【インタビュー】言葉やメロディが伝えるきらめきを大事にしたい──注目度を上げ続けるシンガーソングライター・がらりが、メジャー1st EP『螺旋の街』で示した音楽家としての確固たる矜持

【インタビュー】言葉やメロディが伝えるきらめきを大事にしたい──注目度を上げ続けるシンガーソングライター・がらりが、メジャー1st EP『螺旋の街』で示した音楽家としての確固たる矜持

楽曲制作、MV、SNSコンテンツなどをすべて自身で手がけるシンガーソングライターとして2022年12月から活動をスタートさせたがらり。テレビ朝日『EIGHT-JAM』の「2024年のマイベスト10曲」で川谷絵音が“午後二時の通り雨”を選出、さらに今年1月にリリースされた2ndアルバム『コントラスト』の収録曲“Answer Me”、“正体不明のLADY”がドラマ『AKIBA LOST』の主題歌・コンセプトソングに起用されるなど、確実に知名度を上げ続けている。そしてこの春、がらりはついにメジャーシーンへと進む。メジャー第1弾となる1st EP『螺旋の街』は、都会を舞台にしたコンセプチュアルな作品。人々の孤独、寂寥、諦念、逃避への願望といった感情が繋がり、カラフルな音像に彩られた音楽世界を描き出している。中心にあるのは、自身が伝えたい物語。それを確かな理論と溢れんばかりのエモーションとともに普遍的なポップミュージックへと昇華していくのが彼のスタイルだ。その独創的な方法論はいかにして形成されたのか? がらり自身の言葉でじっくりと語ってもらった。インタビュー=森朋之 撮影=金本凜太朗

リズムやアレンジに依存せず、どのような演奏形態でも美しさを醸し出せる曲を作っていきたい

──がらりさんの音楽、以前から聴かせてもらっていました。楽曲の良さはもちろん、シーンに対する提案やアーティストとしての意思も感じられて、いろいろな側面から楽しめる曲ばかりだなと。ありがとうございます。僕はたぶん、根っこが強情なタイプだと思っていて。曲によって「がらり」と作風を変えるアーティストです、と世間に迎合している感じを出しつつ、実は「自分が好きなのはこういうものです」「自分が信じているポップスはこれです」という作り方をしているというか。これは以前から感じていることなんですが、メインカルチャーとサブカルチャーはまさに螺旋のように入れ替わり続けていると思うんですよ。ちょっと前までメインだったものがサブカルチャーになったり、逆にサブカルチャーだったものがいつの間にかメインになっていたり。そういう状況を踏まえつつ、僕自身は「本来のメインカルチャーはこっちだよね」というものを作ろうとしているところがあって。僕がジャズを通っていることも関係しているかもしれませんが、コード進行とメロディの並び、最低限のリードシート(コードとメロディを簡単にまとめた楽譜)だけで美しいものというか。リズムやアレンジに依存せず、どのような演奏形態でも美しさを醸し出せる曲を作っていきたいんですよね。──がらりさんが好きなアーティストに挙げているジョージ・ガーシュウィンもまさにそうですよね。世界中で知られるスタンダードを何曲も書いていて。ガーシュウィンもそうだし、椎名林檎さんの曲にもそれを感じるんです。時代を問わず愛されている方々の共通点は、やっぱり楽曲の骨子の強さだと思っていて。僕もなんとかして、その歴史に刻んでいきたいという気持ちがあります。──すごく真っ当な考え方だし、めちゃくちゃ高い志だと思います。では、1st EP『螺旋の街』について。制作にあたって、メジャーレーベルからのリリースということは意識していましたか?これまで作ってきた楽曲もそうなんですけど、骨子がしっかりした曲を目指しているのはどれも変わらなくて。ただ並べてみるとポピュラリティの差みたいなものはあるし、より広範囲に聴かれるものと、ちょっとマニアックな曲として解釈されるものがあるのも理解しているつもりなんです。そのことを踏まえて、今回の『螺旋の街』では5曲すべてがシングルカットに堪えうる曲にしようという気持ちで制作していました。作り方は同じなんですけどね。自分が表現したいこと、つまり「この曲でなんの話をするか?」をコアにして、メロディ、言葉、アレンジなどが同じ方向を向くようにしつつ、しっかり伝わる曲にするという。メジャーデビューについては、素直に嬉しいです。人生の中で、メジャーデビューできる可能性ってあんまりないと思うんですよ。僕は偶然にもそこにたどり着けたので、どうせなら自分の中で「この曲はいいんじゃないかな」と思えるものを揃えたくて。「いい曲フォルダー」を総動員しました(笑)。──そんなフォルダーがあるんですか?ありますね(笑)。他にも「マニアックな曲フォルダー」とか「ヒット曲が出たあとに使えそうなフォルダー」とかもあって。いろいろ想定しているタイプなんですよ。──楽曲の制作方法、キャリアの作り方もそうですけど、理路整然としてるし、俯瞰できてますよね。もともとの自分の性質でもあると思います。分析癖があるし、初めて聴く曲でも展開を予想しながら聴いてるんですよ。小学校の頃から、Aメロを聴いた時点で「次はこういうモチーフが来るべきじゃないか」「サビはこんな感じになるべき」みたいなことを考えていて。その通りに進むと嬉しいし、そうじゃないときは、裏切られ方によっては好きになるし、「これは許せない」と思ったら嫌いになる(笑)。音楽以外でもそうなんです。初対面の人に対して「こういう喋り方をする人は、こんな育ちなのかな」とか、勝手にプロファイリングしてしまうので。
【インタビュー】言葉やメロディが伝えるきらめきを大事にしたい──注目度を上げ続けるシンガーソングライター・がらりが、メジャー1st EP『螺旋の街』で示した音楽家としての確固たる矜持

