【特集】First Love is Never Returnedの初の渋谷CLUB QUATTROワンマンをレポ! DIYスピリット溢れるライブで、ステージとフロアはこの日「ひとつ」になった - all photo by 市川実果all photo by 市川実果

【特集】First Love is Never Returnedの初の渋谷CLUB QUATTROワンマンをレポ! DIYスピリット溢れるライブで、ステージとフロアはこの日「ひとつ」になった

今年4月から始まったFirst Love is Never Returned(通称ラブネバ)の東京、北海道、大阪を巡るツアー「LEAP OUT」は、各地で2マンでの熱い対バンライブを繰り広げてきた。そのツアーファイナルは再び東京。7月24日、ラブネバとしては初となる渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブを行った。チケットはソールドアウト。満員の観客で埋まるフロア。その観客の期待を裏切らない、いやむしろこの夜は予想を超えるほどにエネルギッシュでグルーヴィでエモーショナルなライブをラブネバは繰り広げた。ライブ開始から続け様に放った“Good Morning”“バックミラー”“プラチナ”。この冒頭のパフォーマンスで、バンドのグルーヴが会場の温度を一気に上げた。Kazuki Ishida(Vo・G・Key)のクリアで強さや揺らぎを自在に表現する歌声、Keita Kotakemori(G・Key・Cho)によるステージと客席とを強く結びつけるような言葉と鍵盤&アコギ捌き、Arata Yamamoto(G・Cho)の滑らかかつキレのいいギターサウンド、そしてもちろん屋台骨となるのはYuji Sato(B)とMizuki Tsunemoto(Dr)が織りなすグルーヴ。この日のバンドの音はまるでリズムそのものだった。ラブネバというリズム、生き物。それが会場の空気を支配して、誰もがそのリズムに心地よく体を預けた。
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Kotakemoriは、渋谷のQUATTROは観客として昔からよく足を運んだ会場であったこと、その思い入れの強い場所に今立てていることを感慨深げに語りつつ、「でも、よくあるじゃないですか。聴きたかった曲をやってくれなかったりすることが」と、ライブで人気曲がセトリから外される「あるある」について言及。「皆さんもそう思っていると思うので」と、「懐かしい曲を」と言い終わらぬうちに、Mizukiが食い気味でフィルイン。そして始まったのが“Lady and Sir”だった。2019年にリリースされた2ndシングルだ。フロアからは大歓声が上がり、オーディエンスは即ハンドクラップでそのリズムに乗る。続いて、Ishidaが「今週、私もよくないことがたくさんありまして、ついてないなと思う人がいたら、一緒に拳を上げてくれると嬉しいです」と呼びかけて始まった“Unlucky!!”が、まず序盤のクライマックスと言っていいほどの熱を放っていた。
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ビンテージな音色のギターサウンドに乗せてIshidaの歌声がサビで気持ちよく弾ける。Kotakemoriとのハーモニーも後押しして、フロアも最高潮。「渋谷! もう一丁いけますか!」とKotakemoriが呼びかければ、2サビでは後方までさらに腕が高く上がる。揺れる。曲中のブレイクでIshidaが「今日はKotakemoriさんの声がめっちゃ出てる。皆さんの応援がないと(自分は)負けてしまう」と客席に歓声を乞うと、Ishidaの名を呼ぶ声がそこかしこから飛ぶ。その声に後押しされるようにIshidaとKotakemoriが競い合うように声を重ねると、Kotakemoriの声の響きの強さにIshidaが思わず「負けてるわ」と自嘲気味に笑う場面も。しかしそのあとのIshidaのファルセットの強さにもまた耳を奪われた。
