【インタビュー】「弱さ」に寄り添うロックの強さと切迫感。メジャーデビュー曲“スピード”で快進撃のyutori、ミニアルバム『Hertzmtre』に脈打つ進化と衝動を語る

【インタビュー】「弱さ」に寄り添うロックの強さと切迫感。メジャーデビュー曲“スピード”で快進撃のyutori、ミニアルバム『Hertzmtre』に脈打つ進化と衝動を語る

歌詞をアニメに寄せなくても、「寄り添いたい」っていう芯だけしっかりしていれば、100点・120点出せると思って歌詞を書き始めた(浦山)


──そうやってバンドが勢いを増していく中で、“スピード”という重要な楽曲が生まれたわけですが。『ヴィジランテ』のお話をいただいて、どんなことを考えました?

浦山 純粋に嬉しかったですね。初めての経験だったので、わからないことだらけでしたけど。歌詞を書くのはそんなに難航しなかった記憶があって──『ヴィジランテ』の題材が「弱い」とか「救いたい」とか、わりと通じるものがあると思ったので。最初、この話が来た時、「歌詞をアニメに寄せたほうがいいのかな」って思ったんですけど……そもそも寄せなくても、「寄り添いたい」っていう芯だけしっかりしていれば、たぶんアニメともマッチするし、なおかつyutoriとして、メジャーデビューの一発目のシングルとしてお客さんに伝えることとしては100点・120点出せるな──と思ってから歌詞を書き始めたので。

──その「弱さ」を無理矢理「でも頑張ろう!」って前向きに持っていくことはしないですよね。提示するところで終わるというか、「あとは聴いてくれる人の中で燃やしてください」みたいな提示の仕方というか。

浦山 それは結構大事にしている部分でもあって。それを読み取ってもらえて嬉しいです。


──この曲を歌にしていく時に、佐藤さんの中でどんなことを考えてました?

佐藤 私は蓮じゃないので、全部はわからないですけど……自分の書く曲も蓮の書く曲もそうですけど、1曲に対してひとりのキャラクター、人物像があると思っているので、蓮の楽曲は、その人物像の擦り合わせをして──この子はこういうことを考えて、こういう生活をしてて、こういう容姿で、みたいな。“スピード”に関しては、『ヴィジランテ』のお話もあったんですけど、yutoriとして伝えたいことが言葉でしっかり書かれていると思っているので。『ヴィジランテ』の主人公の航一と、yutoriを聴いてくれてるお客さんのことを想いながら歌いました、レコーディングの時は。

浦山 今までは、自分は結構カタカナを使うのが苦手というか、あまりしっくり来ないことが多いので、普段の曲では使わないことが多かったんですけど。そこはタイアップだからということもあって、自分の想いとリンクさせた時に、“スピード”っていう言葉がパッと出たので。でも、今までの曲の書き方ともずれてなかったので、ちょっとまた新しい自分の一面も見られた制作だったなと思いましたね。ステップアップしたような気がしました。たぶん、女性は書かないであろうっていう歌詞ではあるので。それを女性が歌うっていうことのギャップも面白いですね。

佐藤 個人的な話になるんですけど……yutoriを組む前、自分の声がすごく嫌いで。歌声も然り、しゃべり声も然りで。でも、yutoriの佐藤古都子になった時に──ちょっとずつ、自分の声が好きになれて。自分の声が嫌いだけど、歌は好きだから、ずっとひとりで歌ってたのが、なんか報われたなあって。だから、yutoriが今の自分にとって、すごく大事な場所になってます。

──それは裏を返せば、「〇〇みたいじゃないから自信を持てない」っていうことだったのかもしれないですね。だからこそ唯一無二の個性があるわけですけど。

佐藤 そうですね、「誰かにならなきゃいけない」っていう。その当時、自分が大っ嫌いだったので、自分っていう個体が認められなくて。「誰かに似た自分」だったら認められたんですけど、誰かと似てるわけじゃないから、すごく……嫌でした(笑)。

──でも、この歌がいいわけですからね。

浦山 そうですね。普通に自信を持っていいんじゃないかなって。

佐藤 昔ね(笑)。昔だからね。

浦山 でも、年齢を重ねるたびに、心情の変化ってあるなあって思って。言葉の使い方とか、言い回しとか、10代の時と20代の今とでは違うし、10代の頃の言い回しはたぶんもうできないなって……面白いですよね。何もわからず、バンドもしたことがなかったけど、約5年経つにつれて、ちょっとずつバンドになっていってる感じと、10代のもやもやした葛藤みたいなものが終わったんだな、っていうのも感じられて。5年前は……こんな感じになるとは思ってなかったので。面白いですね。

