【インタビュー】チョーキューメイ、“貴方の恋人になりたい”ヒット以降初のアルバム完成! 宇宙や生命を歌う理由から、バンドの核心を語る

【インタビュー】チョーキューメイ、“貴方の恋人になりたい”ヒット以降初のアルバム完成! 宇宙や生命を歌う理由から、バンドの核心を語る

昨年“貴方の恋人になりたい”のバイラルヒットを生んだチョーキューメイが、2ndアルバム『銀河ムチェック』を完成させた。TVアニメ『ゆびさきと恋々』EDテーマ“snowspring”、チョーキューメイなりにパンクロックを取り入れた“ピクニック”、フィールドレコーディングで奇跡を起こした“遊泳禁止、天ノ川”など、全8曲を収録した一作だ。
もともとチョーキューメイの作品には「銀河」「天ノ川」といった星や宇宙にまつわるワードがたびたび用いられていて、それはどこから出てきているものなのかがずっと気になっていた。楽曲のドラマチックな展開は、当然多彩なバックグラウンドを持つメンバー4人の技術と知識と興味から生まれるものではあるが、そこからもう一歩踏み込んで、それを通して聴き手に何を見せたいと思っているのかを訊いてみたかった。聴き手の解釈の余地を残すためにもメンバー自ら断定はしないものの、4人の心の奥にあるものを少しずつ言葉にしてもらうことで、チョーキューメイとはどんなバンドであるのか、その輪郭が今まで以上にはっきりと見えた気がしている。

インタビュー=矢島由佳子 撮影=マスダレンゾ


最初のアルバムはどちらかと言うとポップス寄りのイメージが自分はあったけど、今回はダーク寄りのポップスもあれば、所々でヤンチャしてたりもする。何より、毎回新曲をやるたびに「楽しい」を更新したアルバムだなと思います(藤井)

──『銀河ムチェック』がどんなアルバムになったと思っているか、まずはひとりずつ、それぞれの言葉で聞かせてもらえますか。

空閑 興一郎(Dr) 今回、ジャケットが青じゃないですか。麗が(ジャケットになっているギンガムチェックを)ずっと刺繍していて、青になることをみんなが知ってる状態で録り始めていたんですけど、それに引っ張られたのか、曲全部に青いイメージがあって。アルバムを聴いてる時にいい意味で暗い気持ちになるというか。「いい意味で暗い」ってなんやねん、って感じですけど(笑)。

れんぴ(E.Pf) わかるわかる。

──「青」と言っても、たとえば「爽やかな空の色」とかもあるけど、ダークなほうの青ということですよね。

空閑 そうですね、それでいうと藍色寄りの青。イメージ的には、ジャケットよりちょい暗めな感じなんですけど。

──「暗い」ということに関してはのちほど掘らせてもらおうと思うんですけど、最初の質問に対して、ごんさんはいかがですか。

藤井 ごん(B) このアルバムは、面白おかしくできた曲もたくさんあって。最初のアルバムはどちらかと言うとポップス寄りのイメージが自分はあったんですけど、今回は空閑さんが言ってたようにダーク寄りのポップスもあれば、所々でヤンチャしてたりもする。何より、毎回新曲をやるたびに「楽しい」を更新したアルバムだなと思います。

──アルバムができあがってその言葉が出てくるのは最高な状態の表れですよね。れんぴさんは?

れんぴ 自分としては、今回のアルバムは今までと比べてもいちばんヤンチャしてるんじゃないかなと思ってて。曲のバリエーション感もそうですけど、1曲1曲に詰め込まれているものが──普通に聴けるようで、楽器隊の、普段だったら我慢しそうなテクニカルなことが垣間見える部分がいっぱいあって。麗の歌い回しも、いつも以上に幅を感じるアルバムになっているかなと思います。

──れんぴさんがいちばんヤンチャできたなと思う曲は?

