【インタビュー】TOOBOEが20曲入りの大作で挑んだ不朽の大衆性──新作『EVER GREEN』は彼をどこへ導くのか

【インタビュー】TOOBOEが20曲入りの大作で挑んだ不朽の大衆性──新作『EVER GREEN』は彼をどこへ導くのか

【インタビュー】TOOBOEが20曲入りの大作で挑んだ不朽の大衆性──新作『EVER GREEN』は彼をどこへ導くのか

今作はほとんどの曲に、自分の中で原作があるんですよ。読んだ漫画とか観た映画とかと、擬似的なタイアップをしていて

──“GUN POWDER”はアルバムタイミングで世に出るタイアップ曲ですが、これまたエネルギッシュですね。ありがとうございます。原作を読ませていただいて書き下ろした曲で、基本的にタイアップは好きなので前のめりにやらせていただくんですけど、1個前とか2個前のシングルをちゃんとフリにできるかどうかを大事にしていて。“あなたはかいぶつ”の前には“初恋”というすごくデジロックなものを出して高低差をつけたので、“あなたはかいぶつ”の次をどうしようか?となった時に、同じようなバラードを出すよりはすごくファニーなものを作れれば楽しいかなという、そのタイミングがちょうど噛み合ってこういう曲になりました。──ロックンロール感や明るいビート感もありつつ、どこか不穏なTOOBOE色もあるというバランスですよね。歌詞にある《この街は患っている》っていうのが最初に出たワードでしたね。原作も街自体がすごく狂っているんですよ。エーテルっていうよくない薬剤で暴れてる勇者と魔王みたいなのがいて、その中で自分は生きるしかないっていう状態の主人公がいる。数人の友人との日常だけが大事で、そのためにつまんないクズみたいな仕事をやるっていう話なんですけど、今の日本はそこまで狂ってないにせよ、現代社会もどこか患っていると感じてる人もいると思うんですよ。──そうですね。自分にとって不条理なものでもその中で生きるしかない、身を投じながらなるべく楽しく生きるしかないっていう原作から感じたものを、曲調は楽しいけど狂いすぎて笑ってるとか、そういうふうに表現できればいいかなって。それは僕がもともとやってきたものにも近かったと思いますね。

──紫 今さんとの“jewel”はどういう出発点からコラボに至ったんですか?前作では楠木ともりさんをゲストに呼んでいて、今回も一枠は(ゲストを)入れたいなと思ってたんですね。で、この曲に限らず今作はほとんどの曲に、自分の中で原作があるんですよ。読んだ漫画とか観た映画とかと、擬似的なタイアップをしていて。この曲の原作が性別の概念よりだいぶ広いところでの愛情、友愛とか姉弟愛とかをテーマにしていたので、男性である自分と女性ボーカルが掛け合うようにしたほうが面白くなるんじゃないかな?と。この曲に合うボーカリストって誰かな?というところから紫 今さんにお願いしました。ちなみにこの曲をお願いしたあとに『勇者のクズ』のエンディング(“メンタルレンタル”)を紫 今さんがやることを知ったので、めちゃくちゃ偶然でした。──ちょっといかつめのラップといい、そのあとの鮮やかな歌声といい、素晴らしいですよね。そうですね。ちょっとトラップっぽいビートもありながら。この曲は楽器を全部僕が演奏していて、プログラミングもしているので、完全に僕ひとりで作った中に外部のボーカルが入ってくる状態を作ってみました。──本来なら完結しているものを、ボーカルだけでどこまでぶっ壊せるか。そういうアプローチですね。すごく楽しかったです。器用な方なので、言えばどんなテイクでも録れるから相互にやり取りをしながら……なんか、昔を思い出しました。初音ミクを打ち込んでた時を。──ボカロの調声を(笑)。それを擬似的に、すごく素敵な人がやってくれているのが楽しかったですね。
【インタビュー】TOOBOEが20曲入りの大作で挑んだ不朽の大衆性──新作『EVER GREEN』は彼をどこへ導くのか

