ハートの磁石
5.その一歩
6.夏の魔物
7.燃えるような恋じゃないけど
8.門出
9.横顔
10.ダイナマイツ勘違い
11.恋のゴング
12.バイバイ じゃあね
13.小さくても世界は変わってる
14.アイタリナイ
15.夜を越えて

アンコール
1.点と線
2.桜
3.愛しのハニー
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