BiSH解散から早くも約3年。解散後、メンバーはそれぞれの道を歩み始め、セントチヒロ・チッチは
CENT名義で音楽を発信し続けている。昨年はメジャー1stミニアルバム『らぶあるばむ』をリリース。自作曲から多彩なアーティストが参加した楽曲まで、音楽への愛がみなぎる作品を完成させた。そして今年2月にリリースした“スタンド・バイ・ユース”は、まさにBiSH直系の「青春感」に溢れていた。今、彼女はBiSHとCENTが地続きのものであることを、ごく自然に肯定する。
そして、7月1日には、BiSH時代に彼女が企画して始まった「THAT is YOUTH!!!!FES」の第3回が開催される。実に約6年ぶりである。出演者の選定やオファーもチッチ自身が行ってきたこのフェスを、今年久しぶりに復活させたのはどんな想いからだったのだろう。やはりそこにも、BiSHとCENTとを繋ぐ、変わらぬ音楽への想いがあった。新たなチャレンジも含む今回の「THAT is YOUTH!!!!FES vol.3」。改めて、この現在地に至るまでの道のりを辿る。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=Asami Nobuoka
いろんな音楽に挑戦できたり、自分が好きな人たちと曲が作れたり、CENTは私のカルチャーや人生がそのまま生きる場所
──BiSH解散から約3年が経ちました。BiSH解散時と現在で、音楽に対する向き合い方はどう変わりましたか?私はそもそも「解散したくない」と思っていたので、当時は、解散を受け入れて「これからどうするか」にフォーカスしていくこと自体、大変な作業だったんです。「解散」に自分の心が追いつかないと思ったし、ファンの方もそうだろうなと思ったから、すぐにソロ活動を始めたというところもありました。でも、向き合う先がBiSHではなく急に「自分」になったのがいちばん大変で。自分のことが何よりいちばんわからないから。好きなものは明確にあるけれど、自分はどう音楽を表現するのがいいのか、すごく悩んだ時期でした。
──それをどんなふうに乗り越えていったんですか?メンバーがいなくなって、プロデューサーがいなくなって、「じゃあ私はここから仲間を増やしていくしかないな」というのが最初の気づきでした。ひとりが嫌いなんですよ、私。ひとりだとすごい弱っちくて。強く生きたいって言ってるくせに、自分のこととなるとすごく弱くて自信がなくて、自己肯定ってどうしたら生まれるんだろうって考えちゃったり。そんな時に移籍して、(所属レーベルの)ビクターさんとか(所属事務所の)スターダストさんと出会って、音楽に向き合うのがすごく楽しくなったんです。頭の中で描いていても形にならないこととか、「何がやりたいんだろう」ってノイズみたいになってることがあったんですけど、今はそれを一緒に形にしてくれる仲間みたいな人たちが確実にいる。私はそれがすごく楽しいし、ほんとに生きているなという感じがします。
──BiSHを解散したくなかったのは、仲間を失いたくなかったという感覚でしたか?純粋にBiSHが好きだったから、ただただ解散させるのが嫌だったんです。だから今も別に解散を受け入れてないし、みんなのことが好きだし、「明日からまたBiSHをやろう」って言われたら即「オッケー!」って、全然すぐやる(笑)。だけど今はCENTという音楽プロジェクトをすごく愛していて、楽しんでやれているということを3年前の自分に教えてあげたいですね。全然大丈夫だからって。いろんな音楽に挑戦できたり、自分が好きな人たちと曲が作れたり、CENTは私のカルチャーや人生がそのまま生きる場所なんですよね。だからとても楽しいです。
──昨年の『らぶあるばむ』から感じていたんですけど、BiSHでの表現とCENTでの表現が地続きにあることを、チッチさんが今はとてもポジティブに肯定している気がするんですよ。そうですね。今はBiSHの曲を歌う気持ちにもなれたし──前から、あの頃があるから今の私がいるという気持ちはあったんですけど、BiSHがあったからセントチヒロ・チッチがいて、だから今はCENTというプロジェクトで音楽活動をしていて。(BiSHとしての)8年間の続きでCENTの3年を生きる中で、今はすごく気持ちが柔らかくなって、頭も固くなくなって、BiSHの時の想いも乗せて歌うことができているというのはありますね。
──気持ちが柔らかくなったというのは、何かきっかけがあったんですか?私はたぶんずっと、めちゃくちゃ硬い鎧を背負っていたんだと思います。BiSHではキャプテンみたいな立ち位置だったし、当時はそれが自然体だと思っていたんですけど、ひとりになった時にその鎧が一層ずつ剥がれていった感じでした。普段の私とステージに立つ私が、すごくシームレスになった感じ。あの頃みたいにかっこいいことは言えないかもしれないけど、自然体な私が生まれたという感覚なんです。いろんなことに対して自分は「こうあるべきだ」みたいなことを頑なに思いがちな性格だったんですけど、新しいチームに入ったら、そんな私の性格なんて知らない人もいっぱいいるわけで。「これはどうですか?」って、それまでの私からしたらあり得ない提案も来るんですけど、それがよかったりするんですよね。そういうことが重なって、「あり得ない」というのは、私が勝手に決めつけていたことだったんだなって気づいて。あと、BiSHのほかの5人の活動を見て、「え、それやってもいいんだ?」って思ったり。「いいんだ?」というか「いいじゃん!」って思える自分がいて。