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ラブネバは札幌を拠点に活動を続けるバンドであり、メンバー5人はそれぞれに仕事を続けながら音楽活動をする、DIYを信条とするバンドだ。どちらが本業かという問いさえ不毛というか、そうした価値観に重きを置かないのもラブネバらしさのひとつ。Kotakemoriはメンバーに「昨日、仕事がちゃんと手についたヤツおるか?」と問いかけ、「おらんよな(笑)。だって俺、(職場のPCの)デスクトップの虚空をクリックしていたもん」と、今日のツアーファイナルを迎える高揚感を言葉にした。そしてKotakemoriが「ここからまた熱量増し増しで皆さんに音楽をお届けしていきます。行こうぜ!」と叫ぶと、繰り出されたのは4つ打ちのキックに乗るYuji のスラップベース。Ishidaもシェイカーを振り、抜群のグルーヴが立ち現れる。そのグルーヴにロックバンドのエキセントリックさが付加されて“ファンデーションの前に”が始まると会場から大歓声が巻き起こる。さらにシンセベースとドラムのタイトなビート、そしてエフェクティブなボーカルとで、どこか乾いたバンドサウンドの“Baby,Don't Stop”でまたもや魅了。Kotakemoriの「ここをダンスホールにしたいんですけど、踊れますか!」という呼びかけとともに、ぐいぐいとギアが上がるバンドサウンド。その熱を感じとってフロアのリアクションもより大きくなる。さらに昨年リリースしたアルバム『POP OUT! Ⅲ』から、“メモリーフラッグ”を投下。「今日を人生で最高のライブに!」とKotakemoriが煽ると、自然と会場中が体を揺らし、まるでQUATTROの会場全体が音でひとつになるような流れだった。そのリズムを泳ぐように、Ishidaのミックスボイスが気持ちよく突き抜ける。キャッチーなメロディは、続く“最近変わりない?”で、さらにポップに弾け、バンドアンサンブルはどこまでも面白いようにドライブしていく。何よりバンドメンバー全員がこのアンサンブル、このリズムを楽しんでいるのがよくわかる。そのバイブスが即フロアに伝播して、そのリアクションを受け取ったバンドがさらに大きな熱を生み出していくのだ。完全にポジティブな流れが生まれた。ステージとフロアとが「ひとつ」になる高揚感に満ち溢れていた。演奏後にはKotakemoriも思わず「やりすぎちゃった(笑)」と笑うほどのシナジーがそこに生まれたのであった。
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Kotakemoriもかつてはバンドのフロントマンであったこと、さらにArataは現在も自身のバンドArataでギター&ボーカルを務めていることからもわかるように、ラブネバはこのふたりのコーラスも強力な武器となる。“泡と文學”で聴かせるコーラスワークの素晴らしさにも魅了され、そのハーモニーが“落日々”での深いR&Bのグルーヴへと続く。そして次の“シューズは脱がないで”は、コロナ禍により拠点としていたライブハウスが閉店してしまったり、メンバーが脱退したり、社会情勢的に音楽活動が困難になるなど、活動休止状態を余儀なくされたラブネバが、2022年に再始動し、その年の12月にリリースした楽曲だ。演奏前にIshidaがこの曲ができた当時のことを振り返る。実はこの“シューズは脱がないで”ができあがるちょっと前に、IshidaはYujiに「こんな曲が世の中に出てしまったら、僕は終わってしまう」と伝えたのだという。今だから言えることだと前置きしながら、そのときは「バンドを辞めようか」ということも少し頭によぎったのだと。確かに当時のラブネバからすれば、この曲のシティポップ感は新機軸であり、メロディラインのキャッチーさは、思い描いていたバンド像から少し外れるものだったのかもしれない。しかしIshidaはそこでバンドを諦めるのではなく、「(バンドを辞めるのは)自分が思ってることをちゃんとみんなに伝えて、やることをやってからにしようと思った」のだという。その結果、この楽曲が持つポップさや柔らかさが、自分自身も納得できるものとして、また、この先のラブネバの持つ魅力のひとつとして刻み込まれるような楽曲になった。結果として、バンドの存在が広く知られていくきっかけとなる名曲になった。バンドのヒストリー、その転換期を象徴する非常に重要なこの曲の歌声が、この日のライブではArataのコーラスも含めてとてもグルーヴィーに響き渡っていった。
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後半、サポートメンバーとして古川翼(Sax)と大泊久栄(Trumpet)を招き入れると、“夜的平成浪漫”が始まり、厚みのある有機的なバンドサウンドでさらにフロアは熱量を上げていく。そして「ここからもう一段上げていくよ!」とKotakemoriの煽りから、アップテンポのモータウンビートが弾けて“僕らの行進曲”へ。客席のハンドクラップもバンドサウンドの一部かと思うほど、会場全体がひとつとなって高まっていく。続く“Black or White?”でもホーンサウンドが炸裂し、ラブネバならではのディスコビートで魅了する。現時点での最新アルバムである『POP OUT! Ⅲ』からの楽曲連発の流れで、バンドの進化を改めて実感する時間でもあった。そのポップさは夏らしい“微炭酸”でクライマックスへ。爽やかなバンドサウンドと歌声、そしてサックスのソロにメンバーも笑顔を見せる。このバンドアンサンブルの気持ち良さは格別だった。本編ラストは“デッドライン”からの、キラーチューン“OKACHIMACHI FRIDAY NIGHT”。ホーン隊を交えての最高のダンスナンバーで会場中が腕を左右に振りながらシンガロング。この日のラブネバは終始、見事なライブ運びを見せた。
