──語感から広がるイメージも、創作のうえで大事な要素ですか?ヨシキ はい。大事ですね。おとやん 初期から「パワーワードって大事だよね」という話は、よくしていました。タイトルもそうだし、サビ頭の言葉とか、「なんか気になる言葉が入るって大事だよね」って。今はまたそこに回帰してきている感じもするな。ヨシキ 初期から自分の中に「他の人が使わない日本語を歌詞に使いたい」というのがあって。今回の3曲目“おてんとうさま”のサビ《眩しい! 眩しい! デカ太陽!》ですからね。「眩しい太陽」はあっても、「眩しいデカ太陽」と言うやつは、いないだろうなと(笑)。そういうのをフックにしたいという気持ちでやってきたんですけど……もはやそれがお客さんにとって普通になってきているのか、思ったほど《デカ太陽!》が変な言葉として受け止められてない気がします(笑)。こーてぃん 「ヨシキさんのMC、今日もデカ太陽だったなあ」とか、普通に使われ始めてますからね。京哉 意味わかんない言葉なのに(笑)。タイアップに寄せすぎると、他の人でも作れるものになってしまう。ORCALANDだから出てくる言葉、サウンドは常に意識しています
──言葉単体では意味不明なのに、音に乗せて発するとなんかニュアンスが伝わったり、イメージが湧いたりするのって、歌詞において大切なことだと思います。ヒット曲って、案外意味不明ワードの宝庫ですし、それがキャッチーさに繋がっていたりしますよね。ヨシキ そうですよね。そこもORCALANDが昔から大事にしている部分かもしれないです。──最近のヒット曲から挙げるならば、 M!LKの“好きすぎて滅!”は最高ですよね。ヨシキ あれはすごいですよね。おとやん 嫉妬の対象だもんね?ヨシキ うん(笑)。“好きすぎて滅!”みたいに意味がスッと入ってくることはすごく重要だと思うので、目指したいですね。「言ってることはわかるけどバカっぽい言葉」を、常に探して生きています。ORCALANDのいちばんのアイデンティティでもある気がします。京哉 でも“おてんとうさま”は、タイトルが決まるまでにかなり時間かかったよね。こーてぃん うん。もともと“デカ太陽”とか“真夏のなんちゃらかんちゃら”みたいなタイトルをヨシキが候補に出してたんだけど、「なんか違うんじゃない?」ってなってたから。ヨシキ 僕のだめなところをたくさん出してる曲なので、太陽という意味の「おてんとさま」と「人が転倒する様」のダブルミーニングを、こーてぃんが提案してくれたんです。──“成仏Come true”は、初のアニメタイアップですね。『うしろの正面カムイさん』のオープニングテーマとして書き下ろしたんですか?ヨシキ そうです。お話をいただきまして、8個くらいのデモを作って、完成に至りました。かなり遊び心も入っています。京哉 この曲、アレンジャーさんに入っていただいて、よりサウンドのクオリティも上がった気がしています。入っている音の数は多いんですけど、すごくすっきりしている感じで。
──『うしろの正面カムイさん』は、ぶっ飛んだ設定の作品ですよね。作詞作曲の際に、どうアプローチするのかはすごく考えたんじゃないですか?ヨシキ すごく考えました。タイアップに寄せすぎると、他の人でも作れるものになってしまうと思うんですよね。ORCALANDだから出てくる言葉、サウンドは常に意識していますし、同時にタイアップ先との共通点もしっかり探します。今回は《成仏させてくれ》というフレーズがそうです。『うしろの正面カムイさん』は除霊のお話ですけど、「成仏」は「好きなキャラのグッズが出て成仏しました」みたいな「願いが叶った」みたいな意味で使われたりもするじゃないですか。現世に悔いを残した悪霊の願いを叶えて除霊をするのと、ORCALANDの音楽によって悔いがある人の想いがすっきりするのは、重なるのではないか?と考えて作ったら、こんなに盛り盛りの曲になりました(笑)。──原作の要素をただ反映するのではなく、「ライブの熱量とのリンク」を着地点として目指したんですね。ヨシキ そうです。普通に聴いたら、ライブをイメージできる曲になってると思います。でも『うしろの正面カムイさん』を読んでたら、「こういう言葉、入れてんな」ってなるようなものにもしたかったんです。──“貴方をまつやさしい場所”もタイアップですね。松屋フーズ創業60周年記念オリジナルブランディングソングとのことですが、これも松屋とORCALANDの共通点を探して作ったんですか?ヨシキ はい。タイアップについて「こういうお話があるよ」って聞いた時が、いちばんインスピレーションが湧き出る瞬間なんです。今回湧いたのが、“貴方をまつやさしい場所”というダジャレでして(笑)、「聴いてくれた人々の耳に残れば勝ちだな」と。松屋フーズの社員さんが聴いたら、「ふーん。やるじゃん」って思ってくれるのでは?と期待しつつ、そういう出来心、ガキ心です。
