sleepy.ab @ 東京グローブ座

sleepy.ab @ 東京グローブ座
sleepy.ab @ 東京グローブ座 - pic by 古溪 一道(コケイ カズミチ)pic by 古溪 一道(コケイ カズミチ)
今年2月に発表された6thアルバム『Mother Goose』のツアー・ファイナルが、東京は新大久保の「東京グローブ座」にて2デイズにわたって開催。この4月29日の初日公演は――いきなり少々大げさな言い方になってしまって恐縮ですが、偽らざる感慨として――ほとんど“総合芸術”と言って過言じゃないくらい、凝りに凝った映像と、楽曲の世界を彩る効果的な照明、そして何より、緻密かつ優れてダイナミックなサウンドとの“三重奏”で見事な幻想世界を描き出した、掛け値なしに素晴らしい一夜だったのだ。

ライブは冒頭からコンセプチュアルに展開され、場内照明が落とされると、バックの白幕にアルバムのアートワーク、そしてバンド名と公演タイトルが投影され、続けて喝采を浴びてメンバーが登場。セッティングが完了するや、堰を切ったようように“マザーグース”が鳴り響き、瞬時にしてオーディエンスを異世界へと引き込んだのだった。続いて水泡の映像と共に鳴らされた“アクアリウム”では、ステージが青一色に照らし出され、サビでは藤城清治氏の切り絵を思わせる、水中都市の景観を描いたような映像が躍動。そして、“街”では夕暮れの情景がセンチメンタルな楽曲イメージと鮮やかにシンクロ――と、MCで田中(B)が「来てくれた感謝の気持ちをライブでお返しできたらと思いますので、最後まで『Mother Goose』の世界にどっぷり浸かって帰ってください」と語っていたが、その思惑どおりに、オーディエンスは視覚と聴覚の双方から流れ込むイメージの泉に耽溺するように、五感を澄ませてステージに見入っていた。

この夜の勝因のひとつには、東京グローブ座という“地の利”もあったんじゃないか。なんでもシェイクスピアが活躍したロンドンのグローブ座をモデルとして建築されたそうで、客席がステージをぐるりと囲むこの三階建ての円形劇場は、ムードも視聴環境もバッチリ(会場の厳粛さに飲まれて、観に来ていたMONOBRIGHTのメンバーがどこか所在なさげだったのが妙に笑えマシータ・笑)。『Mother Goose』という深淵な物語を堪能するにはうってつけの場所だったんじゃないかと思う。

舞台演出/設定の妙はもとより、卓抜した筆力で様々なシーンを描き分けるバンド・サウンドが何より絶品。“君と背景”や“かくれんぼ”での、水彩画のように柔らかで精緻な演奏(山内のギターは正しく万華鏡のように変幻自在だった)、そして成山(Vo&G)の穏やかで雄弁なビブラート・ボイスは心地よく会場を包み込み、他方、複雑怪奇な津波(Dr)のビートとDEFTONESにも伍する音圧で観る者を圧倒した“Maggot Brain”は、グローブ座に巨大な怪物を召喚するかのようだった(実際、この歌の仮タイトルは“ゴジラ”だったそうです・笑)。「今回のアルバムを作ったことで、曲のバリエーションが増えまして。肉体的なセットリストを用意しておりますので、最後まで楽しんでください」(田中)、「いつも『おやすみ』って言ってたけど、眠らせないぞって(笑)」(成山)なんていうMCもあったけれど、ドラマとしての緩急や動と静のコントラストは過去最高値と言えるものだったと思う(アンコールの“24”での、「イチ、ニィ、サン、シ、ゴー、ロク……」とカウントが上がっていくに従ってクライマックスへと昇り詰めた終盤は圧巻!)。

バンドはダブル・アンコール(「Scene」を披露)にも応えて、約2時間半に及んだステージは大団円となった。「このツアーを終えたら、また次の制作に入らなくてはいけない。次はきっと、『Mother Goose』よりいい作品が出来るんじゃないかと思うので、そちらの方も楽しみに待っていてください」と、半ば確信的に告げる田中の言葉を真に受けて、sleepy.abのネクストを期待して待ちたいと思う。そうそう、この公演を収めたキャリア初のDVD作品が7月にリリース予定ですって!(奥村明裕)

<セットリスト>

1.マザーグース
2.アクアリウム
3.ドングリ
4.メロウ
5.街
6.四季ウタカタ
7.インソムニア
8.現実の箍
9.Maggot Brain
10.シエスタ
11.君と背景
12.メロディ
13.ダイバー
14.sonar
15.トラベラー
16.flee
17.遊泳スローモーション
18.かくれんぼ

アンコール
1.夢織り唄
2.24
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