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アンコールの演奏前には、バンドとして大きなトピックとなる情報も解禁された。10月7日に初のフルアルバム『W.O.R.K.S.』をリリースすること、11月7日からはそのアルバムを引っ提げて、全国5ヶ所を巡るワンマンツアーが開催されることが発表されると、会場からは驚きと喜びに満ちた歓声が上がった。東京公演ではラブネバ史上最大規模となるZepp Shinjuku(TOKYO) でのワンマンも実現する。今日のライブの充実を存分に感じ取ったあとだからなおさら、その先の彼らに期待が高まってしまう。そんなオーディエンスの気持ちごと音楽に乗せるように、アンコールの1曲目に披露したのは、7月1日にリリースされたばかりの新曲“Passengers”。Kotakemoriは、ライブの冒頭でも「ラブネバ号みたいなのがあるとして、それにメンバーもみんなも一緒に乗っている」のだと喩えていたが、この新曲になぞらえて、それは「船ではなく飛行機ということにしておきましょうか」とも言っていたことを思い出す。ライブを支えるスタッフやフォトグラファーも古くから彼らに寄り添う仲間たちであり、彼らの「DIY精神」とは、ライブに参加するすべての人を巻き込んで、その気持ちごと形にしていくという意思のことでもあるのだと実感する。だからこそ、avexとタッグを組んで自主レーベル「HEiLO RECORDS」を立ち上げ、バンドを取り巻く規模が広がり続けている現在でも、「誰ひとり置いていかない」と言い切れるのだ。アンコールラストは“People 365”。《出会い、お別れを繰り返し/眠り、とけて、繋ぐ365日》という最後のフレーズ。そのIshidaの歌の即興的なタイム感に、Kotakemoriの鍵盤がまさにベスト&ジャストのタイミングで響き、ライブのエンディングを彩ると、Ishidaが「よく合わせられたね」と笑顔を見せた。とても美しい終演だった。音楽で心を重ね合わせる、今のFirst Love is Never Returnedのバンドの在り方、その美しさを見たような心地がした。
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ラブネバの「最高」を更新したようなライブだったと思う。アンサンブルの良さだけでなく、ステージと客席との一体感を作り出すセトリの組み方やライブの流れが、観るたび進化している。それも含めてのバンドの「リズム」だ。ラブネバの「リズム」はこれからさらに豊かに深くなっていくことだろう。秋のフルアルバムも楽しみでしかないし、それを引っ提げてのツアーでは、また彼らの飛躍を目の当たりにすることになるはず。今こそ、First Love is Never Returnedの音に、ライブに注目すべし。(杉浦美恵)
●セットリスト
#FLiNR S/S TOUR 2026 "LEAP OUT"
2026.7.24 SHIBUYA CLUB QUATTRO01. Good Morning
02. バックミラー
03. プラチナ
04. Lady and Sir
05. Unlucky!!
06. ファンデーションの前に
07. Baby,Don’t Stop
08. メモリーフラッグ
09. 最近変わりない?
10. 泡と文學
11. 落日々
12. シューズは脱がないで
13. 夜的平成浪漫
14. 僕らの行進曲
15. Black or White?
16. 微炭酸
17. デッドライン
18. OKACHIMACHI FRIDAY NIGHTEncore
19. Passengers
20. People 365提供:HEiLO RECORDS
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部
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