このBメロに、自分自身がWurtSとして初めてレコーディングを経験した時の心情とか、思いを込めて書いていきました(WurtS)
──今回、歌の振り分けはどのように?川上 基本的には僕がAメロ、WurtSがBメロ、Dメロで。サビはふたりでっていう感じですけど、作った部分がそうだったので。Aメロは僕が作って、Bメロ、DメロはWurtSが作ってっていう。だから歌詞もそうですね。
──なるほど。WurtSさんは川上さんが書いたAメロを受けて、続く歌詞を書いていくという?
川上 そうそう。「でもこれまだメモ段階だからね。これに感化されないでね」って言いながら(笑)。
WurtS 初めてのやり方でした。最初受け取った時に、この曲はどういうものなんだろうと自分なりに考えて。“VANILLA SKY”という言葉自体が、映画からきているのかなとかも思ったんですけど、それは置いておいて、“VANILLA SKY”は、まだ誰も手をつけていない場所というか、そういうのを勝手にイメージして。なので僕はこのBメロに、自分自身がWurtSとして初めてレコーディングを経験した時の心情とか、思いを込めて書いていきました。
──川上さんからは特に「こういう曲です」という説明もしなかった?
川上 うーん。最初はなんとなく「失恋ソング」だということは言った気がするけど、自分の中でもはっきりしていなくて。だからかなり朧げに。
──さっきWurtSさんも言っていましたが、“VANILLA SKY”と聞いて、映画が思い浮かぶ人も多いと思うんですよね。
川上 これは言い方よくないけど、ほんと適当なんです(笑)。まあたぶん、「VANILLA SKY」という言葉を俺が耳にしたのもトム・クルーズ主演のあの映画なんですけど、それは意識していなくて。最初適当に《I don’t know what〜》とか歌ってて、そことライムする言葉は何かないかなって考えてたら《Vanilla sky》って出てきた。それが面白くて、サビの頭に持ってきたんですよね。
──ふたりの歌声が変に反発するでもなく、ただ溶け合ってしまうでもなく、それぞれの個性が際立ちながらともにある感じがすごく良いです。
川上 でも僕、鼻の手術をしたばっかだったんですよ。
──あ、ちょっと鼻声ですもんね。
川上 いやもうちょっとどころじゃないですよ(笑)。レコーディングを延期したほうがいいんじゃないかとも思ったんですけど、ちょっとやそっとじゃ治んないなって思ったので。もういいか、そこも含めて記録になるしな、くらいの感じで「鼻声のままやりまーす」って言って。実はそれがこの曲にマッチしてたかもしれない。WurtSの歌い方に関してはほんとにWurtSでしかないし、まず(WurtSの歌が入った)デモが送られてきた瞬間に感動しましたね。嬉しかった。自分の書いた曲をWurtSが歌ってるわけじゃないですか。あのデモの雰囲気は、あのまま出したいとさえ思いました。
WurtS どれくらい自分の色が出せるのかっていうのは僕も勝負だと思っていたので。ここは勝負しなきゃと思っていました。だからコラボだからと遠慮せず、思い切りWurtSとして歌いました。
そこらへんにあるような曲には絶対したくなかったんですよ。でも行きすぎて、今っぽすぎるのも嫌だった(川上)
──異質なもの同士が今ここに集まって音楽を鳴らす楽しさ、豊かさみたいなものを表現している。これが今回のコラボの答えだなと感じました。川上 WurtSの歌も確立された声なので、ひとりのアーティストとしてお互いやり合えばいいだけだったんですよ。まあ俺の鼻声は置いておいて(笑)、それ以外はスムーズでしたね。いろんな要素がある歌い方だなと思って。ロックを歌っていてもヒップホップっぽいし、ヒップホップのテイストなんだけどロックっぽいし、みたいな。すごい不思議な魅力のある歌声だなってあらためて思いました。
──WurtSさんは最初にロックを意識してアレンジをして、でも最終的にはそこにポップもヒップホップも感じさせるものになって。それがすごく現代的なロックの解釈になっていると思います。
川上 そう。新しかったですね。たとえば「ここはラップだ!」って急に突っ走ったりしがちじゃないですか。そこをあまり分けないで、ぽんと出してきたからすごく素敵だなって思いました。まず、そこらへんにあるような曲には絶対したくなかったんですよ。でも行きすぎて、今っぽすぎるのも嫌だったし。いい意味でのいなたさを入れたくて、その答えがたぶんアコギだったんですよね。アコギは最初のデモには入ってたんだけど、すぐ抜いたんですよ。でも、いい具合に入れるとベックの“Loser”みたいな雰囲気も出るし、だからミックスには結構こだわったんです。アコギをサンプリングしてるくらいの雰囲気で入れたいって言って。最後の最後でWurtSに「ごめん、やっぱアコギ入れてみていい?」って言って、それで「アコギはやめておきましょう」って言われたら、俺も諦めようと思ってたんだけど、「いいっすね」って言ってくれて。
──今回のコラボ、川上さんは何がいちばん刺激になりましたか?
川上 歌詞もそうだし、アレンジもそうだし。特にWurtSはMVも作れるし、アーティストとして多角的にクリエイトしているところがすごいと思う。この曲のMVもWurtSが作ってくれたんですよ。
──おお。そうなんですね。
川上 こんな低姿勢な奴だけど、監督として臆せずディレクションしてくれて。あれはめちゃめちゃ刺激的だった。WurtSが草案を出してくれて、コンテみたいなのを見せてもらいながら、我々はもう芝居するだけでオッケーで。
WurtS もちろん[Alexandros]のMVという認識で作っているんですけど、僕はそこにWurtS色も入れたいし、WurtSが監督として作ることによる化学反応を起こしたくて、メンバーのみなさんには結構すごいことをやらせてしまったかもしれません。
川上 面白いことになってると思いますよ(笑)。
WurtS 結構攻めてしまいました(笑)。
川上 俺、MVは普段からあまり口出ししないようにしてるんですけど、今回はほんとに、まるきり任せようと思って。なので、楽しみにしていてください。
──そこまでコラボが続いていたとは。そして今年の夏は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に[Alexandros]もWurtSも出演予定ですが、残念ながら出演日が違うので、フェスでの共演は難しいですよね。1%くらい期待しましたが。
川上 どうなんでしょうね。まあ可能性は5%くらいですかね(笑)。