──歌詞の中に牛めしが出てきますね。《つゆだくの絆が生まれる》って、意味不明ではありますけど、なんかライブハウスの雰囲気とすごく合っている気がします。おとやん 《つゆだくの絆》って、僕もいまだに意味わかってないんですけど(笑)。ヨシキ これこそ「音楽だから雰囲気がわかる」というフレーズですね。このあとの《皆の味方でありたい》は、松屋さんの店内BGM“みんなの食卓でありたい。”のメロディに可能な限り近づけながら曲の中に落とし込みました。このフレーズのあとから、聴いてくれる人たちに寄り添うような歌に切り替わっていくのが気持ちよくて、ほくそ笑みながら作ってましたね。
──“天使の止まり木”は、温かな曲ですね。ヨシキ 今回のミニアルバムの中に、ひとつの物語を描くような曲も入れたかったんです。京哉 曲数があるので、こういうのを作れるのもミニアルバムの良さですよね。──クリーントーンのアルペジオ、空間系のエフェクトとか、爽やかなギターサウンドも、今作の中で独特なポジションだと思います。京哉 ギターはヨシキの家で一緒に作ったんです。ヨシキ 今回の中でギターに関するディスカッションをいちばんした曲ですね。──そして、“はじまりの衝動”は作詞が京哉さんで。ヨシキ テーマとしては「誰でも共感できるような青春」のような。ORCALANDは意外と青春を歌ってる曲がないんです。たとえば“やってらんねえ”っていう曲は、《飲まんとやってらんねえ》とかアダルティな感じなので。おとやん あれは会社員くらいの年齢の目線だよね。ヨシキ そうそう。だから、年齢をもう少し若くした曲にしたくて。誰かの青春の始まりにはひとつのエピソードがあるものだから、「京哉の青春の始まり」を種としながら、みんなで作詞をしていきました。だから京哉の青春の物語でもあり、4人の青春の始まりの物語でもあり、聴いた人の青春の始まりでもあるという、広い目線をイメージしています。──《ふいに見つけた手書きのポスター》が印象的です。京哉さんにとっては、軽音部の新入部員を募るポスター?京哉 そうですね。広く捉えられるものにしすぎると刺さらないと思ったので、具体性も持たせつつ……そのせめぎ合いで出てきたのが、《ふいに見つけた手書きのポスター》でした。ヨシキ もともとは《ふいに聴こえたギター》だったんですけど、それだと「いろんな人の青春を描く」というものにならないってなって。もっと広い言葉にしたかったんです。──新しい要素を各曲に取り入れることを目指した今作ですから、いろいろな試行錯誤があったんですね。ヨシキ “ロックアウト”も結構苦労しました。ミニアルバムの最後はショートチューンで終わるのが恒例化している感じがあったので、この曲がテーブルに上がったんですけど、「2ビートの曲があったらいいんじゃないか?」ってなって。でも2ビートの曲を作ったことがないので、「どうしようかな?」と。こーてぃん 僕、本当に2ビートが好きじゃなくて(笑)。でも、自分なりの2ビート、「俺はこうやる」っていうものになりました。ドラマーサイヤ人というか、戦いの中で成長した感じでしたね。おとやん 「ドラマーサイヤ人」って何?(笑)。こーてぃん 2ビートが好きになりつつあるというか、「できなかったことができるようになった俺」みたいな。ヨシキ 「ORCALANDというバンドが2ビートをやる場合、どういう曲になるんだろう?」と思って書いた結果、心情を吐露する曲にもなって、自然とメッセージ性が強くなりました。どういう届き方をするのか、リリース後の反応が楽しみな曲でもあります。じっくり聴いてくれるのか、それとも、ライブで遊んでくれる曲になるのか? どちらでも正解ですし、どちらでも嬉しいです。──作風が広がった今作を経て、この先のORCALANDをどのように進めていきたいとイメージしていますか?こーてぃん 今のバンド内の雰囲気、お客さんの雰囲気のままで大きくしていくのが理想です。4人の共通認識で「現状維持は後退」があって。今の雰囲気のまま新しく聴いてくれるようになった人を手放したくないですし、今いる人たちも手放したくなくて。このまま大きな輪を作っていきたいですね。ヨシキ 毎度のことながら最新作は「現時点での最高傑作」なんですけど、今回は本当にメンバー全員が納得できるものが作れたなと思っているんです。あとはいろんな人に知っていただくために、我々が知られる努力をしていくだけですね。『MAGIC×MAGIC』を楽しんでいただけたら、今後のORCALANDにいろいろ繋がっていくはず。それを確信しています。毎度のことながら最新作は「現時点での最高傑作」なんですけど、今回は本当にメンバー全員が納得できるものが作れたなと思っています