【インタビュー】新体制のthe telephones、全19曲収録のフルアルバム『Life Is a D.A.N.C.E.』リリース! 「人生とは踊ること」の背景にある想いとバンドの進化を石毛輝が語る!

【インタビュー】新体制のthe telephones、全19曲収録のフルアルバム『Life Is a D.A.N.C.E.』リリース! 「人生とは踊ること」の背景にある想いとバンドの進化を石毛輝が語る!
全19曲という膨大なボリューム。現行のクラブミュージックやハイパーポップを貪欲に呑み込み、もはや「バンド」という枠組みに囚われないレベルで自由に、斬新に、アップデートされた音楽性。「とにかく踊ってぶっ飛ぼうぜ!」なんて歌っているはずなのに、どうしようもなく泣けてくるような、溢れるエモーション──これだ。これなのだ。とにかく過剰で、カラフルで、カオティックで、切実。まったく新しいフォルムに進化しているのに、「これぞ、the telephones!!」と叫びたくなるような痛快なアルバム。それが、the telephonesの新作デジタルフルアルバム『Life Is a D.A.N.C.E.』だ。「D.A.N.C.E.」の表記がジャスティスなのも最高だ。
昨年5月に長島涼平の脱退が発表され、石毛輝、岡本伸明、松本誠治の3人による新体制での活動がスタートしたthe telephones。新体制始動後の初ワンマンとなった昨年12月の新宿MARZ公演からセットリストを全曲新曲で埋め尽くすなど、止まるどころかむしろ勢いを増した活動を繰り広げてきた彼らだが、『Life Is a D.A.N.C.E.』はバンドにとってのリスタートとなった1年間の総決算であり、新たな季節の始まりを告げるアルバムとして申し分のない1作に仕上がっている。「人生は踊ること」──そんなタイトルを掲げた本作に至る過程で彼らは何に気づき、何に向き合い、何を手に入れていたのか。石毛にじっくりと話を聞いた。

インタビュー=天野史彬 撮影=三川キミ


昔の曲はあの4人でやらないと、自分たちもお客さんも「なんだかなぁ……」という気持ちになりそうな気がして。なら、新しく曲を作らなきゃって


──デジタルフルアルバム『Life Is a D.A.N.C.E.』、全19曲というボリュームに驚かされると同時に、これまでのthe telephonesが作り上げてきたバンドサウンドを一気に刷新するような音楽性にも大きく驚かされました。「新しいテレフォンズ」を強く印象づける作品だと思います。本作の構想はどのようにして生まれたのでしょうか?

結構ライブと紐づいているんですけど、今、ライブで過去曲をやっていないんです。そうなると、お客さんは新曲ばかりを聴かされるわけじゃないですか。それはお客さんもかわいそうだな、と思い始めて。なので、今ある曲を全部出そうと思ったんです。去年の年末の時点で19曲のうちの17曲はできていたし、これを早く出そうと。それに加えてバンドが今年19周年なので、19曲がいいかなと。あと、最近みんなアルバムを作らないじゃないですか。9曲くらいで「アルバム」と言って出していたりするし、そういう風潮へのカウンターになればいいかな、という想いもあったんですけど……最近、Tempalayも19曲入りのアルバムを出したんですよね。「(小原)綾斗、ふざけんなよ!」と思ってます(笑)。

──(笑)。昨年の5月に長島涼平さんの脱退が発表されてテレフォンズは新体制になりましたが、それ以降、すごい勢いで新曲ができていたということですよね。

そうですね。涼平が抜けると決まったタイミングで、「昔の曲をやるのかどうか?」ということは考えたんですけど、テレフォンズって、昔の曲はあの4人でやらないと、自分たちもお客さんも「なんだかなぁ……」という気持ちになりそうな気がして。なら、新しく曲を作らなきゃって。でも、おかげで既存のバンドフォーマットに囚われる必要はないと思えるようになったので、昔よりも、頭の中にあるものをすんなりとアウトプットできるようになった気がします。バンドとかロックとかにこだわらず、やりたいことをテレフォンズという枠の中に落とし込むやり方になったので、曲を作りやすくなったんですよね。

──新体制になって以降の活動の進め方という点は、どのように3人で話し合われたり、あるいは、石毛さん個人としては考えられていたんですか?

涼平は4人の中でいちばんプレイヤー気質のミュージシャンだったんです。ベースがすごく上手だし。そういう屋台骨のような存在が抜けるとなった以上、まったく違う見せ方をしなきゃダメだ、という話を最初に俺からした気がします。ただ逆に言うと、涼平以外の3人は個人活動でDJをよくやっていたりもするので、DJに近い感じのライブだったらいけるかもしれないと思ったんですよね。今はフェスに出ているバンドの大半も同期を使っていたりするし、お客さんも同期に対して抵抗がなくなっていると思うんです。

──確かに、そうですよね。

俺らがデビューした頃は、同期を使っているバンドに対して抵抗がある人も多かったんですよ。なので、俺らもサンプラーを駆使してやったりしていたんですけど、「もういっか」と。振り切ったほうが、いい結果が見えるんじゃないかって。

──長島さんの脱退は、石毛さん個人としてはどのように受け止められたことだったんですか?

