【インタビュー】THE ORAL CIGARETTES、今こそロックバンドシーンを背負う──最高傑作『AlterGeist0000』への道程を4人全員で語る!

【インタビュー】THE ORAL CIGARETTES、今こそロックバンドシーンを背負う──最高傑作『AlterGeist0000』への道程を4人全員で語る!

今まで形成してきた偏見やズルい部分が、見方を歪めてる感覚があって。フラットに見るためには、自分がゼロに、ピュアに戻ることが大事やなって思った。それってロックバンドの根底にあることやなって(山中)

──タイトルの『AlterGeist0000』は、手元の資料には「オルタナティブ」と「ポルターガイスト」を組み合わせた造語だとありますけど。このタイトルをもって掲げたテーマは、どんなものだったんでしょうか。

山中 メジャーデビューの時からずっと、自分はいつ、日本の現状や、世界の現状がどうだとかいうところまでを書けるようになるんやろうな、みたいなことを、期待しながら書き続けていて。で、『SUCK MY WORLD』を経て、めっちゃ単純に言うと、日本危な!って思ったんです。日本、このままやとまずいなって。そこに対して生きづらいと思う自分たちの感覚もあったし、バンド活動やりづらいなっていう感覚もあったりして。そこを隠してみんなハッピーに、っていう曲やアルバムを作ることもできたんですけど、それも自分の中での線引きで、そこを隠したらロックバンドじゃなくね?っていう。じゃあ、6割皮肉、4割ハッピーみたいなのがちょうどいいんかなとか、考えながら作っていったんですよね。で、バンド活動外で感じることとか、私生活の中でこういうことあるよねとか、今の日本情勢の中で思うこととかをたくさん書き続けて。

──なるほど。

山中 『AlterGeist0000』っていうタイトルの、『0000』は絶対に入れたいと思ってたんです。これはメンバー一人ひとりのことを表現してるんですけど──俺ら自身がもう一回ゼロになって、フラットな目線で見られるところに戻ろうっていうのを込めていて。なんでそう思ったかっていうと、自分が今まで形成してきた偏見やズルい部分が、ひとつの事象に対しての見方を歪めてるなっていう感覚があって。フラットに見るためには、もう一回自分がゼロに、ピュアに戻ることが大事やなって思ったんです。それってロックバンドの根底にあることやなって感じて。冷静に自分の周りの世界、生きている環境を見ようっていう。そう考えた時に、みんな、もうひとりの代わりの人間を用意してるよなってすごい思っちゃって。ほんまの自分はいつでも逃げられるっていう……めっちゃわかりやすく言うと、匿名ってまさにそうじゃないですか。自分の代役を立てて、ほんまの自分は隠していて。昔って、極端に言えば殴り合いをして友情が深まったり、そいつ対そいつでしかなかったんですよね。でも今は、どんどん歪んだ、誰が誰なのかわからない世界になっていて。っていうのを考えていく中で、いちばんいいタイトル何かなっていうので、ポルターガイストを引っ張ってきて。あとは、音楽的なオルタナティブを追求したいっていうのもあったので、オルタナティブとポルターガイストをくっつけて、「オルターガイスト」。響きもいいなっていうので、このタイトルにした感じです。

──オルターガイストという概念について、みなさんはどう捉えていますか?

鈴木 すごくしっくりくる、ほんまにロックバンドのメンタル的に必要なピースやなって思います。

中西 僕たちは表に立つ職業ではあるけれど、とはいえ自分の代わりって探せばいるなあって思う時もあるし、でも人に対しては「あなたの代わりはいないよ」って思っている自分もいて。それってすごい矛盾してるんですよね。そういうことをタイトルとかから再確認して、自分に落とし込んで考えるきっかけにもなりました。造語であることで、そうやって考えるきっかけをもらえるのかなって。そういう思考でアルバムの中に入っていくと、どう感じるかも違うと思うし。ジャケット、タイトル、収録曲、どれをとっても作品だなって思いますね。俺は、このジャケットを逆さにして見てみたりもしたし(笑)。そうやって考えるきっかけを与えるタイトルやなと思いますね。

あきら このタイトル、字面もかっこいいし。拓也とは人生の半分以上一緒にいて、背伸びしちゃうこともあったけど、今はお互い等身大で生きてるなって思うんですよね。背伸びせず、かっこいい自分であればかっこつくとも最近は思っていて。僕らは別に裏アカみたいなのもやってなくて、常に自分として発信している。その責任感もそうだし、社会風刺も含めたタイトルだと思ってます。こういう場所でしかタイトルの意味までは伝えないかもしれないので、これを読んでくれている人にはわかってもらえたら嬉しいですね。

【インタビュー】THE ORAL CIGARETTES、今こそロックバンドシーンを背負う──最高傑作『AlterGeist0000』への道程を4人全員で語る!

──今のお話を聞いてなるほどと思ったんですけど、このアルバムには、「忘れない」って言葉を使っている曲が多いですよね。本当の自分を見失わないことを大事にされているのかなって。

山中 まったく意識してなかった(笑)。でも、そういうことが潜在意識に入っているのかもしれないですね。

──最後の“See you again”でもそういう言葉を使ってますし。曲順も、そういうメッセージが伝わりやすい流れになっているなと感じます。このままライブのセトリにしてもいいくらい。

山中 みんなで曲順を決めた時に、このままライブでやっても違和感ないようにとは思っていました。あと、アルバムを作る時は毎回そうですけど、サブスクとかで単体で曲を聴けちゃうからこそ、アルバムの曲順通りに聴いた人に、ちゃんとストーリーが伝わるように意識したほうがいいなってのもあって。そこはこだわって作ろうって話してましたね。あとは、キー問題も考えて作りました。このキーからこのキーは耳ざわりがいいね、とか。

──オーラルの音楽って、違和感を個性として捉えていたり、気持ち悪いフレーズを使うことを意識していた時期もあったじゃないですか。でもそうではなく、耳ざわりがいいものにしようと考えるようになった理由というと?

山中 それを意識してた時って、自信がなかったと思うんですよ。そうすることで自分を納得させてたというか。でも『KK』あたりで大きく変わって、もっと音楽に向き合ったほうがいいぞっていう意識が生まれて。それがお客さんに評価されようが評価されなかろうが、自分たちが音楽としてかっこいいと思えるもの、納得いくものをしっかり作りたいっていう気持ちが最近は強いんですよね。ここの不協和音が気持ちいいから残しましょうとかは未だにあるんですけど、それは、ほんとに俺らの感覚的なものでしかないから、わざわざ意識せずとも、根底に残ると思っていて。シゲのリフとか特にそうですよね。シゲがDTMで制作できるようになって、「この音楽かっこいいで」みたいなことを共有していくうちに、どっかでシゲが昔から持ってる気持ち悪さが外れてくるかもなって思ってたんですけど、未だに外れないので。

鈴木 (笑)。

山中 そういうことやなって。だから今は、意識的には美しいものを作ろう、特徴はそのあとからついてくるやろうってところに落ち着いてますね。

──アルバム発売の直後からはツアーが始まり、最終的にアリーナが控えています。アルバムを携えての2025年、どうなっていくと思いますか?

山中 このアルバムを鳴らした時にお客さんがどうなるかが楽しみというよりも、自分たちがどうなるかが楽しみという感覚が俺にはあって。『FIXION』みたいに、お客さん8、自分たち2ぐらいの割合で作ってた時は、フロアの感じだけじゃなく、自分の煽りまで想像できてたんですよ。でも今回は、フロアは見えているんですけど、自分の煽りはまったく見えてない。自分がどうお客さんにこれを投げるのかが見えてないんですよね。だからツアーにおいて、俺ら4人がどういうふうにフロアの空気を読んでパフォーマンスするのか、すごく楽しみです。またイチから4人でパフォーマンスを詰められるんちゃうかな。その中で、この楽曲たちがどういう位置に行ってくれるのかも楽しみなんですよね。“YELLOW”とか“BUG”も最初はどう捉えられるかわかんなかったんですけど、自分たちとお客さん、お互いにとって大切な楽曲になっている感覚があったり、お客さんの盛り上がりを見てパフォーマンスを変えたりとかしてきたから。このアルバムの曲をやるたびに、そういうことが高頻度で生まれてくいくんちゃうかなって思ってます。

鈴木 単純にやっと4人で一緒に鳴らせる!っていうのが嬉しいですね。コロナ禍の時も、久々にスタジオ入って、めっちゃ楽しい!みたいな再認識があったけど、今回もそうなると思うし。お客さんも、僕らのライブは久々になると思うので、改めて僕ら自身がライブに向き合い、お客さんが「これを待ってたよ!」って思えるものを作っていきたいですね。

中西 2025年は自分たちのツアーから始まるので。ライブを通していろんな土地に行けることも当たり前じゃないってことを考えさせられたこの3ヶ月でもあったから、一本一本、地に足つけてライブをやって。そこで待っててくれたみんなが、気持ちも含めて早く元のフロアに戻れるように、足並みを揃えて進んでいきたいと思いますね。それを、アルバムがいい意味で牽引してくれると思っているので、楽曲にケツ叩かれながら、ツアーを楽しんでいけたらと思いますね。

あきら ワンマンツアー自体久しぶりなのでワクワクしてますし、アリーナも、前回のアリーナツアーはコロナ禍でなくなっちゃって、5年ぶりぐらいになるので、楽しみですね。しっかり恩返しできるように活動できたらと思います。

──ツアーでこのアルバムが輝くのが楽しみです。ありがとうございました!

4人 ありがとうございました!


ヘア&メイク=鈴木智之


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