テキスト=つやちゃんプリンスが亡くなったのは2016年4月21日。それから10年を迎えた2026年、ひとつの区切りとなるようなアルバムが世に出た。タイトルは『Timeless』。1977年から2016年まで、約40年間にわたって録音され、「Vault(保管庫)」から発掘された音源だけで構成されている、全10曲のコレクションだ。 没後のプリンスについては、これまでにも膨大なアーカイブが開かれてきた。『1999』、『サイン・オブ・ザ・タイムズ』、そして『ダイアモンズ・アンド・パールズ』などのスーパー・デラックス・エディションでは、特定の時期が集中的に掘り下げられ、『オリジナルズ』では他アーティストへ提供した曲のプリンス自身による録音がまとめられた。さらに『ウェルカム・2・アメリカ』は、生前にアルバムとしてほぼ完成していた未発表作品だった。豊富なカタログは、その都度、プリンスの様々な面からの捉え直しを可能にしてきただろう。
しかし『Timeless』は、それらのどれとも少し違う。ある一時期を深掘りするのではなく、デビュー以前の1977年から亡くなる直前の2016年まで、その全キャリアをVault音源だけで一本につないでいる。つまりプリンスの芸術的進化を辿る作品として聴けるということだ。収録曲を並べると、その意図はさらにはっきりする。“I Am You”が1977年、“Tick Tick Bang”が1981年、“Heaven”が1985年、“I Wonder”が1989年……といった具合に、2016年まで数年おきに定点観測するような形でプリンスの40年間がズラリと揃っている。これは、未発表音源のベスト盤というよりも、むしろ裏ベスト盤と呼びたくなる並びではないだろうか。というのも、通常プリンスの40年間を振り返るのであれば、“1999”“パープル・レイン”さらに“KISS”といった代表曲を置くだろう。しかし『Timeless』はその逆を行く。それぞれの時代に確かに存在しながら、表のディスコグラフィからこぼれ落ちた録音を使って、もうひとつのプリンス史を作っているように思えるのだ。(以下、本誌記事へ続く)
プリンスの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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