最初は「BiSHの曲を歌うなんて」って思ってたんですよ。大事にしていた曲なのに、そんな簡単に歌えるかよって。もちろん今でも自分の中には「6人でなきゃ歌いたくない」という曲はあるんですけど、CENTで歌うんだったらこの曲を歌いたいと思えたのが“スパーク”でした。歌うとどうしたってあの頃に引き戻されちゃうけど、でも“スパーク”だけは許してくれる感じがあるから好きなんです。
「THAT is YOUTH!!!!FES」のテーマでもある「青春」って、BiSHでも、CENTでも、そして私自身が生きてく中でも大きなテーマなんです
──CENTのライブで初めて“スパーク”を歌われた時、オーディエンスも驚いたし、それこそ「歌ってくれるんだ」「いいんだ」って、許されたような感覚も共有したと思うんですよね。「チッチがBiSHの曲を歌う日が来るなんて」って、書かれてた記憶がありますね。たぶんみんな私の固くてガチガチな性格をわかっているから(笑)。
──やっぱりBiSHでやってきたことと現在のCENTとしての音楽は地続きにあるんですよね。そして振り返ると、チッチさんが表現したいこととして、好きなアーティストや自身が救われてきた歌を、多くの人に知ってもらいたいというのもあったと思うんです。まず、BiSH活動中に、チッチさんがGOING STEADY/銀杏BOYZの“夜王子と月の姫”をカバーした時は驚きでした。「WACK総選挙」で1位を獲った時の特権で、ひとりで歌わせてもらえることになったんですけど、愛情を何でお返ししたらいいかを考えると、新しく曲を作るより、私自身が孤独を救ってもらった曲を歌い継ぐことで、誰かの救いになれるんじゃないかと思ったんですよ。この曲で孤独を乗り越えてきた私が歌うからこそ、意味があるんじゃないかなって。
──あれはすごくいいカバーでした。私もそう思います(笑)。
──その頃と現在とで、音楽表現に対する軸は変わっていない気がします。だから、7月1日に開催される「THAT is YOUTH!!!!FES vol.3」も約6年ぶりで、BiSH解散後は初の開催ながら、自然な流れのように感じられて。そもそも第1回は2019年。チッチさん自らがキュレーションして、GEZAN、リーガルリリー、eastern youth、そしてBiSHというラインナップでの開催でした。改めて、当時どんな想いでこのフェスを立ち上げたんですか?BiSHとしてもっと何か提示できるものがないかを考えていたんです。私はライブに足を運んで出会って、体で味わったバンドを好きになることが多かったから、BiSHのファンや私を愛してくれる人にもそれを知ってもらいたくて。それで「自主企画をやりたいです」って渡辺(淳之介/当時のWACK代表)さんに言ったら「いいじゃん!」って言ってくれたんです。もちろん初めての自主企画だし、どうやって進めたらいいかもわからなかったんですけど、コツコツと手紙を出したり、連絡したりして。
──オファーもチッチさん自身がしたんですよね。だからこそ、このすごいラインナップが実現したんだと思うんですよ。その頃、リーガルリリーとGEZANのことが大好きで、今や爆発的な人気を誇るバンドですけど、その頃は「もっとみんなに知ってもらいたい」と思う時期だったんですよ。だからすぐにオファーして。eastern youthも昔から大好きだったし、BiSHの中にもDNAとして流れている音楽だったから、逆に若い世代に知ってほしいレジェンドとして出演をお願いしました。
──そしてBiSH、というラインナップ。普通に考えたらそのラインナップでの企画は実現が難しいと思うんです。それを「面白いじゃん」って言ってくれる渡辺さんがいたからよかったです。「THAT is YOUTH!!!!FES」のテーマでもある「青春」って、BiSHでも、CENTでも、そして私自身が生きてく中でも大きなテーマなんですけど──たとえば2019年のフェスで10代の子が初めてeastern youthの音楽に出会って、「人生救われた」って言ってくれたなら、それは青春の始まりだなって思うし、たとえば60代とか70代の清掃員(BiSHのファンネーム)が、「対バンライブでまたキラキラした音楽に出会えたよ」って言ってくれたら嬉しいし、それは青春だなって。「THAT is YOUTH!!!!FES」は、そのテーマのもと、私が好きなものや仲間を集めたいという想いでやっていました。日本にはいい音楽がいっぱいあるから、もっとみんなにも知ってほしいという想いで。