──あと、4曲目の“トラウマ”もラブソングとは違ったベクトルの曲ですけど、《僕の絶望をこんな歌にして/誰か笑ったら少しはマシかも》《トラウマは僕の財産だ/いつかいつの日か誰か救うかも》というフレーズには聴き手への視点が芽生えてるように感じました。これは実際に思ってることって感じですかねえ。ピンチはチャンスでできていく職業だし。ほんとにその時そういう感情だったからできた曲が多くて、それをサウンドにしようとかもちゃんと考えてて──この曲はボイスメモで弾き語りで作ったデモを歩きながら聴いてて、歩きながら聴くのめっちゃいいなと思ったんですよ。イヤホンしてたら自分の足音が聞こえるじゃないですか。それで足音みたいな音にしたほうが曲に寄り添えるかなと思って、足音のリズムのイメージでドラムはキックだけにしたんです。──なるほど。歌詞に関してはほんとに素直なだけで──あ、でも、“さよなら天使様”は、《例えば、好きな曲すらも/君がいなきゃ出逢えなかったと思う》という歌詞のあとに《悲しみの果てを目指す中で》って文章が出てきますけど、それはエレファントカシマシの“悲しみの果て”からきてるんですよ。あと、“禁断少女10”は、《やさしい顔するデビルマン》って歌詞がありますけど、漫画の『デビルマン』をちゃんと全部読んで、キャラクターを知ってから書きました。アクセサリーをつけても自分は変わらなくて、自己解決のほうが人生を大胆に変えれる気がしてる。逆に解決できない部分を作品にして、大事にしてあげたい
──歌詞でいうと、今作の“青春ごっこ”とか前作の“18才の夏休み”とか、青春時代の自分に思いを馳せながら感情を掘り起こしていく曲がMegaさんにはいくつかありますけど、それはどういう感覚なんですか?「高校生」「学生」といういわゆる日本っぽいテーマに挿入歌をつけるみたいなイメージなんです。だからテーマとして伝わりやすさもあると思うし、書きやすさもあるんですよね。
──そういう学生時代をテーマに曲を書く時って、ポジティブな感情なのか、それともノスタルジーや切なさ、ネガティブな感情をはらんだりしているのか、どちらでしょう?今の俺のいちばんの悩みは眠れないことなんですけど、昔は眠れないことは少なかったから、その状態が心地よかったっていうポジティブさはあって。でも、コンプレックスはあったかもしれないから、それは今のほうが減ってはいるかな。さっきお金の使い道がないという話をしましたけど、アクセサリーをつけても自分は変わらなくて、どちらかというと自己解決のほうが人生を大胆に変えれる気がしてるんです。で、逆に解決できない部分を作品にして、有効に使いたいというか、大事にしてあげたい気持ちがあります。──Megaさんはそうやってありのままを描く、私小説的なシンガーソングライターなのにカルチャーシーンにおける尖ったイメージが先行してますよね。それだけ削ぎ落としても、変なことしたくなっちゃうんですよね(笑)。服でも、いわゆるな格好にちょっと何かを足したり。
──アルバム最後の“白い墓(slowed+reverb)”の《夢から醒めて月曜日が来て/悲劇のようなループに/君とふたり 笑ってる》から、また1曲目の“ohayo”に繋がっていく感覚もあります。“白い墓”のその部分は──会社行きたくねえとか学校行きたくねえとか、そうやってしゃべれたら全然いいじゃないですか。ネガティブになりがちだからこそ、「そういうもんだよね、人生」って認める。その精神性がここにもすごく出てて、しかもそれを人に共有できたらいいなって思ってます。俺の中の「自認天才」が言うんです、「おまえがイケてると思ってるものがイケてるよ」って(笑)
──そういう本質を歌うMegaさんは、ある意味「バズ」的なものとは距離を置いたスタンスを持っているのに定期的にバズってますよね。いい曲をただ作っていたら、バズは勝手に起きるんだなと実感しました。それはほんとにそうかなと思ってて。17歳ぐらいの時もなんかイケる気がしてたんですけど、冷静に考えたら「音楽で頑張っていきたい」と言ってない状態のやつが、いきなり音楽で食えるようになるって意味わかんないじゃないですか。今時はTikTokからそうなる子もいますけど、大体頑張ってかましてる。俺はそういう気持ちもなくて、ある日こうなったんです。ネットでよく「自認」って言葉が使われてますけど、俺は「天才なだけ」っていう自認が未だに若干あって(笑)。たとえばタイアップで曲を書かなきゃいけない時に、うわ、書けねえわと思っても、別に明後日ぐらいに書けるっしょみたいなのがあるんですよ。で、たまに書けなかった時にその「自認天才」が終わるのがいちばんよくないなと思って、書けない時はもう書かない(笑)。