れんぴ それぞれのパートで「これヤンチャしたな」みたいな部分を持ってると思うんですけど、個人的には……うわ、悩むな。“むかしかってた ねこの みーちゃん”は曲として、フワンフワンしてるわりに、だいぶヤンチャしてる感じはします。ピアノのパートだけ見たら、間違いなく“美しさより”ですね。これはいたずらをいっぱいできた曲だなっていう感じがします。ど頭、歌とピアノで入るんですけど、《未だ見ぬ》の4連とか、音楽理論で見ると結構ぐちゃぐちゃで。曲の構成的にも、1番のサビと2番のサビでキーが違うんですけど、普通だったら最後の盛り上がりは転調してキーが上がるところ、これはキーが下がってるんですよ。

麗(Vo・G・Vn) それは自分が提案したんですけど、低くすることで歌に力強さが増すというか。ラスボス感がほしかったんです(笑)。

──麗さんは、アルバム全体としてどんな一枚になったと感じてますか。

 自分的には思い入れの強いアルバム──と言っても、チョーキューメイがアルバムを作るのはまだ2回目なんですけど──1回目とはまた違う思い入れがありますね。まずタイトルから決めて、そのままジャケットデザインを思いついて、それを自分で刺繍して。これ、クロスステッチで規則正しく縫っていくだけなんですけど、1目盛り30分かかるんです(笑)。“ピクニック”、“むかしかってた ねこの みーちゃん”、“コンプレックス・コンプ”は、『銀河ムチェック』というタイトルが決まってから作り出しましたね。すべての辻褄が合うように工夫した過程が、思い入れの強さに繋がっているのかなと思います。「バラエティ豊かなアルバムにしたい」っていうのは、今後もアルバムを作るたびに言うと思うんですけど、今回はそれぞれ違う個性を持った曲をひとつにできた感じがあって。そういうアルバムを作りたかったので、自分の理想に近いアルバムになったと思います。

【インタビュー】チョーキューメイ、“貴方の恋人になりたい”ヒット以降初のアルバム完成! 宇宙や生命を歌う理由から、バンドの核心を語る

誰かに愛されてることに気づかないまま生きてしまう人も多い気がする。だからせめてこの歌を聴いた人が、「もうちょっと可能性を探してみるか」と思い留まってくれたら嬉しい(麗)

──個性が違う曲をひとつにまとめられたというのは、楽曲の根本のテーマがブレてない、つまりは麗さんがチョーキューメイで表現したいものがはっきりとある、ということなんじゃないかなと思います。今回の取材は麗さんの歌詞からチョーキューメイの表現の核を深掘りしたいなと思っていて。まず、今作に限らずこれまでも「銀河」「天ノ川」とか、星にまつわる言葉が多いじゃないですか。それはどうしてですか?

 中学生の時の授業で宇宙のページを見た時に、無限恐怖症みたいになって。そこから宇宙の話が苦手なんですよ。なんて言うんでしょうね……ここ(取材している部屋、階数が)高いじゃないですか。地球を感じて怖いんですよね。あと「太陽が爆発する」「ブラックホールが近くにある」とか、そういう噂があるじゃないですか。

空閑 隕石飛んでくる、とかね。

 そう。そういう、自分の力ではどうしようもできない天災がすごく苦手で。地震とかもそうですし。それを克服しようかな、みたいなところから始まりました。

空閑 俺、逆に宇宙とかにワクワクするタイプ。小学校の頃、天体観測クラブに入ってた。

 かわいい〜! 私はマジ怖くて無理。

──無限恐怖症も、天災が怖いのも、死への恐怖からくるものですよね。「死や生とどうやって向き合うか」は麗さんが書く歌詞に通底していると感じていたんですけど、それが麗さんにとって表現したいテーマのひとつとしてある?

 生き死にについて考えすぎると、死にたくなるっていうジンクスがあるというか、だからあまり深く考えないようにはしているんですけど。“promise you”は去年の6月くらいにいろいろ重なって、ふと「死んでもいいかな」と初めて思った時があって──まあ、若干疲れてたんでしょうね。その時の気持ちが出てきたところはありました。人生が有限だと仮定するなら「今を大事にしなきゃいけない」っていう超ありきたりな結論に辿り着くじゃないですか。結局そういうメッセージって、生き死にに繋がってくるのかなとは思いますね。自然とそうなっちゃうのかなって思います。


──その時は、なぜそこまで落ちたんですか。

 初めて実家を出て新しい生活がスタートしたので、急に困ったことがあったりして。人間関係ではないことで病んでました。インフラのこととか(笑)。

──麗さんが「生きたい」と強く思う理由、“promise you”の歌詞にちなんで訊くと《いつまでも死ねない理由》は、どこにあるのだと思いますか。

 やり残したことがいっぱいあるからですかね。死んだあとにできることって、まだわからないじゃないですか。全部シークレットすぎる。たとえば「ブランコに乗る」みたいなすごく簡単なことでも、生きてるうちにできることが死んだらできないかもしれないですよね。やり残したことに対しての執着がすごいし、自分的にはまだやることがあるんだと思います。