世代や場所を越えて愛され続ける曲を形成するものは何か?ということについて、自分なりにあらゆる角度から蓄積してきた

──インタビューするのが怖くなってきました(笑)。EP『螺旋の街』の全体的なコンセプトは?都市の生活の中で生じる避けようがない心境ですね。人によっていろいろな感じ方があると思うんですけど、孤独や寂寥、逃避への衝動、「どうしようもないな」という諦めや開き直りを経て、受容の段階に入り、なんらかの哲学を手に入れる。どんな人でもそういう気づきを得る瞬間があるような気がして、それを追体験できるような作品になっています。──収録曲について曲順を追って聞いていきたいんですが、1曲目の“シャイなボーイ”はきらびやかで切ない雰囲気のポップチューンです。EP全体のテーマが固まった時点で、1曲目は“シャイなボーイ”にしたくて。歯切れがいいメロディが続くし、聴いてくれる人もわかりやすいんじゃないかなと。冒頭の歌詞《街の雑踏に佇んだ/振り返る人などない》もEPの入り口という感じがあると思うんですよね。──《暮れの東京は世界で一番/誰でもない人になれる場所だ》というフレーズもありますが、これもがらりさんの実感ですか?わりとそうじゃないですかね。僕は大阪や名古屋でも暮らしたことがあるんですけど、東京はいい意味で、他人に無関心な人が多い印象があって。渋谷のスクランブル交差点でも品川駅でもそうですけど、みんなが目的や意思を持ってどこかに移動していて、立ち止まっている人がいたとしても、わざわざ振り返る人はいなくて。すごく孤独な場所でもあるんですが、この曲の《シャイなボーイ》は東京を心温まる場所と捉えて生活している。「こういう感じが自分には合ってるんだよね」と思っているんですが、《孤独を愛すロンリーボーイ》でもあるという。人間にはそういうアンビバレントなところがあるし、その絶妙な感じを歌詞に起こしました。──がらりさんも都会で暮らす中で所在なさを感じることがありますか?それは常に。「ちょっと前までシステムエンジニアだったのに、なんでインタビューされてるんだろう?」とか(笑)。社会がこれだけ複雑化しているので、いろんなタイミングで所在なさを覚える人は多いんじゃないかな。別に生まれ持った社会的な役割があるわけではなくて、なんやかんや「気づいたらたどり着いてた」という場合がほとんどだと思うんですよ。僕自身も今の状況に対して、心の中で求めた結果だなと思いつつ、どこかにギャップも感じていて。誰もが感じているであろう所在なさ、「巡り巡ってこうなってた」という感じも『螺旋の街』という作品で表現したかったことですね。
【インタビュー】言葉やメロディが伝えるきらめきを大事にしたい──注目度を上げ続けるシンガーソングライター・がらりが、メジャー1st EP『螺旋の街』で示した音楽家としての確固たる矜持
──2曲目の“春を盗んで”は明るい光を感じさせる旋律、華やかなグルーヴが心地いい楽曲。EPの中でも際立ってポップですね。ここまで突き抜けて明るい曲は、もしかしたら初めてかもしれないですね。この曲もピアノを弾きながら作ったんですけど、主人公はおそらく同性愛者で。理想化された世界の中で《君》を奪ってしまいたいというイメージなんですが、それを表現するためには必死すぎるくらい明るくしないといけなかったんです。自分なりに言いたいこともあったし、それを全部叶えるためにもこれくらいゴージャスなメロディが必要だったという。──もちろん、こういう飛び切りキャッチーな曲もがらりを構成する要素なんですよね?そうですね。DREAMS COME TRUEや、亀田誠治さんがプロデュースしていたスピッツ、平井堅さんもそうだし。筒美京平さんが作った歌謡曲だったり、コモリタミノルさんが作曲したSMAPの曲、久石譲さんの映画音楽、海外でいうとガーシュウィンやエルトン・ジョンもそうですけど、普遍的なメロディの美しさやパワフルさ、世代や場所を越えて愛され続ける曲を形成するものは何か?ということについて、自分なりにあらゆる角度から蓄積してきたので。──ポップミュージックにおいて、すべてやり尽くされているという議論もありますが、それに対してはどう思っていますか?確かに真似しようとすればすぐに壁にぶち当たると思います。ただ僕の場合は、「この曲でなんの話をするか?」が先にあるので。自分なりの語彙で曲を作れば、そこには必ず自分だけのコンテクスト、自分だけの筆致があるはずだと信じているというか。先人たち、巨人たちの肩に乗って、僕なりの音楽を組み上げていきたいと思ってます。たぶん昔の人たちもみんな、そうやってきたんじゃないかなと。
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