【インタビュー】「弱さ」に寄り添うロックの強さと切迫感。メジャーデビュー曲“スピード”で快進撃のyutori、ミニアルバム『Hertzmtre』に脈打つ進化と衝動を語る

yutoriの音楽が浸透していって、お客さんが増えた上での大合唱──オアシスのフジロックみたいな、ああいう感情になりたいなって(豊田)


──今回のミニアルバム『Hertzmetre』の中にも、いろんな表情があって。“スピード”、“NOT MUSIC”って続くとパンキッシュなバンドなのかとも思えるし、でも“白い薔薇”から“合鍵とアイロニー”と続くと、違う色合いが出てくるし。“1 sheep to sleep”みたいな軽やかな曲が入ると、作品全体の立体感にも繋がってきますよね。

浦山 “1 sheep to sleep”がミニアルバムに入ったのは、わりとよかったよね。

内田 よい違和感というかね。

浦山 そうそう。こういう曲調がなかったら、ソリッドすぎる気はしてて。ちょっと近寄りがたいというか、敬遠する人は敬遠する作品になりかねなかったので。でも、こういう曲を書いたのも初めてだったので、バンドとして。位置付けは難しかったですけど、アルバムの中に入れたのもよかったし、この位置に入れたのもよかったですね。

──細かいところですけど、“スーパームーン”の最後、《誰よりも自分だけ愛してみたいわ》と歌ったあとで、開放弦をギャーンと鳴らすところで、なんかグッと来ました。理屈では割り切れない、バンドならではの衝動が焼き込まれている気がして。

佐藤 最初、開放を私だけやってて、「やっぱりやめようかな」って思ってたんですけど……そう言ってもらえてよかったです(笑)。

浦山 感情が乗ってるから出てくるアレンジというか。人間臭くていいなと思います。

──新しいことにも挑戦しながら、変化の途中であるというところも含めて、バンドらしいバンドだなと感じています。今後にはものすごく期待感が湧いているんですけど、yutoriがどう進化していくのかは想像できないですよね。

浦山 確かに。自分たちが25歳とかになった時に、また絶対に変わってると思うので。それは自分自身でも楽しみですね。そもそも自分が、自分のバンドのファンなわけで、ここから先どういう曲を書いていくのかな?っていうのはわからないので。それは楽しみですね。

──メジャーデビューという節目を迎えた今、ここから先の目標や理想を挙げるとすれば?

浦山 漠然と「でかい会場でライブをしたい」っていうよりは、“スピード”みたいな曲だろうがラブソングだろうが、「バンドとして伝えたいこと」が浸透していく過程を見ていきたいなって。それが浸透していった先に、でかい会場のライブがあったり、フェスとかでお客さんが歌ってくれるっていうことがあると思うので。yutoriとして見せる表情を、ここから先、いろんな人にもっと知ってもらいたい、っていうのは目標としてありますね。

豊田 「大合唱したいよなあ」っていうのはありますね。yutoriの音楽が浸透していって、お客さんが増えたうえでの大合唱──オアシスのフジロックみたいな、ああいう感情になりたいなあって。

内田 楽曲の雰囲気を変えていってでも、芯はぶらさず、いろんなことに挑戦はし続けていきたいなって。自分が言うのもアレですけど、保守的にはならないようなバンドでありたいなって。俺以外は全員、攻めの姿勢が強いと思うし(笑)。4人弱いけど、一緒にいたら強いと思うので。成長というか、よい意味で変化はしていきたいですね。

佐藤 3人とはちょっとまた違うんですけど……ライブ然り、音源然り、やってる側が楽しくないと、気持ち悪くなるというか。音でお客さんにも伝わっちゃうと思うので。これから先、5年10年、もっと長くても、この4人がずっと楽しく音楽をやれていれば、どんな形であれよいと思ってます。

【インタビュー】「弱さ」に寄り添うロックの強さと切迫感。メジャーデビュー曲“スピード”で快進撃のyutori、ミニアルバム『Hertzmtre』に脈打つ進化と衝動を語る

次のページリリース・ライブ情報
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on