──実際の恋愛ではなく、和歌として表現された感情に共感している?恋愛そのものというより、「そのためだったら、命を投げ捨てることができる」という部分に情緒を感じているんだと思います(林)
林 恋愛そのものというより、「そのためだったら、命を投げ捨てることができる」という部分に情緒を感じているんだと思います。たとえば「この人のことを守りたい」という相手が病気になったら、「自分が代わりになれたらいいのに」と思うだろうなとか。
──確かに“こひわずらい”の歌詞は、異性間の恋愛だけではなく、幅広くいろいろな関係に当てはまるような気がします。
林 そう受け取ってもらえるととても嬉しいです。歌詞では《僕》と歌ってるんですけど、いろんな方に共感してもらえたらいいなと思っているので。
高橋 僕もすごく気に入ってるフレーズがあって。《君に捧げよう この世も何もかも全てを》なんですけど、《この世》を捧げられる人って、すごいと思うんですよ。そんなことができる人って、帝(みかど)なのかなとか(笑)。
林 (笑)そのフレーズは、自分と君だけの世界みたいなイメージですね。この世も何もかも捨てて、「君のためだけに」という。まさに恋に狂ってるような状態を表現している箇所ですね。
──そういう強い感情が、じつは林さんの中に潜んでいるのかも。たとえば音楽に対する思いだったり……。
林 確かに「歌を一切歌わないでください」と言われたら、どうなるかわからないですね。現実的に言うと、そこまでの激情を味わったことはないかもしれない。経験してみたいなとは思いますけどね。ここまで自分を動かす熱いものって、なかなか出会えないと思うので。
──“こひわずらい”を作り上げたことで、名無し之太郎のこの先のビジョンもさらに明確になったのでは?
二瓶 そうですね。最初にも言いましたけど、僕はジャズやフュージョンが好きで。ただ、そういう音楽に馴染みがない方もいらっしゃるだろうし、作曲においてもそこまで入れないようにしていたんです。でも、今回の“こひわずらい”は、ちょうど大学生活が終わるタイミングでもあるし、自分の好きな要素を詰め込んでみようと思って。自分としてはかなりチャレンジだったんですけど、思いのほか周りの反応もよかったし、ライブで演奏している風景やお客さんの表情がすごく浮かんできたんですよね。この方向性でもいけるんだなと思えたし、最近はさらに好きなことをやるようになってます(笑)。楽器陣は大変かもしれないけど、そのぶん技術も上がるだろうし、可能性が広がる曲になりましたね。
中野 “こひわずらい”のベースに関して言えば、サビはすごくシンプルで、やりたいことをやっているパートもあって。1stアルバムの頃よりもメリハリを付けられるようになっているし、自分としても成長を感じています。
高橋 このバンドにおけるキーボードの役割をずっと模索してたんすよ。「ボーカルの伴奏なのか、楽器隊の一員なのか。どっちに比重を置くべきだろう」ということを考えていたんですけど、“こひわずらい”の制作の中で「そういうことじゃないな」と思い始めて。ボーカルを支えつつも自分が主役になれるくらいの演奏もする、新たなキーボーディスト像を作っていきたいし、この曲がその第一歩になったとも思いますね。
林 自分としても大きな転換点になる曲だなと思います。自分の価値観だけではなく、いろんな方々の視点を取り入れることで、さらに好きな歌詞になって。私は高2から作詞を始めたんですけど、ようやく自分も気に入る歌詞が書けたなって。
──このバンドの個性を見つけられた手ごたえも?この先何かあったときに“こひわずらい”を聴けば「そうそう、ここだった」という立ち位置に戻れるんじゃないかなって(林)
林 そうですね。自分たちが知らない間にいろんな人が聴いてくれていたというか、今まではなかなか実感が伴わなかったんですよ。アルバムを出して、ツアーをやって、いろんな経験を経ながら、自分たちの形や向かう方向を決めている時期なのかなと思っていて。これからもたくさん曲を作っていきますけど、この先何かあったときに“こひわずらい”を聴けば「そうそう、ここだった」という立ち位置に戻れるんじゃないかなって。自分たちの根本になる曲だなと思っています。
──6月~7月に行われる2ndツアーでも、さらに成長した姿が見られそうですね。
二瓶 頑張ります。僕らはライブをたくさんやるバンドではなかったので、まだまだ足りないことが多くて。自分はドラムなので、前の3人の動きがよく見えるんですよ。彼(中野)とかもステージ上でだいぶ動くようになってるんですけど、まだ慣れてないので、曲のリズムに合わせて歩いてしまったり(笑)。
中野 まだまだ経験が足りない(笑)。
高橋 僕はキーボードだから動けないんですけど、上半身を使ってやれる限りのことをやろうと思ってます(笑)。
──林さんのパフォーマンスも重要ですよね。
二瓶 彼女は童謡を歌っていたので、「いくぜ!」みたいな煽りをやったことがなくて。
林 少しずつ頑張っていきます(笑)。
──期待してます! ちなみにメンバー全員でフェスに行ったりしたことはないんですか?
二瓶 ないですね。うちのバンドはメンバーの距離感が面白くて。「友達……なのか?」みたいな感じもあるんですけど、実際に集まると内輪ノリで盛り上がったり。一緒にごはんに行くのも半年に1回あればいいほうかな?
林 そうだね。ライブの打ち上げもやらないし。
中野 地元でライブがあっても、セイコーマート(北海道を中心に展開しているコンビニ)行って帰るっていう(笑)。
林 仲はいいんですけど、プライベートはちゃんとプライベートなんですよ。
高橋 普段何をやってるか本当にわからないんですよ。僕は結構フェスやライブに行くので、今度みんなを誘ってみます(笑)。