まずオン・ステージしたのはTHA BLUE HERB。ILL-BOSSTINOの力強いライムが、オーディエンスひとり一人の心の襞に、一文字ずつ刻み込むように届けられる。その背後では、DJ O.N.Oがドラスティックかつドラマチックにトラックを繋いでいく。この下劣で、残酷で、救いのない世界の実相(のようなもの)を暴いていくような、闘争的にして哲学的ですらあるステージだったが、その根源には全ての生命を慈しむ深い慈愛のようなものが感じられて、心の底の部分から揺さぶられるものがあった(特にラストの、「A Day in the Life」のアウトロと共にフィニッシュする様には正直震えた!)。終盤、バックトラックなしに、まるで独白のように紡がれたILL-BOSSTINOの言葉は、そのままこの異種格闘技的イベントの意義を表すものだったと思う。その大意を引用しておく――<違いは違いのままに混じり合ったフロア。俺たちは何の因果か、同じ国に、同じ時代に、同じ世代として生きている。それぞれの表現を突き詰めていくためには、努力していくしかないことを自覚している。本当に自覚しているかどうかは、顔を見りゃわかる。出音で一発でわかる。それだけ共通点があれば十分だ>。
続いて、EGO-WRAPPIN’がTHE GOSSIP OF JAXXを従えて登場。「サイコアナルシス」からライブをキックオフさせれば、極才色のアドレナリンが瞬く間にCOASTに充溢。オーディエンスの快楽指数をみるみる急騰させていく(フロア前にはダイバーも現出!)。「今日もみんなイカしてるぜ!」と、さらに熱狂を煽る良恵。赤いランタン片手に歌う彼女の歌声は実にエネルギッシュで、小さな身体からはヴァイタリティが溢れ出るようだった。中盤、「今回はBRAHMANに呼んでもらいました。7年前にも一度呼んでもらったんやけど……」と良恵が語れば、「俺がまさかの体調不良で(笑)。今日はリベンジやで。しかも、曲も一緒に作ったし」と森。「そう、それを今日披露……できるかな?(笑)」と良恵がフライングぎみに漏らしていたが、なにが起きたかはまた後ほど……。
さぁ、しばしの転換の後、いよいよ主役=BRAHMANの出番だ。おなじみのSEが鳴るや、雄叫びをあげてフロア前にオーディエンスが詰めかける。そして、オープニングの「Far From…」から例のごとく疾風怒涛の、息をもつかせぬパフォーマンスが展開されたのだった。なかでも「Cherries Ware Made For Eating」→「You don't live here anymore」→「Speaclation」→「The Void」→「See Off」と高速チューンで畳み掛けた序盤のフェーズが圧巻で、デンプシーロールのように打ち付けるRONZIのドラミングには気持ちが高ぶって仕様がなかった。ふいにフロアの全面が照らし出されると後の方までモッシュでぐっしょぐしょになっていて、毎度のことながらその熱狂っぷりに驚いてしまう。ノン・ストップで30分以上プレイし続け、終盤の「BASIS」プレイ時にはほとんど足元もおぼつかないようなTOSHI-LOWだったけれど、声量は減退するどころかさらなるパワーを得ているように伸びやかだった。終わってみればトータル50分以上、いささかの弛緩もなくフルスロットルで駆け抜けたBRAHMAN。汗まみれの、半死半生状態で降壇する4人に惜しみない拍手が送られた。
そして、アンコール――「いよいよ披露するときが来たね」と、まずステージに現れたEGO-WRAPPIN’・森がMC。「KOHKIくんが僕の家に来て、2日泊まっていった。ジャック・ダニエル買ってきてくれて(笑)、それ呑んで曲作りして」と裏話を披露して、EGOのふたり+BRAHMANでの想定外のセッション・タイムへ! KOHKIと森のユニゾン・プレイが印象的なイントロから、サビでは良恵とTOSHI-LOWが息のあったハモリを響かせ、そして、間奏ではILL-BOSSTINO・イン・ダ・ハウス! <ぶっ飛んでくぜ、このまま/BRAHMAN/EGO-WRAPPIN’/そしてあなたと!>と力強いライムを届け、COASTは未曾有なる未体験ゾーンへ――。エッジの立ったバンド・サウンドでありつつ、メロディがやたらポップでヌケが良くて、オーディエンスはすぐさま身体を揺らして反応していた。そんな素晴らしくも数奇なコラボレーションで、6度目の『tantrism』は幕を閉じたのだった。TOY’Sさん、早期の音源化よろしくお願いしまっす!(奥村明裕)