バンド始動10年を経た今年、日本コロムビア内にプライベートレーベル「NEVERMIND Rec.」を立ち上げ、前作『RINNE』以来6年ぶりとなるフルアルバム『My favorite things』でメジャーデビューを果たすMaki。彼らの確かな足取りは、今この時代をさすらい生きる者のホームグラウンドとして、さらなる輝きと熱量を放ちつつある。3人全員に話を訊いた。
インタビュー=高橋智樹 撮影=Takeshi Yao
── メジャーという新しいフィールドに立つことを、率直にどう捉えていますか?自分の本籍を変えるんだったら、ライブハウスがいいな、ぐらいのテンション感です(笑)
山本響(B・Vo) 関わってくれる人は増えましたし、そういう意味では新しいフィールドなのかなあとは思いますけど──。
── それよりは、「NEVERMIND Rec.」というレーベルを立ち上げたことのほうが大きい?
山本 そうですね。いろいろわがままを言っても大丈夫そうな気はしてます(笑)。自分の心情としては根本的にはあまり変わってなくて。いつもやってることを大きくやる、プラス、たくさんお金をかけてもらえるのかもなあ、と思っているので。アイデアをたくさん出せたらいいなと思ってます。
まっち(Dr・Cho) 「やったあ!」みたいな感覚はまだなくて。でも、3人で好きなことをやってきただけなのに、関わってくれる人がすごく増えたのが、ありがたいことだと思いますね。
佳大(G・Cho) 10周年を経て、直近でメジャーデビューが決まったので⋯⋯実感はあまりなくて。10年やってきたら手伝ってくれる人が増えて、自分たちのやりたいと思ってたことをもっとできるようになるのかなっていうビジョンが、最近ちょっとずつ見えてきたような気がします。
── それは今回のアルバム『My favorite things』を聴いても伝わってきますよね。メジャーでのリリースになることで、チートな技が増えることもなく、自分たちの音楽をひたすらブーストしていくという。以前、EP『creep』(2021年)リリース時にROCKIN’ON JAPAN誌面でインタビューさせていただいた際に、「Makiの音楽は『途方に暮れている人の音楽』だと思う」という話をしたんですが──。
山本 ああ〜、記憶が舞い戻ってきた感じがします(笑)。途方に暮れているというか、呆気にとられたり、悩んでいたり、ぼーっとしてるけど何か考えている人の音楽、みたいな話をした気がします。ちょうど『creep』のタイミングは、自分もそんな感じで。いろいろ考えてるけど、答えは出てない、みたいな状況が続いていたので、まさしくそうだなっていう感じがしますね。
── 人生って、答えを出そうとしても出るもんじゃないし、答えが出ないことが必ずしもネガティブでもないし。だからといって「じゃあ答えなんか出さなくてもいいんだ」ってなるわけでもなくて。ポジティブにもネガティブにも振り切ってない、だけど今ここにいる自分たちを見つめて楽曲にしていく、という誠実な音楽だなと思っていて。それは一貫してるなと改めて思ったんですよね。
山本 ありがとうございます。
── また変な喩えかもしれないですけど⋯⋯今回のアルバムを聴いて、真っ先に思いついたワードが「松尾芭蕉」だったんですよ。
まっち な、なんでですか?(笑)
── 『おくの細道』の冒頭に「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」っていうフレーズがあって。拠り所なくさすらっているけど、それでも前に進んでいると信じて人生の旅を続けていて、旅を続けていることそのものがMakiの表現になっているところがあるなあと思ったんですけども。
山本 率直に嬉しいですね。さすらうという言葉も好きですし。このアルバムもそうですし、等身大だとは思うので。ツアーを回って、帰ってきて、思ったことを曲にして⋯⋯みたいなことを繰り返しやっていて。ただ、ライブハウスはとても好きな場所なので、そこで歌う曲というか、「これからも長いこと、ここでやっていくんだろうなあ」っていうか──所在地っていう感じがありますね。自分の本籍を変えるんだったら、ライブハウスがいいな、ぐらいのテンション感です(笑)。
── 間にシングルやEPを挟みつつではありますが、今回の『My favorite things』は前作『RINNE』(2020年)から6年ぶりのフルアルバムになりますね。最近、自分の中で好んで聴き続けるような音楽ってあんまりないと思っていたので、「自分が聴きたい音楽」を自分で作ってみようかなって
山本 今回は「アルバムを作ろう」と思って作った感じでしたね。もともとアルバムにしようとは思っていて、ミニなのかフルなのか決まってない時から、10曲ぐらい新しい曲が増えたら嬉しいなと思ってたんで。そこを見越して作りました。
まっち リリースが空いたのは、事務所の社長が「まだ早い」って言ったからです(笑)。で、10周年でフルアルバムを出すぞってなったら、「え、6年ぶり? 空きすぎじゃない?」って(笑)。
山本 最近、自分の中で好んで聴くというか、聴き続けるような音楽って、あんまりないなあと思っていたので、「自分が聴きたい音楽」を自分で作ってみようかな──っていうのが、作る時のコンセプトでした。「こういう曲たちでアルバムにしよう」っていうよりは、とりあえず自分が聴きたい、演奏したい曲をたくさん作ったっていう感じですね。
── どの曲の歌詞にもパワーワードがあるのもそうですけど、それに3人のアンサンブルがフォーカスを合わせて活かすようなアレンジになってますよね。
まっち アレンジを考える時に、いちばんのパワーワードだけできてて、あとはホニャホニャ歌ってる、みたいなことが多いですね。そのパワーワードがあって、何を参考にして作ったかとか、どういうふうにこの曲を聴かせたいか、みたいなことは3人で話し合って作るようにはしてますね。
── 3ピースのロックバンドですけど、ジャンルを旗印に集まっているバンドでも、単純にジャンルで割り切れる音楽性でもないですよね。3人それぞれ、自分の核になっていると思うルーツは?
山本 僕はそれこそ、レーベルの名前にもなってますけど、ニルヴァーナとかはいつ聴いてもかっこいいなと思います。ああいうものは、自分の中でなくしたくないなと思いますね。
まっち 僕、初めてライブを観たバンドがthe pillowsだったんです。the pillowsの『Rock stock&too smoking the pillows』っていうベストアルバムは、今でもめっちゃ聴きます。ドラマーとして影響を受けたのは、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)とかその辺になってきますね。「これが自分の中の確固たるもの」っていうよりは、いろんなジャンルの、いろんなかっこいいところを集めていった結果、それがオリジナリティになっていく、みたいな感覚はあります。
佳大 僕は、ポルノグラフィティから音楽に入りました。小学校はずっとポルノグラフィティで、中学の時の同級生が「ギターを弾くならRADWIMPS弾いてみなよ」って教えてくれて、そこから中学校の3年間は“おしゃかしゃま”を弾くのに捧げました(笑)。
まっち 3年かかった?
佳大 そりゃあ、かかるでしょ! 中学生には難しいよ!(笑)。で、高校に入ってからは、YouTubeでRADWIMPSからONE OK ROCK、[Alexandros]とかを通って、最終的にENTHとか、今のメロディックパンクのシーンの流れに辿り着いて⋯⋯っていう流れですね。
まっち いちばんライブキッズな進み方してるよね。
佳大 僕は「ライブハウスで観れない音楽」に興味がなかったんで、昔の音楽に興味がなかったんですよ。せっかく音楽を聴くんだったら、今やってる人たちの、でかくなっていく様を見れるほうが面白かったんですよね。
山本 なるほどね。いや、芯を突いてる気がする。