【インタビュー】突如現れたシンガーソングライターの新星。独特の感性で感情を音と言葉にする松田今宵とは何者か?

【インタビュー】突如現れたシンガーソングライターの新星。独特の感性で感情を音と言葉にする松田今宵とは何者か?

気持ちを吐き出して曲に昇華することで、自分と同じ思いをして悩んでいる人がちょっとでも前向きになれたらいいな

――それをこじらせていくとどんどんひねくれていっちゃうっていうか、人を寄せつけないものになってしまうと思うんです。でも松田今宵の音楽ってそうはなってないじゃないですか。ちゃんとポップスであるっていうことも、一方では大事にしている。

「そう思ってもらえるのは嬉しいです。でもたぶん、それこそ最初はコアなほうにいっちゃってました。ポップスじゃなくて、環境音楽みたいなほうにどんどんいっちゃう。音に凝り出すと楽しいのでやりたくなっちゃうんですけど、それだとなかなか聴いてもらえないので。どうしたらポップスとしてみんなが聴いてくれるんだろうっていうのはすごく考えました。今も勉強中です」

――特に“甘じょっぱい”はめちゃくちゃポップだと思うんです。開け方が他の曲とはちょっと違う。それは当然ドラマの曲だからっていう状況もあると思うんですけど、作るうえでの意識も違ったのかなって。

「そうですね。オープニング曲なので、ドラマの最初にふさわしいように、ポップに明るくしようっていう意識はありました。原作は、ある定食屋さんを舞台にいろんな人が出てきて、友達でも家族でも恋人でもない絶妙な距離感の人たちが定食屋さんの料理を通して繋がっていくっていう物語なんですけど、私は物語全体から『人が繋がっていくのに家族とか友達とかっていうのは必要ない、理由づけがなくても繋がっていけるんだよ』っていうメッセージを受け取って。その気持ちを、私は音楽でみんなに還元できたらいいなと思って作ったのが“甘じょっぱい”です。このマンガを読んでいると、人のために何かを作りたい、何かしたいっていう気持ちになるんですけど、その思いのまま作りました」

――歌詞に《メロディ》っていう言葉が出てきますけど、松田さんの場合は作るのは音楽だから、それを重ねていったんですね。そしてだからこそ、この曲は松田さんにとって音楽はどういうものなのか、松田さんと音楽やメロディとの関係性を物語るものになったんじゃないかと思います。

「言われてみたらそうですね。ドラマがあったからこそできた曲ではあるけど、常日頃私が考えていること、というか原作を読んで共感した部分を書いたので、私の性格が出てるとは思います」


――“甘じょっぱい”を聴いて、松田今宵という人はまさに誰かに何か届けたいと思っている人だし、「私はこういうふうに思っているんだ」っていうのを吐き出すだけじゃなくて、聴いた人に作用したい、何かを与えていきたいという思いを持って音楽をやっている人なんだなっていうのをすごく感じたんですよね。だからこそ人と違うことをやろうとしてもちゃんとポップになるという感じがする。

「そうですね。私が気持ちを吐き出して曲にすることで、自分と同じ思いをして悩んでいる人がちょっとでも前向きになれたらいいなって思っています」

【インタビュー】突如現れたシンガーソングライターの新星。独特の感性で感情を音と言葉にする松田今宵とは何者か?

私自身も変わっていくから、3年後とかには全然違うふうになっていると思う。そのときの自分の肌に合うものを作り続けていくんじゃないかな

――そのためにも、まずはちゃんと松田今宵の気持ちに近いところで曲ができないといけなくて。この曲は耳に入ってきたときにメロディがすごく残るっていうか、不思議なメロディだなと思ったんですよね。他の曲もそうなんですけど、メロディラインが独特じゃないですか?

「そこはあんまり意識していないんですけど、王道にはいかないようにしようというのはありますね。泣きのメロディみたいなものは私がやらなくていいと思っていて。もちろんそういうのもいいし、日本で育ってきたので聴いているんですけど、それじゃないものをやらないとって常に思ってます。だからたぶんちょっとひねくれてるんです(笑)」

――今「ひねくれてる」っておっしゃいましたけど、そうやって人と違うことをするというのは単にオルタナティブなことをやろうっていうことじゃないんですよね。むしろ、自分の肌感覚にいちばん近いもの、いちばん合うものを選びたいっていうことなんじゃないかなって思う。どうやって作っているのかわからないですけど、松田さんのメロディって鼻歌みたいなんですよ。

「ああ、確かにいつも鼻歌で作ってます(笑)。そうですね」

――教科書とかセオリーはあるけど、それ通りにやるとそれはちょっと私の感覚と合わないっていうことに、すごく自覚的なんだろうなって。歌詞もそうだと思うんですよ。言葉選びひとつとっても、自分の感覚をちゃんと落とし込んでる。

「入れたくなりますね、どうしても。そうじゃないと自分が納得しないので。それを自分ではひねくれてると思ってたんですけど、言われてみたら確かに、自分の肌感覚にいちばん近いものを出してるのかなって思います」

――で、それをやるには、弾き語りだけだと足りないという。それだと自分自身にならないというか、自分の肉体が完成しないというか、そういうことなんでしょうね。

「そうですね。弾き語りは骨と肉のみで、服とかがない感じがしていました。だから最終的に『全部自分でやりたい』っていうところにたどり着いたんだと思います。結局自分が納得しないとダメだと思うので。それで、私自身も変わっていくから、たぶん3年後とかには全然違うふうになっていると思うし、そのときの自分の肌に合うものを作り続けていくんじゃないかなと思います」

ヘア&メイク=東川綾子 スタイリング=椋野裕貴(Hifumi,Inc.)

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