このキャリアになって、特に言いたいこともないのに文脈のない曲をノンタイアップで出すのはドラマ性としても違うと思う

──あと、アルバムの大きなテーマを象徴する楽曲として“追憶”は素晴らしいなと思いました。ありがとうございます。これの原作は歴史物の漫画で、名前や生きた証が時を経てもどこかに残って今日に至るっていう奇跡的な状態を曲にしたいと思って作りました。『EVER GREEN』というタイトルもそうですけど、この精神性がずっと残ればいいなというのもあって、すごく普遍的なバラードだと思います、僕の中では。今日出しても10年後に出しても味が変わらないというか。──歌謡曲を作りたいという願いが、とりわけメロディの部分で実現できた曲じゃないかと思います。「いい曲」への真正面からのアプローチ、それはある意味勇気のいることでもあって。そう。これは僕の主観ですけど、ボカロP出身の方はそこで苦労すると思っていて。ボカロの文化的に、ガチャガチャしたものとか、リズム感がよくて速いもので人を掴んで売れる人って、メジャーに行ったり他の人と組むとなった時に、どれだけスイッチを切り替えられるかが課題だと思うんですね。昔のほうがよかったという人も多分いると思うんですけど、そこを逃げずに。──その一歩を踏み越えた感は強く感じました。ギターとか8ビットのピコピコした音で好かれてきた人間が、それを捨てることでどこまでTOOBOEっぽさを残せるか、これはずっと課題なんですけども、その中でのひとつのチャレンジですね。

──多くの人に聴いてほしい曲です。で、逆の方向に振り切った曲もあるんですよね、“世界の終わり”とか。これはもう、本当に(笑)。これは異種間の友情みたいな、『E.T.』とか『かいじゅうたちのいるところ』のような、人間と化け物とか宇宙人という作品をすごく観た時期があって。理解できないとしても友情が成り立つことって、男女とかジェネレーションギャップにも言えると思ってて、そういった友愛を描きました。これはもともと“心臓”とか“錠剤”みたいな、僕の手に収まるポップスとして書いたんですけど、“きれぇごと”でもお世話になったRED in BLUEの田口悟くんに自由にアレンジしてくれないか?って頼んだら、すごいものが出てきましたね。これこそルーツの違いを存分に出してくれたんじゃないかと思います。自分じゃ絶対にしない音作りや展開、フレーズなんかが入っててすげえ嬉しかったし、普通に馬鹿馬鹿しいものも作りたいのはずっとあるので、やってて楽しかったです。──最初にも言った通り、本当に大作だと思います。デビューから5作目でTOOBOEが完成する想定でいくと、今作はちょうど中間の3作目。気は早いですが、今後はどんなモードになっていきそうですか?ボカロから数えるともう7年くらいやってるので、実はもう自分から伝えたいこととかってほとんどないわけですよ。ここから何が生まれるかは僕も全くわからないし、『EVER GREEN』がこういう曲たちになるのも、ボカロデビューした頃は思ってもなかった。なので、人との出会いや色々な作品に触れることで出てくるものに頼るしかないんですけど、次のアルバムはもうちょい多分……なんていうんですかね、基本的にはタイアップがいっぱい入ってるような、いわゆるメジャーっぽいアルバムまで持っていけたらいいなと思っていて。入ってるシングルは全部何かしらの箔がついていて、アルバム曲もなるべくたくさん入るものにしたいという意味では、このキャリアになって、特に言いたいこともないのに文脈のない曲をノンタイアップで出すのはドラマ性としても違うと思うので。一個一個を然るべきタイミングに、ちゃんと前提があるものとして出していきたい。そのために、何年かかってもちゃんと曲が溜まるまでしっかりやって、次のアルバムに向かっていきたいと思ってます。──より一球入魂というか。そうですね。究極を言えば今日できた曲が明日にはサブスクで配信できる時代ですけど、一曲一曲をどこまで面倒見られるか。それがちゃんとライブで育ってポジションが決まっていく様を、一個ずつ見ていきたいと思ってます。
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