ショックではありました。地元の同じライブハウスで働いていた、テレフォンズを組む前からの友達だったので。ただ、バンドを解散しようとは思わなかったです。一瞬、(解散を)考えはしましたけど、すぐに「いや、それはないな」って。なので、3人の間で解散は話にも出ていないです。活動休止から復活したばかりだったし、ファンの人たちの気持ちを考えたら、さすがにそれはやっちゃいけないだろうと思って。なので、ショックだった分、「俺がテレフォンズを守らなきゃ」という責任感が生まれたことのほうが大きかったと思います。

【インタビュー】新体制のthe telephones、全19曲収録のフルアルバム『Life Is a D.A.N.C.E.』リリース! 「人生とは踊ること」の背景にある想いとバンドの進化を石毛輝が語る!

テレフォンズは元々自由だし、他の人があまりやっていない音楽を突き詰めていることに価値があるバンドなんだって思い出せた


──2019年の活動再開以降にリリースされた2作のアルバム『NEW!』と『Come on!!!』を振り返って思うのは、あの2作は精神的な面で、テレフォンズの根っこを見つめているような作品だったということなんです。ただ、今回の『Life Is a D.A.N.C.E.』は、斬新さや過剰さ、カラフルさ、実験性──そうした「スタイル」として、テレフォンズというバンドの核心が現れている印象があります。このパンキッシュなスタイルこそがテレフォンズなんだと。音楽性は今までと違う新しいものになっているんだけど、極めてテレフォンズらしい作品だなと思ったんです。

ありがとうございます。僕らが最初に出した『JAPAN』(2008年)というアルバムもこんな感じで作っていたなと思うんですよね。それ以降、若干ちやほやされ始めてやることを絞っていっちゃったところもあったので……「ディスコって言ったらウケるぞ」って(笑)。

──(笑)。

あの頃は「とにかく第一線にいなきゃいけない」みたいな気持ちで曲作りをしていたこともあったし、よくも悪くも、お客さんを第一優先に考えて作曲をしていた部分もあったと思うんですよね。

──でも、それはそれですごく大切な季節だったわけですよね。

そうですね。あの時期がなければ、バンドがあそこまで行くことはできなかったし。そういうことを経て、40歳にもなってそれでもまだバンドをやりたいのであれば、やりたい音楽をやったほうがいいなと思うんです。活動休止があり、コロナもあり、作曲に対してもバンドに対してもフラットに考えることができるようになった部分もあったと思います。あの時期に「そもそも、どうしてバンドをやりたいんだっけな?」というところまで立ち返ったし、そこにあったのは結局、「そもそもは自分が聴きたい曲を作りたかったんだ」ということで。テレフォンズの場合は、海外の文化を日本人である自分たちのフィルターを通して、アジア発の海外に通用するバンドになりたい、という気持ちもあった。そういう部分を思い出せたんですよね。テレフォンズは元々自由だし、他の人があまりやっていない音楽を突き詰めていることに価値があるバンドなんだって。

──SNSを見ていると、恐らくかつては複雑な想いを抱えていたであろう「ディスコ」という言葉も、今は軽やかに使われている印象もあります。

あれはXのアカウントが乗っ取られたので、「明るくしないと」と思ってやっていたんですけど(笑)。でも確かに、「ディスコ」という言葉に抵抗がある時期もあったんですけど、今は気楽に使えていますね。

──本作のレーベル資料の中に、今のテレフォンズのリファレンスになっているアーティストたちの名前があるんですけど、バンドというよりはクラブ系のDJやプロデューサー、あるいはハイパーポップとカテゴライズされるようなアーティストたちの名前が多く連なっています。Fred Again..、The Blessed Madonna、Romy、Jamie xx、Charli XCX、A.G. Cook、San Holo……などなど。実際、こうした名前が背景にあるのがしっくりくるアルバムになっていますよね。

自分の好みなんですけど、その時代にいちばん尖っていることをやっているなと思える音楽が好きで。ただ、アンダーグラウンドの音楽もすごく好きなんですけど、自分がそれをやるとなると、その資格はないのかなと思うんです。日本のアンダーグラウンドでも海外のアンダーグラウンドでも、「本気で好きな音楽がこれなんだ」と思ってやっている人たちは素晴らしいと思うんですけど、普通のバンドが自分たちのブランド力を高めるためにそれを取り入れるのは違うなと思う。そういう意味で、アンダーグラウンドのものは聴くのは大好きなんだけど、あまりアウトプットには持っていかないようにしようと思っているところもあって。なので、今名前を挙げてもらったのは、そのバランスがちゃんと取れている人たちだと思うんですよね。Fred Again..はまさにそういう人だと思うし、ハイパーポップ勢を見ていると、「今、自分が20代だったらこういうことを頼んでやっているだろうな」と思うような、天然で面白いミックスをしているなと思う人たちは多いです。

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次のページ1回、全部自分でやってみないとわからないことってある気がしていて。逃げ道を塞ぐことで、強制的に進化させられるような実感がある
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