──「生き死にについて深く考えないようにしてる」「そういったメッセージは自然と出てくる」「“promise you”はたまたまそういうことを考えた時期だった」とおっしゃる中で、自分としては、普段歌詞にしたいことがどういうところから湧き出てくると実感してますか。

 当たり前に存在してることを疑うのが好きで。“美しさより”は、天使は「美しい」と言われたりそういった比喩が使われたりするけど、なんで天使が美しいとされるようになったのかが気になって仕方がない時期に書きました。当たり前についてもう1回考えることとか、思考遊びが好きですね。「こっち」って誘導されているところで「なんでこっちに誘導されてるんだろう」って考える、みたいな。普通は「こっち」って言われたらそのままついていくのかもしれないですけど。

【インタビュー】チョーキューメイ、“貴方の恋人になりたい”ヒット以降初のアルバム完成! 宇宙や生命を歌う理由から、バンドの核心を語る

──“ピクニック”は、ジャケットのイメージができてから作った曲だとおっしゃってましたけど、これはどういう思考を巡らせながら書いたものでしょう。

 明るい曲がアルバムの中にほしいなって思ったのがひとつ。コード進行とか響きはすごく明るくて、ビートもアッパーでいい感じなんですけど、サビにチョーキューメイっぽさを残しているのかなっていう。《ギンガムチェックは泣き出した》という歌詞も、「当たり前を疑う」みたいな。ギンガムチェックに感情がないとみんな思っているかもしれないが、実は……?っていうのもあるし。まあ、普通に比喩として捉えたり好きなように受け取ってもらっていいんですけど。普通に「君は泣き出した」って歌うよりも、《ギンガムチェックは泣き出した》のほうが面白いかな、色々あった感じがするな、っていう。

──《もっと自分を大切にして》《もっと君に会いに行きたいんだ》とかは?

 ギンガムチェックの気持ちを代弁しているのかもしれない(笑)。

空閑 ……絶対に濁してくる(笑)。


──じゃあ、私の深読みを語ってもいいですか?

 あ、聞きたいです。

──「死なないでほしい」「死なずに生きろよ」といったメッセージを、アルバム全体から感じるんですね。

 ああ、基本的にそう思ってますね。でもそれは勝手に言えないっていうか。自分だったら勝手に言われたくないし。でもそういう気持ちの人がいたら「なんでそうなったんだろう」って気になるタイプだから、全体的にそうなってるかもしれないです。

──人の死ねない理由になるものって、誰かから大切にされてるとか、簡単なひと言で言ってしまえば「愛」だと思ってて。《君に会いに行きたいんだ》と言われたり、誰かから必要とされていることを自覚できていたりすると、死んだらダメだと思い留まれる可能性があるというか。

 確かに、ひとつの要素ではあるかもしれないです。でも、止めるつもりはそんなになくて、自由にしてもらっていいんですけど。でも……そうやって受け取ってもらえる余地のある歌詞ということで(笑)。それを聞いて自分は嬉しいです。

──《君が思うよりも/君は誰かの大切な宝物。》(“遊泳禁止、天ノ川”)って誰かに言ってもらえたら、それも生きる理由にできますよね。

 現代、SNSが発達してるし、みんな当たり前のようにやってるから、誰かに愛されてることに気づかないまま生きてしまう人も多い気がするんですよ。ひねくれてしまうのもあるかもしれないけど。だからせめてこの歌を聴いた人が、「もうちょっと可能性を探してみるか」と思い留まってくれたら嬉しいです。私がそれを発信することで、「とりあえず麗がいる」というひとつの希望になるのかなっていうふうには思ってます。

──だからチョーキューメイは、自分が生きる理由をくれる、自分の命を肯定してくれる音楽だと思うんです。そう考えると、“貴方の恋人になりたい”もシンプルなラブソングというだけではなくて。《貴方の恋人になりたい》、あなたに対して《恋に落ちている》って、相手の命に対する最大限のストレートな肯定だと思うんですよね。

 あの曲はポップソングとして作ったつもりがあまりなかったんですけど、結果的にポップソングになったっていうね。でも確かに……そうかもしれないです。

空閑 絶対に断定はしない、「かもしれない」っていう(笑)。

次のページ(麗は)いろんなことに「なんで?」を持つ。大量の「なんで?」が出てきて、そこから身につけたものが曲に入ってる感じがするんですよね
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする